• ホーム
  • 芸能
  • 笑いの原点“裸芸” 脈々と受け継がれている裸芸人の系譜

笑いの原点“裸芸” 脈々と受け継がれている裸芸人の系譜

 「安心してください、穿いてますよ」のフレーズでお馴染みのお笑い芸人・とにかく明るい安村の活躍が目立った2015年、大みそか恒例の『第66回NHK紅白歌合戦』でもいつもの海パン1枚の姿で出演し、話題となった。子どたちにも人気抜群だがその芸と言えば、シンプルかつ究極とも言うべき“裸芸”。井手らっきょから江頭2:50、なかやまきんに君小島よしおらに続く、“裸芸人”の系譜に追ってみた。

◆裸芸にも“肉体美系”と“だらしない系”の2パターンあり

 裸芸人のルーツとなるとやはり、たけし軍団・井手らっきょがあげられるだろう。ただ、たけし軍団の裸芸は特にひねりもなく、(とりあえず笑いを取るために脱いでおけ)といったノリだったが、井手らっきょの締まった肉体は、後の裸芸人のフォーマットともなったのである。この“肉体美”“筋肉芸”をウリにする芸人は、80年代初頭のぶるうたす、なかやまきんに君、品川庄司庄司智春などがいるが、『お笑いスター誕生』(日本テレビ系)では、ぶるうたすがなかなか8週突破の壁が破れなかったように、肉体美系の裸芸にはシンプルであるがゆえに限界もあるという弱点もあった。

 一方、肉体美系とは対照的なだらしない肉体をさらけ出し、体を張ったリアクションをウリにしている芸人としては、ダチョウ倶楽部上島竜兵たむらけんじ長州小力などがあげられる。特に上島の裸芸は、ベタながらシチュエーション別にネタがあり、さすがに年季を感じさせる芸の味がある。

 そんな裸芸に新風を巻き起こしたのが小島よしおだろう。引き締まった肉体、海パン、そして音楽に合わせて踊るというスタイルは、子どもたちにもウケて、一世を風靡した。小島の登場は、たかが裸芸と言われたところを、されど裸芸にまでは引き上げた。昨年3月、ナインティナイン岡村隆史が、『奇跡のキャラかぶりー!〜72億分の2〜』で、お盆一枚で裸芸に挑戦したことがあったが、「お尻きれいじゃないし……」と渋りながらも、最終的にはノリノリになった岡村の姿からは、“裸芸=究極の芸”といった趣きすら感じられた。考えてみれば、素人の宴会などでも“裸踊り”は昔から行なわれていたし、裸芸は笑いの原点とも言える。そうした、いわば“伝統芸”の歴史が芸人・岡村から漂い出したのかもしれない。

◆現行の裸芸は放送倫理を逆手に取ったネタで人気獲得

 ただこの裸芸は、常に放送コードの壁、放送倫理への挑戦といった一面もある。特にたけし軍団の場合は下半身をさらけ出すのは当たり前で、そこに“消し”が入るのもお約束だが、一方では下品すぎるといった批判も多く、「子どもに見せたくないテレビ」のランキング上位の常連だった。そうした意味では、とにかく明るい安村の裸芸は、放送倫理を逆手に取ったネタ(安心してください)とも言えるのだ。

 また、女芸人の裸芸は単なるエロになる可能性が高く、かつては森三中大島美幸などが、男のリアクション芸に挑戦するといったノリでよく全裸になっていたが、男性の視聴者からは(さすがにちょっと……)と引かれてしまったようである。過激なところで言えば、裸+暴走=江頭2:50だが、かつては嫌いな芸能人1位の常連だったにもかかわらず、数多いポーズネタで完全にキャラクター化し、今では女性の一部では「カワイイ」と親しまれていたり、若い男性からもブレないその生き様がカッコいいとして、リスペクトの対象にさえなっているのだ。

 そんな裸芸人たちのなかである意味、元祖とも言える井手らっきょは、かつて自分の子どもに「うるさい! 井手らっきょのくせに」と言われて大ショックを受けながらも、「死ぬまで“井手らっきょ”として裸芸を続けたい」と語り、今なおチャンスを見ては脱ぎ出してしまう。そんな井出の姿勢に東野幸治などは、「裸芸人の頂点にいるのは井手らっきょさんだ」と熱く語る。たかが裸芸、されど裸芸。安村のブレイクを機に、裸の向こう側にある芸人魂を感じ、芸の伝統をじっくりと味わってみるのもいいだろう。



オリコントピックス