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西島秀俊、ビートたけしとの初共演に高揚「もう怖いものはないかな(笑)」

 2002年公開の北野武監督映画『Dolls[ドールズ]』での出会いから、しばしの時を経て、『劇場版MOZU』で再会を果たした西島秀俊とビートたけし。会えない時間は、逆にふたりの距離を縮めたようだ。つかの間の邂逅を愛おしむように、ふたりが言葉を交わし合った。話は『MOZU』の世界から、江戸に昭和に、ふたりが出会った21世紀はじめにかけてまで。映画愛にあふれた自由な対談を掲載。

西島秀俊とビートたけしが『Dolls[ドールズ]』での出会いから今の俳優業についてまで語り合う(写真:逢坂聡)

西島秀俊とビートたけしが『Dolls[ドールズ]』での出会いから今の俳優業についてまで語り合う(写真:逢坂聡)

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◆自分がやるのはどうかなあ…

――ずいぶん前から、西島さんは羽住英一郎監督と「『MOZU』シリーズ最大の謎であるダルマ役には、ビートたけしさんしかいない」と話していたそうですね。なぜたけしさんが適役と思われたのですか?
【西島】 この『MOZU』という作品は、とにかくいろいろな男たちが、それぞれの信念をもって、血みどろの殺し合いをしていきます。そのなかでも、ダルマはいちばん上に立つ、混沌とした世界の象徴みたいな存在であり、しかも日本中の夢のなかに出てくる謎の男。そういう男を演じる説得力、役を作って演じるのではなく、そのひとが現れただけで“あ、このひとは全然別の次元の存在だ”というのが伝わる存在というのは、北野さんしかいないと話していました。でもそれは、ドラマを撮影しているときに、北九州市の焼肉屋で出たような話(笑)。出演していただけるとは、もちろん思っていなかったし、今回実現していちばん驚いているのは、監督と僕だと思います(笑)。

――これまでにも、怪物的な強烈な役どころで、観る者の心を揺さぶってきたたけしさんですが、ダルマという役のどんなところに魅力を感じたのですか?
【たけし】 いま西島くんの話を聞いていて“北島三郎はどうかな?”って、ふと思ったけどね(笑)。説明を受けても、まるっきりわからない存在だったんだけど、ダルマのイメージが、ひょっとこじゃないけど、ちょっと親しみのある感じで。達磨大師とか、禅宗の坊主のイメージで考えていくと、それなりにその気になるなあと。自分がやるのは果たしてどうかなあとも思ったけど、オファーがあったってことは、ありがたいことだなと思って。

――『MOZU』シリーズは、ご存知でしたか?
【たけし】 観たことなかったんですよ。TBSでやってたって本当? って(笑)。
【西島】 やっていましたよ(笑)!
【たけし】 (TBSで)仕事をしているから観ているはずなんだけどなあ(笑)。でも、ドラマは難解だよね。読み解くみたいなところとか、いまのひとたちが喜びそうな複雑な構成になっているから。人間関係がストレートに出てこないんだよね。(ダルマは)エピソードとして断片的に出てくるから、これは大変だなあって思った。

――監督の熱気もすごい現場だったそうですね。
【西島】 今回、吹き替えはほとんどなく、本人がアクションをやっていますし。さすがに北野さんには、吹き替えの方を用意されるのかなって思っていたんですけど、いなかったですよね?
【たけし】 アクションもそんなにないし、寝ていることが多かったからね。病室にいるシーンで、全然映っていないんだけど「寝ててください」って言われて。オレがいなきゃいけないのかなあっていう(笑)。離れた場所で芝居をしているときは、いびきかいて寝ちゃったりして。そのあと、やっとカメラが近づいてきたぞ! と思ったら、また遠ざかっていって(笑)。(羽住)監督はおもしろいね。オレとは違う粘り方をする。納得できない映像だと、とことん粘るんだな。オレは役者の演技がよっぽどひどくなければ「オレには編集がある!」ってOKにしちゃうんだけど(笑)、基本的には納得できる映像を撮らなきゃ、映画ってできないんだろうし。だから、勉強になったね。本編を見返してもわかるけど、まぁ役者さんは酷い目に遭ってるよね。よくケガ人が出なかったっていうくらい。オレ、フィリピンロケなんてやなこった! って(笑)。よくやってきたよね。
【西島】 そうですね(笑)。みんな、興奮して熱に浮かされたようになって、ちょっと瞳孔が開いていました。でも、やっぱり楽しいんですよね。日本ではできないアクションがやれるので。でも本当に危ないこともありました。
【たけし】 映画の冒頭の倉木が車の屋根に上って、男たちを次々に制していくアクションシーンは、すごくカッコいいなあって。でもよく観ると、車を固定していなくて、危ねぇなあって。まあCGだから、そんなに危険じゃなかったと思うけど。
【西島】 あれ、CGじゃないんですよ。
【たけし】 えっ! そうなの……。あーやだやだ(笑)。

