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普通のおじさん俳優・佐藤二朗、“ゆる脇役”で独自の地位を確立

 先日終了したドラマ『偽装の夫婦』(日本テレビ系)で、主人公・天海祐希の従弟として出演し、なぜかオカマっぽい口調で引きこもりのマジシャン役を演じた俳優の佐藤二朗。従弟でありながら天海祐希に想いを寄せるという難しい役柄だったが、しっかり片思いの切なさを観る者に感じさせていた。そんな佐藤の役どころと言えば、ほとんどが“脇役”。しかし『金田一少年の事件簿N』(日本テレビ系)の刑事役や『勇者ヨシヒコシリーズ』(テレビ東京系)の仏役など、確実に視聴者の印象に残る演技を見せているのは確か。数多くいるバイプレイヤー俳優と佐藤二朗はどこが違うのか? なぜ“普通のおじさん”である佐藤二朗の演技は“残る”のか?

◆サラリーマンから役者へ 30代でようやくテレビドラマ出演

 現在、佐藤は46歳、大学卒業後はサラリーマン生活を送りながら劇団を立ち上げて役者活動を続けるが(その流れから、脚本・映画監督を務めることもある)、2000年に30代の遅咲きながらテレビドラマ・デビューする。以降『伝説の教師』や『受験の神様』(日本テレビ系)、『QUIZ』や『First Love』(TBS系)、『人間の証明』や『電車男』(フジテレビ系)といった人気ドラマに多数出演するが、どれも脇役でそれほど知名度もなかった。そんな佐藤が一躍脚光を浴びることになったのが2009年、UHF局で放映されていた佐藤主演『幼獣マメシバ』が映画化されたことだった。佐藤が演じる主人公は、実家に引き籠って「半径3キロ圏外には出ない」中年ニート。だが実質の主人公は柴犬の仔で、その仔犬のかわいさ、成長ぶり(と合わせた主人公の成長ぶり)こそが主題ではあったが、観る者に「なぜ、このサエないおっさんが主人公?」という大きな疑問を抱かせると同時に、それまで「顔は見たことはあるが名前は知らない」脇役だった佐藤の存在が、いきなりクローズアップされてきたのである。

 そして同じ2009年、高視聴率ドラマ『JIN‐仁‐』(TBS系)に、漢方医の福田玄孝役で出演。ツルツルの坊主頭が特徴で、当初は他の医院のスパイだったが、胃潰瘍で死にかけたところを主人公の仁(大沢たかお)に助けられると、仁の人間性と医療技術にすっかり心酔し、仁の片腕となって医療の発展に尽くすという好感度抜群の役柄を得て、佐藤の認知度は一挙に全国区レベルにまで上がったのだ。

 見た目は“普通のおじさん”ながら、刑事、教師、医師といった堅いものから、牢名主、仏、中年ニートまで幅広く演じる佐藤だが、彼の魅力はいったいどこにあるのだろうか。一見すると強面で、顔もガタイ(身長181センチ)もデカいのだが、よく見ると気の弱そうな困った顔をしている。実際、香川照之からも「体は本土くらいでかいのに、気持ちは離れ小島並み」(本人談)と評されたと言うし、見た目のわりには自信がなさそうなのだ。

◆「身近にいるおじさん」が視聴者に安心感を与える

 佐藤のルックスで言えば、それなりの威圧感があってもおかしくないのだが、なぜか佐藤が登場するとドラマの空気が和んでしまい、安心感に包まれる。『JIN』にしても、見た目はスキンヘッドの強面ながらコワさはなく、佐藤が登場すると何となく笑いさえ誘われてしまうような雰囲気があった。バイプレイヤー俳優と言えば、個性が強く、ときには主役を食うような自己主張の強い演技すら見せるものだが、佐藤にはそれがない。自己主張どころか、むしろ今どきの若い女性に人気の“非目力系”でもあるし、アゴをちょっと突き出して口だけ動くようにして喋って見せたり、早口でペラペラとウザく語るなど、微妙にコミカルな小ワザを利かす程度。しかし返ってそれがウケるとして、女性たちからは好感を持たれているようなのだ。そう言った意味では、佐藤は“ゆるキャラ”ならぬ“ゆる脇役”とも言える立ち位置を獲得したのかもしれない。

 決して目立った自己主張をするわけではないが、こと演技に関しては常に自分に見合った演じ方を研究し、これだと思えば現場で迷うことなく取り入れるようだ。微妙なセリフの語尾であったり、話し方であったり、しぐさであったりと先の“小ワザ”に近いものだが、そのあたりに佐藤のこだわりと誠実さを感じさせるものがある。

 佐藤は、大学卒業後に会社に入社するが、会社の体育会系のノリになじめず、入社したその日に退社するという過去を持つ。その後は営業の仕事で実績を上げるものの、役者の夢を捨てきれず劇団を旗揚げするわけだが、そうしたエピソードからも、どこか小市民的ながらも、自分なりの筋を通す佐藤の根性と実直さが見て取れるようである。

 実際、視聴者にしても、規格外の武勇伝に彩られた役者やハデな経歴の俳優よりも、いわゆる“普通のおじさん”的な佐藤二朗にシンパシーを感じ、また安心感を持つのであろう。つまり“身近(みぢか)”なのだ。あらゆるドラマや映画に欠かせない脇役にあっては、この“普通”で“身近”であることは、最大の武器であり、魅力なのではないか。佐藤二朗はその最たるもので、言ってみれば、身近にいる普通に存在感のあるおじさんなのである。

(文:五目舎)



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