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樋口真嗣監督、『進撃の巨人』実写映画化そのものに意味がある

 2009年から『別冊少年マガジン』(講談社)で連載され、13年4〜9月にテレビアニメ化されたのをきっかけに、さまざまなメディア展開を繰り広げて社会現象化した諫山創氏原作の『進撃の巨人』。昨年、実写映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』が前後篇にわたって公開された。

映画監督の樋口真嗣氏。「ゴジラ」シリーズ最新作『シン・ゴジラ』の監督・特技監督(兼任)も務める (C)ORICON NewS inc.

映画監督の樋口真嗣氏。「ゴジラ」シリーズ最新作『シン・ゴジラ』の監督・特技監督(兼任)も務める (C)ORICON NewS inc.

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 『ローレライ』(05年)、『日本沈没』(06年)、『巨神兵東京に現わる』(12年)、『のぼうの城』(12年/共同監督)の樋口真嗣監督による実写映画は、昨年8月1日に前篇、9月19日に後篇『〜エンド オブ ザ ワールド』が公開され、2部作合わせて50億円に迫る興行実績を残した。

 樋口監督は、原作コミックの2巻(10年7月第1刷発行)の表紙を目にした時から「巨人と立体機動の二つにひかれました。これを実写映像で観てみたい。できれば自分で作ってみたいと思っていました」。

 12年秋に樋口監督による実写映画化が決定。「漫画原作の映画を撮るのは初めてだったので、自分にとってもチャレンジでした。これまでは先の大戦中であれ、戦国時代であれ、現実の世界がベースにあったので、どういう生活をしていたのか、どういう服を着ていたのか、調べれば正解が見つかるけれど、『進撃の巨人』の世界を生身の人間に置き換え、現実世界で実体化する作業は思っていた以上に難儀でした」と振り返る。

 『進撃の巨人』の世界では、突如現れた巨人たちに人類の大半は喰われ、文明は崩壊。巨人の襲撃を逃れ、生き残った者たちは巨人の侵攻を防ぐため、巨大な壁を三重に築き、生活圏を確保して平和を保っていたが、想定外の超大型巨人の侵攻によって、壁が破壊され、再び巨人のえじきに。活動領域の後退を余儀なくされた人類は、対巨人兵器、立体機動装置によって武装した調査兵団を結成し、奪われた土地を巨人から取り戻すべく、破壊された壁の修復作戦を断行する。

 「登場人物の髪型ひとつをとっても、どれくらいの長さなのか、自分で切っているのか、誰かに切ってもらっているのか、そういったところまで考えて、積み上げていかなければならなかった。でもそれが実に面白かったのです」。

 最も悩ましかったのは、立体機動装置。両腰に装着した装置からワイヤーを出して、その先端にあるアンカーを巨人の体や建物に突き立て、ワイヤーを巻き取ることで高速での移動を可能にするこの装置は「世界中の原作ファンが作ってはネットに写真や映像を上げていて、それがまたすごくクオリティーが高くて(笑)。重量や大きさ、形も含めて、下手なものは作れないし、撮影現場の都合で変えるわけにもいかなかった。装置を付けて演技をしなければならない出演者たちには、ものすごく無理をさせることになってしまいました。地獄だったと思いますが、ちゃんと付いてきてくれたキャスト陣には本当に感謝しています」。

 CGと生身の人間演じる巨人とミニチュアによる特撮、さらには超大型巨人を文楽のように数人がかりで操演する方法を融合させてVFX場面を作る一方で、長崎県端島(通称:軍艦島)をはじめ、熊本、茨城県高萩に建てられた巨大なオープンセットなどでもロケーション撮影も行われた。

 「やりたいことをひと通りやらせていただいた」と感謝する樋口監督。「後篇で巨人同士が戦うシーンは身も蓋もない言い方をしちゃうと、きぐるみを着た人が殴り合っているだけなんですよね。でも、それをすごくやりたかった。いまやCGでなんとでもなるところを、わざわざ格闘家に来てもらって本気で殴りあってもらいました」。

 立体機動装置にしても、巨人同士のバトルにしても、子どもの遊びのようなことを大人たちが大真面目で凝りに凝って作る。それは、樋口監督が子どもの頃に魅了された特撮という想像力に満ちた映像表現の魅力そのものだ。

 「普通じゃない体験ができたら、単純に楽しいですし、この世ならざる架空の世界に釘付けになり、夢想し想像する力を与えてくれるような作品が増えてくれるといいな、と思います。『進撃の巨人』の原作者、諫山さんも子どもの頃に偶然、『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』という特撮映画を観て影響を受けたとおっしゃっていますが、そうやって受け継がれていくものってあると思うんですよ。作られなくなってしまったら、終わってしまう。僕のようなフリーランスは特に、自分が作ったものを観てくれた人が、面白そうだから僕もやってみたいなと思ってもらうしか、引き継ぐ手がない。やってみたいと思う人が現れることを望んでいます」。

 同映画のDVD&Blu-rayには制作の裏側をできる限り開示した特典映像を収録。「僕も特撮の映像を観て、どうやって作っているのだろう、誰が作っているのだろうと疑問を抱いて、そのまま特撮の仕事場に出入りするようになっていました。『進撃の巨人』も、完成するまでの試行錯誤を重ねた過程もできる限り知ってもらおうと思いました」。

 2月17日発売の前篇豪華版には、実写映画化までの道のりを原作者の諫山氏と樋口監督が語る映像や、立体機動を使ったワイヤーアクションに挑むキャストに密着したドキュメント、立体機動を実写表現するための技術解説を収録した特集映像が特典ディスクに収録される。3月23日発売の後篇豪華版の特典ディスクには、樋口監督と尾上克郎特撮監督によるインタビュー映像とメイキング映像を交えて巨人たちの映像化の秘密に迫る特集映像や視覚効果・特殊効果などの技術解説などを収録。前後篇ともに樋口監督をはじめ制作スタッフによる本編オーディオコメンタリーで制作秘話も大放出される。

関連写真

  • 映画監督の樋口真嗣氏。「ゴジラ」シリーズ最新作『シン・ゴジラ』の監督・特技監督(兼任)も務める (C)ORICON NewS inc.
  • 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 前篇』DVD/Blu-ray発売中(C)2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 (C)諫山創/講談社
  • 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド(後篇)』DVD/Blu-rayは3月23日発売(C)2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 (C)諫山創/講談社

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