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Crystal Kay、“ハーフ”であることにコンプレックス「目立ちたくないと思っていた」

 歌手のCrystal Kayが、約3年ぶりの新作アルバム『Shine』を発売した。2013年から2年間、米国・ニューヨークに渡り、レコード契約を目標に、音楽活動を行っていた。幼少期より“ハーフ”であることにコンプレックスを持ち、悩んだこともあったCrystal Kayが、自身のアイデンティティと正面から向き合い、声や歌にも変化をもたらしたニューヨークでの生活を語る。

◆ニューヨークは音楽活動のために、目標はレコード契約だった

――2013年から2年間、ニューヨークに行っていたとのことですが。
【Crystal Kay】 ニューヨークは音楽活動のために行きました。目標は向こうでのレコード契約だったんですが、そのためには実際に住んで、現地のコミュニティに入り、プロデューサーの人に知ってもらったほうがいいよってことで思い切って行っちゃおうかなと。でも、何のツテもないからやっぱり難しかったです。毎日、スタジオに入って60曲以上作りましたけど、向こうで私は無名のシンガーですからね。2年間、日本と行ったり来たりしながらプロデューサーと会ってセッションしたり、ボイトレしたり、ダンスをしたりっていう、そんな感じでした。

――現地では1人で生活していたんですか?
【Crystal Kay】 そう。日本生まれの日本育ちなので、ひとり暮らしは初めて。しかもそれがニューヨークっていう(笑)。だから慣れるまでは時間がかかりましたが、私はひとりっ子なので単独行動は全然平気なんですよ。

――音楽の取り組み方は日本と違いました?
【Crystal Kay】 全く違いますね。曲を作るためにスタジオに入っても、日本だとその日にやることがきっちり決まっているけど、向こうはまず「今日はどんな気分? どういう曲をやろうか?」ってそこから始まるんですよ。で、その場でアイディアを出し合っていく。だから空気の循環がいいんです。しかもスタッフそれぞれが自分の決断に自信を持っていて、誰かに確認をとってから決めるとかないから作業を進めるのが早い。もしダメだったら後から直せばいいって感じで停滞する時間がないというか。ザックリしているけど無駄がないんですね。

◆子供の頃からずっと、アイデンティティ的なものにコンプレックスがあった

――新作『Shine』は、女性にリアルに刺さってくる曲がすごく多いですね。
【Crystal Kay】 私もいちリスナーとして、みんなと同じなんだよっていうのをわかってもらいたかった。そういう意味で前は自分のために歌っていたけど、初めて人のために歌うっていう気持ちに切り替わった気がします。歌を伝えていかなきゃいけないんだなって。そこもニューヨークでの経験が大きくて、向こうに行って一番最初にぶつかった壁って、自分のアピール力のなさだったんです。チャンスがあっても自分をうまく出せないし、どういう風にしたらいいかもわからない。でも向こうには歌って踊れて演技ができて、しかも外見も完璧っていう人がいくらでもいて、その中で「あなたは何がスペシャルなの?」って、常に問われるんですね。でも私はそこで何も言えなかった。しかも、それをお高く止まっているように思われてしまって、すごくショックを受けたんですよ。

――日本独特の“謙虚”や“奥ゆかしさ”は通じないんですね。
【Crystal Kay】 シンガーの場合は通じないどころかマイナスになってしまうんです。でも私は子供の頃からずっと、アイデンティティ的なものにコンプレックスがあったんですよ。ハーフってことであまり目立ちたくないと思っていて、それが歌にも出ていたと思う。周りからもよく歌が“こもっている”って、言われていたんです。でも、ニューヨークに行っていろんな経験をしてこれじゃダメだと。で、当初の目標だったデビューには繋がらなかったけど、帰国する前にとりあえずライブをやりたいと思って、会場など全部、自分で探してセッティングしたんです。

◆ニューヨークは自分自身を強くする旅だった

――日本では考えられないですね。
【Crystal Kay】 自分でやったのは初めてです(笑)。それに自分の中でも多分、人生で一番いいライブだった(笑)。とにかく何も考えず、歌だけ届けたいって状態で歌えた。それがもう、めっちゃ楽しくて、「なんだ、私、できるじゃん!」って、すごく自信がついたんです。で、日本に帰ってすぐにテレビで歌唱があったんですがそれを観た人たちから「クリ、声が違う、歌が変わった」って言われて。ニューヨークに行った甲斐があったなって、手応えを感じたんですよね。

――まさに、ひと皮剥けたと。
【Crystal Kay】 多分、向こうでアイデンティティについて考えさせられて、コンプレックスを徹底的に刺激されたせいでしょうね。ニューヨークっていろんな人種の人が集まっているから、自分は何を持っていて何を掴みたいのか、しっかり自覚していないと置いてかれちゃうんですよ。初めてそういう環境に放り込まれて、ちょっとは主張ができるようになったのかもしれない。

――日本にずっといたらそれは無理だった?
【Crystal Kay】 もちろん日本には日本の良さがあるんだけど、私の場合は違うアングルから自分を見る必要があったんでしょうね。例えば向こうでよく「君はハーフだから2つの国のカルチャーが入っていて、しかも日本語と英語の両方を話せる。それで10年も歌手をやってきたことに誇りを持ったほうがいい」って言われたんだけど、日本にいるときはそういう角度で、自分を見られなかったんです。だから、恵まれているのにそれをフルに使える自分がいなかった。でもそこに気づいて変わることができたので、結局、ニューヨークは自分自身を強くする旅だったのかなと。

(文:若松正子)



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