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2015年 年間映画興行ランキング トップは『ジュラシック・ワールド』邦画実写は『HERO』

 洋画大作シリーズの最新作が映画シーンを大いににぎわせた2015年の年間映画興行ランキングTOP10を発表。1位に輝いたのは『ジュラシック・ワールド』。TOP10に6作を送り込んだ洋画が昨年に続いてトップを守った。邦画実写のトップは木村拓哉主演の『HERO』。ドラマ映画の苦戦が続くなかで踏ん張りを見せた。そんな2015年映画興行を映画ジャーナリストの大高宏雄氏が振り返る。今年のふたつの特徴、もっとも話題を提供した意外な作品とは?

◆シェア躍進を支えた洋画アニメの安定感

 今年の映画興行は、昨年実績を上回りそうである。昨年の年間興収は2070億円で推移した。今年は、2100億円台の可能性が出ている。12月18日から公開される『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の成績を見込んでのことである。この作品の年末までの興収は、これまでの同シリーズの実績に、史上最大規模の宣伝量を加味すると、ちょっと計り知れないところがある。

 さて、今年の映画興行の特徴は、おおまかに言ってふたつあるとみていい。洋画のヒット作品の増加とアニメの健闘である。後者は今年が顕著ということではないが、洋画アニメの大ヒットが、その傾向をさらに強めたと考えられる。ふたつの特徴をつなげるのが、洋画の総体的な踏ん張りということになるだろうか。

 トップの『ジュラシック・ワールド』は、95億円を記録した。昨年の『アナと雪の女王』(255億円)に次ぎ、2年連続の洋画トップである。その洋画は、上位10本中6本を占める。昨年は洋画が10本中2本。2013年は10本中3本だった。洋画のヒット数が増えているのがわかる。

 今年、強力シリーズものの洋画の実写版新作が多く並んだことは何回も指摘した。ただ、それだけではこのシェア(本数の増加)は実現しない。洋画アニメの安定感こそ、それを促した大きな原動力であった。洋画6本のうちのアニメ3本は、『ベイマックス』『ミニオンズ』『インサイド・ヘッド』だったが、それらが大ヒットとなった理由のひとつとして、広範囲な観客層を挙げることができる。

 ファミリー層に加えて、若者から大人の女性人気が高いので、数字が伸びるのである。これが、『名探偵コナン』や『映画ドラえもん』など定番の邦画アニメと根本的に違うところだ。若者層なら、ファン中心に集客する定番アニメもあるが、洋画アニメは、いわゆるアニメファンというより、一般女性の気持ちをつかむ点が特徴的だと言える。定番邦画アニメではない『バケモノの子』も、その1本ととらえていい。

 このような洋画のちょっとしたアニメブームに、かつての洋画の盛況ぶりを少し重ね合わせてもいいかもしれない。まだまだ不確かではあるにしても、洋画興行に女性たちが戻ってきた面もあるのだ。それを促しているのがアニメである点が、いかにも今日的に映る。

◆王道パターンからヒット傾向が変わってきた邦画実写

 さて邦画は、アニメの隆盛は変わらないが、実写作品ではヒットの中身が変わってきたことを指摘しておきたい。人気テレビドラマの映画化作品が減り、コミック原作の映画化作品が増えた。そのなかで全く異色の大ヒットになったのが、『ヒロイン失格』だろう。期待値は低かったが、なんと24億3000万円まで数字を伸ばした。桐谷美玲の怪演もあったが、相手役のひとり、山崎賢人の人気も予想以上だった。

 予期せぬ大ヒットといえば、『ビリギャル』も挙がる。コミック原作ではないが、題材の引きと中身のおもしろさ、主演の有村架純の人気が、28億4000万円までもっていった理由だろう。桐谷、有村と「可愛い」系若手女優の作品は、彼女らより下の世代の女子たちの支持が大きいことも見逃せない。

 ただ、実写作品の邦画トップは、キムタクの『HERO』であった。これは、フジテレビの映画製作の王道パターンが、終焉のときを迎えつつあるなか、ギリギリの踏ん張りを見せたと評価していいのではないか。ドラマ映画の今後は、今の時点では決して明るくないが、今年はその王道パターンの意地を、キムタク主演の作品が見せた点は記憶しておいていい。

◆従来の映画興行が陥っていた危うい姿を露わにした『ラブライブ!』

 ただ結局のところ、邦画と洋画を通して今年もっとも話題を提供した作品は、『ラブライブ!The School Idol Movie』だったと私は思っている。最終の興収は、なんと28億円。6月13日公開以来、今もってメイン館の新宿ピカデリーで上映されているのだから、全く驚異的なロングランだ。いわゆる映画=劇場アニメといった、これまでの括りの作品とは様相を異にする。ラブライブ・プロジェクトのなかのひとつの映像作品としてシネコンで上映され、それが多くの観客の支持を受けた。入場者プレゼントが大きかったことは、ここで付け加えるまでもない(その注釈はここではしない)。

 『ラブライブ!』は、映画(興行)の定義を、大きく揺さぶったことで、逆に今の映画(興行)が陥っている危うい姿を露わにしたとも言えるだろう。作品、クオリティといった側面(宣伝も含めて)から、映画の興行は大方成立するのだが、『ラブライブ!』はその考え方、常識を突き動かしたからである。

 ODS(非映画デジタルコンテンツ)といった映像も、今やシネコンの重要な営業品目になった。こうした傾向は、映画館=シネコンが、映画だけの場ではなくなってきていることを示す。翻って『ラブライブ!』は、映画=劇場アニメと言われている作品であっても、本当に映画の輪郭をもっているものなのかといったところまで問うている。こうした点を考慮すると、『ラブライブ!』が映画界に突きつけた挑発は、なかなか大きなものがあったと私は考えているのである。
(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)



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