• ホーム
  • 音楽
  • サブカルのカリスマ・大槻ケンヂ、“肩書”に悩む「サブカル=よくわからない人たち」

サブカルのカリスマ・大槻ケンヂ、“肩書”に悩む「サブカル=よくわからない人たち」

 TVアニメ『うしおととら』主題歌の「混ぜるな危険」を含む17枚目のアルバム『おまけのいちにち(闘いの日々)』を発売した筋肉少女帯。メジャーデビュー27年というレジェンダリーなバンドながら、アニメや若いアーティストとの積極的なコラボや、齢50近くにして大槻ケンヂが保ち続ける中二病的感性も求心力となり、常に時代の若者の心をつかみ続けている。ORICON STYLEでは、大槻にインタビューを実施。新作、筋少への想いから、若い世代にも支持されるその感性についてまで、様々な話を聞いた。。

■“伝説の…”と言われることに拒否反応

──本作のジャケットは、大槻さんの処女小説である『新興宗教オモイデ教』の文庫版イラストが採用されています。大槻さんの創作物は歌詞にしろ小説にしろ、 “中二病”的とも言われますが、大槻さんご自身は“中二病”についてどう思われますか?
【大槻ケンヂ(筋肉少女帯)】 うん。これまで自分の書く歌詞や小説というのは一種独特なものであり、大槻ケンヂ個人の思いを込めて書いてきたとずっと思ってたんです。ところが僕の歌詞に共感するという声を、若い方々からたくさん聞くんです。そういう声を聞くにつけて、自分固有の感性だと思っていたものは、実は若い少年少女が普遍的に感じる不安であったり、喜びであったり、そういった感情なんであるなぁということがわかって。

──しかし、中二病的な感性を齢50まで保ち続けられるのも並大抵なことではないと思います。
【大槻】 いや、僕だってバンドを始めた13歳の頃はまさか自分が50歳まで続けてるなんて夢にも思わなかったですよ。筋少が属するハードロック/ヘヴィメタルという音楽は、蛇蝎のごとく嫌われていた時代があったんです。極小的なものなんだけど、パンクvsへヴィメタルっていう時代もあって、仲が悪くてね。あとはニルヴァーナとかグランジロックの時代も嫌われてましたよね。だけど、どうも世界的な傾向で見ると若い人はハードロック/ヘヴィメタルが好きなんですよ。ハードなサウンドを求めているのね。これは100年経っても若い人はハードロックが好きなんだと思う。誰しもが抱える青春の悩みと、誰もが燃えるハードロック。2つの要素があったから、筋少は27年間支持を得てこられたんだなと思いますね。僕、個人的にはそんなにへヴィメタル好きでもないんですけどね。もちろん、嫌いではないですけど、へヴィメタルのボーカルを歌っているのがたまに不思議な気持ちになりますね。でもその人生が最高に面白いと思いますけど。

――“青春の悩み”という話がありましたが、言ってみれば筋肉少女帯は大御所バンドの位置づけですよね。
【大槻】 この間ある音楽番組に出させていただいたんですけど、“レジェンド”枠だったんですよ。僕は“伝説の〜”とか言われることに対してこれまですごく拒否反応があったんですよ。今を生きてる人間だから、伝説なんて言われると“終わったコンテンツ”的なイメージがあって、そう呼ばれるのは絶対嫌だなと思っていて。台本にあったら「外してくれ!」って怒ってたんですよ(笑)。でも、言葉って面白い、これが“レジェンド”だと、そこに多少のリスペクトを入れて下さってる部分があっていいなって。言葉ひとつの違いでね。その時、筋少のキャッチフレーズを「永遠の新人バンド」ってつけたんですけど、それは重要なことだなと思って。過去・現在・未来と、人間も、社会も、全てが変化していくじゃないですか。ロックバンドもそうで、どれだけ“レジェンド”って紹介されても、落ち着いちゃいけないというか、常に変化していくことに対して恐れない気持ちでいることが重要なんじゃないかと最近はよく思います。

■サブカル界って日本の“妖怪界”みたいになってる

――ちなみに大槻さんはミュージシャンではありますけど、若いアーティストは大槻さんの小説などからも影響を受けていますよね。ご自身の“肩書”って一言で言うとなんだと思いますか?
【大槻】 本当にわかんないの、俺、自分が(笑)。もうじき50になるんだけど、まだ50とも言えるけど、他に向いてる仕事があるんじゃないかって今でも思うもん。カリスマパティシエとか、ブラック企業のトップとか……。サブカル界ってさ、何かもう日本の妖怪界みたいになってるよね。何だかよくわからないことをしている人たちを、とりあえずサブカルと言っとけみたいな。終着地点は『ヨルタモリ』で能町みね子さんの隣に座ることなんだろうか(笑)。でもそれが筋肉少女帯の面白いところで、他のメンバーはとにかく音楽というものを突き詰めてる人間なわけですよ。それに対して、僕だけがふらふらやってて……そういう人を音楽のスペシャリストたちが固めてくれてるっていうのは、すごく面白い構図ですよね。筋少というのは“世界の奇祭”に近い構図があるなって。東南アジアとかのお祭りで、異様に盛り上がってて、町一番の力持ちがヤァヤァと持ち支える御神体。あれって端から見るとなんだあれ? って思うけど、周囲は異様な盛り上がりを見せているという。

──“中二病”は存分にこじらせたほうが人生も豊かになるのでしょうか?
【大槻】 だってね、この年までロックをやってるなんてどうかしてると思うんです。だけど50近くなると、人生ってだんだん『おまけのいちにち』の連続になっていくんですよね。おまけのクセにけっこうキツイこともあったり、悲しいこともあったりと『闘いの日々』なんですよね。

──おお、ここでようやくアルバムのタイトルにつながりました。
【大槻】 あっ、そうです。筋少のインタビューで僕が出て行くと、自分のことばっか話してプロモーションにならないって、27年間メンバーに怒られ続けてきたんですよ。アルバムのテーマが“過去・現在・未来”というものだったんです。未来ある若者は、たとえば筋少に影響を受けたと言ってくれる若いアーティストから僕らのことを知ることもあるでしょう。あるいは『うしおととら』といったアニメとか、声優さんとかね、筋少がコラボさせてもらったコンテンツをきっかけに買ってくれることもあるでしょう。でも、過去において筋少の歌に救われたとか、大槻ケンヂの小説を読んで感じるところがあったという人が、たまたまこのジャケットを目にしたら絶対に足が止まると思うんです。あれ、これなんだっけ? ああ、オーケンの『新興宗教オモイデ教』だ。筋少よく聞いてたなあ……って、そんなふうになってくれたら、彼の過去が現在になるんですよ。

──素晴らしいまとめですね。
【大槻】 僕の悪いところは、新譜のプロモーションをしなきゃいけないのに、自己心理分析的なことばっかりしゃべって、結果プロモーションどころかバンドの首を絞めるようなことを言ってしまう傾向があるんですけど、もうそういうのもいけないなと思いまして、だから最後に取って付けたようではありますが宣言しておこう、今回のアルバム、最高です! 本当、最高!!

(文/児玉澄子)



オリコントピックス