◆共演は俳優人生の中で最も大きな財産

――おふたりが映画の現場で再会するのは、『Dolls[ドールズ]』(2002年)以来ですね。本作での共演は、おふたりにとってどういうものになりましたか。
【西島】 そんなにお会いできる方ではないので。今日もこうしてご一緒させていただけるだけで、僕にとっては学ぶことがたくさんあります。今回初めて、俳優として共演できたというのは、僕の俳優人生のなかでも、もっとも大きな財産です。(撮影でたけしさんと)対峙したときは、本当に高揚しました。正直もう、怖いものはないかな。……いや、これはちょっとまずいかな(笑)。でも、うれしかったですね。僕を見出してくださった方という想いがずっとあるので、そういう方と『Dolls』から14年を経てこうしてまたお会いできて、今度は俳優として共演させていただいたというのは、本当に夢のようです。
【たけし】 西島くんには『Dolls』でお世話になって、こちらこそ感謝しているというか。映画のなかで、見事な演技をしていただいたというのがあってね。またやろうって話もあって、ずっと気にしていたんだけど、役者としてどんどんランクが上がって、ここ何年かはトップクラスに上りつめてよかったなあと思うし。そんな西島くんと対峙するというのは、どうもね。比べられて下手だって言われるのも辛いし。出番の少ないダルマで良かったなって(笑)。でも、オレは(ダルマは)生きていると思うよ。
【西島】 そうですね。でも、そうしたらまたオファーされますよ!
【たけし】 そのときは、おかめとして出てくるかな。ダルマとおかめ、夫婦みたいにして……これじゃあ小津安二郎の世界だな(笑)。

――映画ファンとしては、本作を機におふたりのタッグが続いていくことを願っています。本作に続き、おふたりが共演するウェイン・ワン監督の『女が眠る時』(2016年公開予定)のほか、たけしさん出演の『人生の約束』(2016年公開予定)、スペシャルドラマ『赤めだか』(TBS系にて12月28日放送予定)など、久しぶりに役者ビートたけしの仕事が続きますが、たけしさんにとって、いま役者の仕事とはどういうものですか?
【たけし】 映画監督として撮るときは、基本的に監督がいい悪いを決めるわけだから、自分の芝居にOKを出しちゃう。だけど自分じゃない監督に、もうちょっとこうやってくれとか言われると、稽古ができるんだよね。役者の稽古をさせてもらっているような気がして、おもしろいなあって。役者の勉強はしたことがないんで、演技がどういうことなのかとか、自分の感覚でしか演技することがわからない。自分とは違う監督から、そうじゃなくて、こう歩いてくださいって演技をつけてもらうおもしろさっていうのかな。改めて自分のやっていることは、こういうところがいけなかったんだって気がついたり、勉強になるなって。

◆あるがままを見つめる目線

――役者としても、そして監督としても、さらなるステップを求めているのですね! 本作では、たけしさんの目が印象的に使われています。例えば『戦場のメリークリスマス』(1983年)ではデビット・ボウイ扮するセリアズ陸軍少佐に「美しい」と言われたたけしさんの目を、西島さんは完成作を観てどのように感じましたか?
【西島】 もともとたけしさんの目がどこかこう、現実をただ現実のまま見ているような目というか……。まさにダルマではないけど、ダルマの役はどこかたけしさんに近いところがあると僕は思うんです。「いや、世界はこうなんだ」っていう。そこに何か悲劇とか喜劇とかを見出すのは人間。ただ、そのあるがままを見つめる目線というか、そういうイメージが僕にはあります。ダルマの目線っていうのも、まさにそういうものだと思います。倉木や下々の者はそこに怒りとか、現状に対しての不満だったり、何かを変えたいとか、真実を知りたいとか、いろいろな欲望があるけど、ダルマは「いや、世界はこうである」と。ただそれを維持している、というのかな? 世界はこうであるってことを認めて、それをただ見つめている。そういう存在なんじゃないですかね、きっと。

――アミール・ナデルやイ・ジェハンら海外の映画監督たちを惹きつける、俳優・西島秀俊の内面に秘められたエナジーについて、久々に映画の現場でご一緒してみて、たけしさんはどう感じましたか?
【たけし】 演じることが好きで、自分なりに、自分の考え方で、いろいろな演技の仕方をやってみていると思う。それが楽しくてしょうがないんじゃないかなあ。でも、演じるってのは、非常に危険なことなんだよね。身分制度があった江戸時代には、演じることは快楽だと卑しめられて、身分制度からも外されていたくらいだから。米も何も生み出さず、ただ芝居が好きで、なおかつそれでお金をもらって、ごはんが食えるなんてねぇ?
【西島】 本当にそうですね。
【たけし】 お笑いのひとつより、おにぎり一個持ってくる人の方が、エラいに決まっているんだから。そう考えると、演技をすることがうれしいし、楽しいし、快感になる商売というのは本当に……。オレなんかこの仕事をやらせてくれる代わりに、選挙権も何も要らないって言うんだけどさ。税金も払うし、ちゃんと国民としての義務は果たすけど、権利は主張しない。だって商売がこれだもん! って感じがあるんだ。“河原乞食”の意味が、最近よくわかってきたよ(笑)。
(文:石村加奈)

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