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「昼ドラ」はこのまま衰退してしまうのか?

 フジテレビ系のいわゆる“昼ドラ”の大ヒット作『牡丹と薔薇』の新作放送が話題を集めている。ただし、フジテレビの昼ドラは、50年以上続いていた枠が終了してしまうという報道があったばかり。現在では、時間のある主婦が気ままに楽しむドラマと言うイメージが定着してしまった昼ドラだが、かつてはWhiteberryやZONEなどの音楽ユニットがブレイクするなど、子供から大人まで幅広い世代が見ていたものだった。しかし、今では若者に“過去のもの”という認識さえされつつある。数々の名作を生んだ昼ドラはこのまま衰退してしまうのだろうか?

現在放送中の東海テレビ制作・フジテレビ系列『別れたら好きな人』で主演を務めるピースの綾部祐二 (C)ORICON NewS inc.

現在放送中の東海テレビ制作・フジテレビ系列『別れたら好きな人』で主演を務めるピースの綾部祐二 (C)ORICON NewS inc.

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■音楽ヒットも生まれたかつての昼ドラ

 ドロドロ愛憎劇を代表する『牡丹と薔薇』が、フジテレビ系列の昼帯連続ドラマ(月〜金・午後1時25分)で12年ぶりに復活する。2004年版は数奇な運命に翻弄される姉妹の牡丹役を大河内奈々子が、薔薇役を小沢真珠が熱演し、最高視聴率13.8%(2004年3月24日、関東地区/ビデオリサーチ調べ)を叩き出す大ヒットを記録。社会現象にもなるほどの人気ぶりだった。「役立たずのブタ!」という名セリフに、料理に「財布ステーキ」が登場するなど衝撃的なシーンばかり。そんな伝説ドラマを生み出した脚本家・中島丈博が今回も手掛けるとあって、新キャストに黛英里佳(牡丹)と逢沢りな(薔薇)を迎える新作にも期待が高まっている。

 この『牡丹と薔薇』をはじめ、『真珠夫人』(2002年4月1日〜6月28日/横山めぐみ、葛山信吾ほか)が築いた昼ドラ黄金時代はメインターゲットである主婦だけでなく、この時間帯に一見して縁がなさそうなビジネスマンやOL、さらには学生までもが毎日録画してまで夢中して見ているほどの勢いがあった。かつてはTBS系列で「愛の劇場」「ドラマ30」という枠があり、題材も幅広かった。新人俳優の登竜門にもなったし、毎年夏になると子供向けの作品も放送され、2000年の『ふしぎなはなし』ではWhiteberryの楽曲「夏祭り」が大ヒット。井上真央の初々しい演技も記憶に残る2001年『キッズ・ウォー3』では、「secret base〜君がくれたもの〜」でZONEがブレイクするなど、音楽ヒットも誕生した。

■「韓ドラ」に流れた主婦層 課題は視聴習慣

 しかしここ最近、“昼ドラ”は元気がない。フジテレビの昼ドラ枠に関しても、来年3月に終了するという報道があったばかりだ。1960年代から続く伝統のドラマ枠の終了の危機。かつては“現象”を起こすほど人気だった昼ドラが衰退してしまった理由は何なのだろうか? 近年、昼ドラも視聴率3%台の低空飛行が続いている。『笑っていいとも!』終了により、『笑っていいとも!』『ごきげんよう』に続けて視聴する層が減少したためとも言われているが、要因はそれだけではないはずだ。

 まず考えられるのが、「韓国ドラマ」の影響だ。題材の古くささを衰退の理由に挙げる人は多いが、女性を主人公にしたドロドロ劇を楽しみたいという一定のニーズはあり、家族に気兼ねせずに楽しめる昼ドラはその愛憎劇に心行くまで没頭できるものではある。しかし、2004年の『冬のソナタ』のヒットを皮切りに韓国ドラマが隆盛を極めると、かなりの主婦層がそちらに流れてしまった。かつて日本で放送されていたトレンディドラマとの共通点さえ感じさせる、題材のわかりやすさやベタな展開、ドロドロした人間関係。ブーム自体は終息しつつあるが、視聴者は昼ドラには戻らずに今に至るのではないだろうか。

 新番組などを立ち上げた時に放送局が一番苦労するのは、実は視聴習慣である。青春恋愛モノは「月9」、幅広い層が楽しめる「日曜劇場」、大人の恋愛が得意な「木10」、エッジの効いた作品が揃う「ドラマ24」など、クール毎に新作を投入するドラマは枠をブランド化することで、固定ファンを作っていることが多い。その最たるものが朝ドラだが、今でこそ新たな層にも“視聴習慣”をつけることができ、軒並み20%代を叩きだすまでに復調しているが、『ゲゲゲの女房』『あまちゃん』あたりまでは長らく停滞している時期があった。毎日放送しているものだけに、一度視聴者が離れてしまうと、なかなか戻りにくいのだ。

■共働きの夫婦が増加、生活スタイルに合わない?

 また、主婦の生活スタイルの変化も挙げられるだろう。このご時世、かつてのように午後の一番いい時間帯に昼ドラを視聴できる専業主婦が減り、“共働き”の夫婦が増えている。ORICON STYLEで「『昼ドラ枠』は今後も必要だと思うか?」というアンケート調査を実施したところ、回答自体は【必要だと思う】が43.0%と比較的高い数字を維持する一方で、NOと答えた人は「働いていて見ることができない」というコメントが圧倒的に多かった。「昼にドラマを流しても、現代の多様化した生活の中では根付かないと思う」(神奈川県/30代/男性)という意見からも、昼ドラ=主婦が楽しむもの、という図式は現在では成り立たないのかもしれない。

 とはいえ、「今まで個性的な昼ドラばかりで話題性があったので廃止はもったいない」(茨城県/50代/女性)、「昼ドラがなくなると各局同じようなバラエティとニュース番組ばかりになってつまらない」(東京都/30代/女性)など、昼ドラの継続、復権を願う人も多い。昼ドラというイメージをうまく利用し、きっかけさえあれば、人気復活も可能なのではないだろうか? 『新・牡丹と薔薇』がヒットすれば、久しぶりに昼ドラ熱が再燃しそうな気配もある。このまま消えてしまうのはもったいない。

(文/長谷川朋子)

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