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日米で物議をかもすアンジー監督作へ出演、MIYAVIの葛藤「いろいろな価値観や視点がある」

 一時は日本公開が危ぶまれた、アンジェリーナ・ジョリーが監督し日米で物議をかもした話題作『不屈の男 アンブロークン』(2月6日公開)。実話をもとにし、2年間におよぶ第2次世界大戦中の日本軍捕虜収容所での地獄を生き抜いた米国人の生き様を描く。そんな同作で、収容所所長を演じたのが、人気グループ・SMAPへの楽曲提供など日本だけでなく、アメリカをはじめ世界で活動するミュージシャンのMIYAVI。日米両国での反発も予想されたであろう同役をなぜ受けたのか? MIYAVIの真意と覚悟に迫った。

◆ネガティブな要素を持った役を演じることにためらいもあった

――初の映画出演となりましたが、いろいろな風当りもある作品だと思います。オファーを受けたときはどう感じましたか?
【MIYAVI】 自分の生まれた国の過去に起きたことにおいて、ネガティブな要素を持った役を演じることに対して、最初はかなりためらいました。でもアンジー(アンジェリーナ・ジョリー)から直々に話を受けて、彼女が今作を通して伝えたいメッセージのなかに、最終的に人を許す境地にたどり着く人間としての強さを届けたいという強い想いがあることを知ったんです。その後に、主人公のルイ・ザンペリーニが長野オリンピックで聖火ランナーとして日本に戻ってきて、地元の人たちと一緒に走ったことも知りました。その人たちがみんな笑顔でルイと一緒に走っている映像を観て、今作に出演することに意義を感じたので決心しました。誰かがこの役を演じることになるならば、アンジーの想いを受けた僕が自分なりに精一杯演じたいと思ったんです。

――アメリカを始め世界で活動するMIYAVIさんが、世界公開される同作で日本軍捕虜収容所の所長・渡辺という役を演じるのには、大きな決心があったと思います。実在の人物でもある渡辺を演じることに対して、どのような想いがあったのでしょうか。
【MIYAVI】 これまでプロの役者としての経験が無かったのもありますが、とても大きな責任を感じました。渡辺を単なる悪役ではなく、ひとりの人間としての葛藤や脆弱さ、心の揺れ、ルイに対しての想いというものをしっかりと表現できるように、アンジーと話し合いながら演じていきました。決して彼のしたことを正当化するわけではありませんが、戦争という極限状態のなかでの恐怖や使命感など、簡単には計り知れない想いがあったのではないかと思います。戦争というものが人にもたらす狂気的な部分を、この役を通して表現できたらという思いで挑みました。

◆誰も望んでいなくてもやらざるをえないことがある

――アメリカほか世界各国で公開されていますが、今作をご覧になった方のリアクションはいかがですか?
【MIYAVI】 昨年からいろいろな国で公開されています。ネガティブな意見や感想も出てくるのかと覚悟もしていましたが、結果ゼロでした。皆さん渡辺に対しても、当時の日本軍の軍人という部分を超えて、ひとりの人間として捉えてくださっていました。

――作品を観れば、そのメッセージがしっかりと伝わってきますね。
【MIYAVI】 この役を演じるうえでは、アンジーともすごく繊細に話し合って取り組みました。渡辺とルイという人間の共通項というか、似た者同士だからこそルイの持つ強さに憧れた部分、ただ嫌いで憎かったわけじゃない、言葉にならない複雑な感情など。たまたま今作の舞台が日本だっただけで、同じようなことが世界中で起こりえたし、今もどこかで起こっている。『シンドラーのリスト』を観たからと言ってドイツを嫌いにならないのと一緒で、ドイツという国が歴史のなかで過ちを認め、それを乗り越えて今のドイツを作ってきたのを僕らは知っている。日本も同じだと思うんです。

――物事には、ひとつだけではなくいくつもの見方があると。
【MIYAVI】 ルイ本人や、ルイと一緒に収容所の時間を過ごした方々にも会いましたが、みなさん日本には好意的でした。収容所で捕虜になっていた方々をケアしていた日本人との間に友情が芽生えたり、後に日本人女性と結婚された方もいるそうです。それぞれいろいろなドラマがあって、いろいろな価値観や視点がある。今作を観て日本に対してネガティブな印象を受けたという人は、今のところ誰一人として会っていません。

――役作りは大変でしたか?
【MIYAVI】 そうですね。僕には役者としてのスイッチがあるわけではないですし、実際に経験したことではないので、難しかったです。僕は娘がふたりいるのですが、もし娘たちに危険が及んだら何だってできてしまうかもしれない。想像しただけでも恐ろしいことですが、それが戦争というものだと思うんです。誰も望んでいなくても大切な人や大切な人たちが住んでいる国を守るためにやらざるをえないこと。なにより戦争を肯定しないこと、繰り返さないこと、戦争のむごさを次世代に伝えていく、という気持ちを持って僕なりに演じました。人がどこまで強くあれるかということを描いた作品なので、何よりそのメッセージを伝えるために取り組みました。感情のグラデーションや、後半で渡辺の気持ちが崩れていくのを表現するのがとても難しかったです。

◆役者では表現できないことを求められた

――アンジーはMIYAVIさんから見てどんな方ですか?
【MIYAVI】 役者としてだけではなく、いろいろな活動を通じて人道支援をしている素晴らしい女性です。誰に対してもオープンだし情熱的。今作を作ることも彼女のミッションのひとつだったと思います。国民難民高等弁務官事務所(UNHCR)親善大使も務めていらっしゃいますが、僕も一緒に難民キャンプに行かせてもらったり、彼女からすごくたくさんのことを学ばせてもらい、パワーをもらいました。いろいろなものを未来のために残したいという想いがものすごく強い方だと思います。

――ミュージシャンと役者、それぞれの表現の違いはどんなところに感じますか?
【MIYAVI】 音楽を表現する場合は“100パーセント自分”なんですが、映画という総合芸術では音楽や演出、衣装など各セクションを担当するスタッフがいて、役者も作品の一部になります。音楽で言えばオーケストラのなかで僕はバイオリンを弾くようなもの。その作品の一部となって、伝えたいメッセージに共鳴できるかどうかなんじゃないかな。それぞれが役に徹すれば徹するほど、作品としての伝えたいメッセージがきちんと浮き彫りになっていくということを今回演じたことで実感できました。

――今後も役者としての活動を考えていらっしゃいますか?
【MIYAVI】 本当に素晴らしい役者が世界中にいるなかで、役者では表現できないようなことをアンジーは僕に求めてくださったんだと思います。演じることを知らなかったからこそ表現できたというか。なので、もし今後もそういった機会があればやってみたいですし、演じることに大義があればどんな役でもやりたいです。今作でエンタテインメント映画の楽しみ方や、それを作る過程の楽しさも学んだので、今までとは違った視点で映画を観られるようになりました。役や作品のメッセージに共鳴できるもの、自分の人生にとって肯定的なものであればどんどん挑戦していきたいです。
(文:奥村百恵)



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