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洋画の7年ぶりシェア逆転はあるか? 一方で依然厳しい洋画不況の内実

 今年は洋画復活の年になるのだろうか。夏にヒットが集中し、2016年の正月興行でも、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や『007 スペクター』といった強力作品が揃い、洋画に久しぶりにスポットが当たっているのである。今年の映画興行では、『ジュラシック・ワールド』が最終興収93億円前後と推測され、最大ヒット作品となる。2014年の『アナと雪の女王』(255億円)に次いで、2年連続で洋画がトップ獲得だ。近年、邦画に押されっぱなしだった洋画は、確かにがんばってはいる。

◆年々差が縮まっている邦画と洋画の興収シェア

 データを見てみよう。ヒットのひとつの目安である興収20億円を超える作品は、11月上旬現在ですでに30本を数えた。これは、2000年以降でもっと多かった2009年の30本と同数である。このうち洋画は12本ある。この数も2009年と同じだ。昨年、20億円以上の洋画は6本しかなかった。今年はヒット数が例年以上であるのは間違いない。

 ただヒット作は、これまでの強力シリーズもの(及びシリーズの関連作品)の新作が大半を占める。その数、実に7本。実写作品、アニメともに、いわば知名度が高い作品が大きな支持を受けている。他の5本は、『ベイマックス』や『シンデレラ』(洋画興収の2位、3位)など。この2作品とて、ディズニー(ピクサー)作品系列で、その“ブランド力”は、強力シリーズものと遜色ない。

 では、邦画と洋画の興収シェアはどうか。20億円以上の30本の累計では、邦画52.3%に対して、洋画47.7%である。やはり、本数の多い邦画のほうが上だ。ちなみに昨年(2014年)の全体のシェアは、邦画が58.3%、洋画が41.7%。2013年(全体)は、邦画60.6%、洋画39.4%だった。30本と全体の違いはあるにしても、その差が縮まってきている感じはある。

◆洋画不況の流れが食い止められた?その内実は…

 さて、こうしたデータから何がうかがえるか。かなり長い期間続いてきた洋画不況の流れは、今年の夏の賑わいで少しは食い止められたかに見える。だが、それを促したのは、強力シリーズものやブランド力が高い作品群である。それらが、たまたま今年に集中したとも言える。アクション、サスペンス、恋愛、シリアス、コメディなど単発の多様なジャンルをもつ他の洋画の興行は、これまでとあまり変わっていないようだ。だいたい、このようなことが言えるのではないかと思う。

 強力シリーズものやブランド力の高い作品の数字が良ければ、それでいいではないかという意見もあろう。ヒット作品はあるのだ。だが、それだと、洋画は随分と痩せ細った発信しかできなくなる。娯楽のなかで、それも突出した派手な中身をもつ作品が中心的に稼働するだけでは、映画が発信できる多様な側面が充実してくることはない。

 洋画不況が続いてきたのは、文化面、芸術面をもつ映画の素晴らしい特性が、衰退してきたのが一因だとも考える。もちろん、それは邦画も同じだ。邦画に触れる余裕はないが、洋画シェアが幾分か上昇したとはいえ、今述べてきたような内実では、洋画の真の復活などありえないと、私は思っている。

◆米配給会社の日本支社閉鎖、映画館閉館…差し込む小さな光とは

 ところで今年、その衰退ぶりを象徴するような出来事がいくつか起きた。映画誌『SCREEN』を発行してきた近代映画社の事実上の倒産、洋画配給会社パラマウント ピクチャーズ(日本支社)の来年閉鎖、シネマライズの来年閉館である。これは、大枠では洋画不況が影響しているとみていい。洋画興行が振るわなくなったので、そのファンや観客を視野に入れていたそれぞれの“事業”が、立ち行かなくなった。

 かなり長い期間にわたる洋画不況は、映画の拠点とも言うべき組織(劇場)に、容赦なく襲いかかってきた。この過酷な現実に、今の映画興行の非常に偏った側面が浮き彫りになっている気がする。まだまだ拠点の喪失は続くのではないか。シェアや数字の推移以前に、映画界全体が確実に“縮小”の方向に至っていることだけは、ここで強調しておきたい。

 では、希望はどこにあるか。小さいながら、その芽を見出す作業の重要性とともに、それを生かし、育てることの大切さを思う。それは、現在ヒット中の『マイ・インターン』という作品に、ひとつのヒントがあるように感じる。期待値が低かったこの作品が、すでに興収14億円を超え、15億円突破の可能性さえ出ていることに、小さな光が差している。ロバート・デ・ニーロ演じる定年後の人生を送る70歳の男と、アン・ハサウェイ演じる若き女経営者が、同じ土俵で仕事をしていく道筋のなかに、今を生きる多種多様な人たちの共感の根が強く刻まれているのだ。

◆『スター・ウォーズ』が鍵を握る、7年ぶりの洋画シェア逆転

 洋画の秀逸な人間ドラマだけではない。他のジャンルであっても、日本の観客に引っかかりそうなテイストをもつ作品が、必ずや送り出されているはずだ。その魅力を、諦めずに観客側に伝えていくことが重要だ。数は少なくても、その作業を粘り強く繰り返していくしかない。これは、映画の送り手の話だが、受け手たるこの国の観客側もまた、『マイ・インターン』をある意味“発見”できる知性をもっている。以上のような側面を強烈に押していくマスコミ側の責任も大きいと、私は強く感じているのである。

 ところで、2008年から続く邦高洋低の映画興収シェアで、今年7年ぶりに洋画が逆転するかの判断は、今の段階では難しい。その鍵は、12月18日公開の『スター・ウォーズ/フォーの覚醒』が握ろう。もし年内だけで興収50億円あたりを超えてくると、もしやということになるかもしれない。
(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)



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