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“我”を貫いた話題の歌手・大森靖子の半生

 シンガー・ソングライターの大森靖子が、詩人で作家の最果(さいはて)タヒの共著となる単行本『かけがえのないマグマ 大森靖子激白』を発売。同作は、大森が語った壮絶な半生を最果が小説という形でまとめられた。ORICON STYLEのインタビューに応じた大森と最果に、今を生きる若者たちの心情を抉るような本作について、話を聞いた。

◆知られたくないと思うことがない(大森)

 2人での共著となった単行本は、「自分の言葉だと嘘では無いけど、飾ってしまうので、贅沢かなと思ったけど、最果さんにお願いしました」と大森からオファーした。『QuickJapan』(太田出版)の対談がきっかけで初対面した2人は、その後最果が、大森のライブへと足を運ぶなど、交流は続いていた。その最果も、大森と会う前より「ファンでした」とお互いにリスペクトしていたようだ。

 最果は、話が来た当初は悩んでいたが、大森の資料を集めていくうちに、それが変わったと言う。「私は詩人なので、誰かに取材して書く仕事をしたことはないし、最初はどういうふうに大森さんの話を聞けばよいのかわからなかったんです。でも、大森さんの過去のインタビューを読んだときに、“みんなが生きている”ということを言っていて、“あっできる!”と確信しました」

 同作では、最果が「私もここまで書いたことがない」と言うほど、大森靖子の半生を赤裸々に綴られ、「知られたくないと思うことがない。全部使わないと……自分の一部だけでどうにかできる才能がないので……」と普通では目をつぶってしまうような出来事もぶちまけ、ありのままの心情が綴られている。

◆大森靖子は、生き方をまったく変えない、自分自身に正直な人(最果)

 大森は「人間不信にはならなかったけど、疲れました。でも、もう大丈夫です」とサラッと言うが、幼少期には父親との距離のとり方に悩んだり、鎖でぐるぐる巻きにしたカバンで登校したり……それなりにハードな体験も経てきた。しかし、「みんなこんなもんだと思っていた」と大森自身は大変なことだとは捉えていない。それどころか、何事にも全力で向き合い、逃げない姿勢を貫いてきた。「大森さんは大森さんの人生を生きているだけで、その事実を特別視していないように思いました。話を聞いていて、ドラマではないなと。だからこそドラマチックに書かないようにしました」と最果は言う。

 最果は、「人の人生を本にしようとすると普通はつじつまが合わなくなってしまう。でも、大森さんの場合は、逆につじつまが合う。それは生き方をまったく変えないから。普通は、誤解されたら自分に言い訳して、考え方を変えたり、寄り道をしたりするが、それがない。もう一歩次に進もうとしか思っていないから」と、大森について、自分自身に正直で、素直な人だと言う。それは、「正しいかどうかはわからないけど……自分はできるという自信だけはある」と言う大森の言葉につきるのだろう。

 大森の元にも多くの読者から手紙やメッセージが届くようだ。初めて他人について書いた単行本を発売した最果は、「この本を読んで大森さんをもっと好きになったと言ってくれる方がいて、それが一番うれしかったです」と手応えを感じたようだ。


大森靖子(おおもり せいこ)
愛媛県松山市出身。弾き語りを基本スタイルに活動。事務所やレーベルに所属せず自身で東京・渋谷CLUB QUATTROや恵比寿LIQUIDROOMをソールドアウトにした後メジャーデビュー。ツアーも全公演ソールドとなり中野サンプラザ公演も大成功を迎える。デビュー後に結婚し、2015年10月10日に第1子男児を出産。2016年3月、最新アルバム『TOKYO BLACK HOLE』を発表する。

最果タヒ(さいはて たひ)
1986年生まれ。2006年に現代詩手帖賞受賞。2008年には詩集『グッドモーニング』(思潮社)で、当時女性では最年少の21歳で中原中也賞を受賞。2014年には詩集『死んでしまう系のぼくらに』(リトルモア)で、現代詩花椿賞を受賞。その他の詩集に『空が分裂する』(新潮社)、小説に『渦森今日子は宇宙に期待しない。』(新潮社)などがある。



関連写真

  • (左から)大森靖子、最果タヒ(写真:下田直樹)
  • 大森靖子(写真:下田直樹)
  • 大森靖子(写真:下田直樹)
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