スマホ普及が生んだSNS世代のカリスマ

 人気の原宿系読モが一堂に会するイベント「LOOP vol.6」が、8月11〜12日にZepp DiverCity(TOKYO)で開催され、約5000人のファンを熱狂させた。同イベントを主宰する丸本貴司氏は、原宿系のカリスマ読モ、こんどうようぢ、志村禎雄らをマネジメントするプロダクション・レキシントンのプロデューサーで、現在の読モシーンをけん引するサイト『DOKUMO BOYS!&GIRLS!』(以下『読モB &G』)の設立者でもある。

■パーソナルな面が注目される“原宿系読モ”

 もともと若者向け雑誌の編集者だった丸本氏だが、12年に携わっていた雑誌の休刊を受けて、関わりのあった読者モデルの活動の場として「LOOP」をスタート。なお、今夏の「LOOP」は3000〜5000円のチケットが即完売したが、初開催時は無料にも関わらず動員はわずか150人ほどだったという。つまり12年時点では、現在のような読モシーンは存在していなかったと言える。

「客層も現在とは明らかに違っていました。初開催時に集まってくれたのはほぼ男子。それもファッション誌を熟読しているタイプの子たちでした。しかし、今やLOOPに来るのは約8割が中高生の女の子。また自作の応援うちわを振って熱狂する様子からも、おそらくアイドル好き。つまり、憧れの対象を応援したいという心理を持っている子たちだと思われます」(丸本氏/以下同)

 LOOPの客層の変化は、そのまま読モブームの変化とも重なる。

「ブーム自体はこれまでも起こっていますが、かつての読モブームは、読者にとって自分と体型が近い=コーディネートが真似しやすいところから始まりました。だから同性ファンがつくのは当然で、『読モB&G』も彼らの私服を紹介するサイトとしてスタートしたんです。ところが現在の読モシーン、特に原宿系読モは、むしろパーソナルな面が注目されています。そのためサイトもリニューアルして、彼らのインタビューなどを厚めに発信するようになります」

 丸本氏によると、現在の原宿系読モシーンのブレイクポイントは13年頃。14年3月開催のLOOPは動員1000人を超え、チケットも即完売した。

 この時期、10代がスマートフォンを“手にした”ことに注目したい。総務省発表の「通信利用動向調査」によると、13〜19歳の「端末別インターネット利用率(個人)」は11年末に18.2%だったのに対し、12年末には52.9%と飛躍的に伸びている。この推移と足並みを揃えて、若年層が一斉にSNSを始めたことは、現在の読モシーンと深く関わりがあるようだ。

「原宿系読モの人気の根幹にあるのは発信力。それも世間一般の価値観では変だと思われようと、自分がカッコイイ、可愛いと思うスタイルを貫いているところが支持されています。SNSというのは個人を発信するメディアであるとともに、同じ嗜好を持つ者同士で繋がることができる場です。SNSで自己発信をして人気者になった読モに、フォロワーという形でファンがつく。さらにそのフォロワーが、同じ趣味の友達に対して拡散していく。そうした流れで盛り上がっていったのが、現在の読モシーンだと言えるでしょう」

■人気が上がっても本拠地をスマホにこだわる読モたち

 さて、丸本氏の指摘した「発信力」というキーワードは、かつての読モブームのときも何かと取り沙汰された。例えば女性ファッション誌『月刊Popteen』の読モだった頃の益若つばさは、経済効果数百億円などと言われたものだ。

「雑誌をベースとした読者モデルと違うのは、原宿系読モたちがSNSをベースに純然たる自己発信をしているところ。雑誌というのも他者メディアなので、そこには確実にフィルターがかかるんです」

 雑誌の読者モデルは、本人の個性に加えて雑誌サイドのプロデュースによって人気者になっていく。それは、事務所のプロデュースによって本人の個性を輝かせるタレント育成とも発想が近い。一方で原宿系読モは、ほぼ自己プロデュースだ。

「人気があるから発信力もついてくるというのが雑誌ベースの読者モデルや芸能タレントだとしたら、原宿系読モは逆。まず発信力ありきで人気がついてくるんです」

 しかし雑誌も含むマスメディアは、強すぎる個性を平たくならしてしまうこともある。かつて編集者だった丸本氏も、こんどうようぢを雑誌に登場させるために金髪だった髪を黒く染めさせたことがあったという。

「今は彼らにああしろこうしろと言うことは一切ありません。むしろ人気が出てくるにつれてファッションや言動が保守的になってくる子もいるので、『そんなの本来のお前のスタイルじゃないだろう』とハッパをかけることもあります」

 もちろんフィルターなしに自己発信される強烈な個性は、見る人によっては異物に映る。しかし丸本氏は、彼らの見た目やキャラクターをテレビ向きに補正することはしない。なぜなら彼らの活動の本拠地はスマホだからだ。

「彼らには、テレビにたくさん出ることが人気者の証という価値観がないんです。なぜなら彼らのファンである10代は、テレビよりスマホを見ている時間のほうが長いですから。ただ、もちろんテレビの反響はとても大きいので、オファーをいただけるのはとてもありがたく思っています」

 なお、丸本氏は原宿系人気読モたちが出演するドラマ『原宿ドラゴン』(TOKYO MX)のプロデューサーにも名を連ねている。

「しかしどんなにテレビに出ても、本拠地はやはりスマホだという思いが彼らにはある。テレビに出るのも、より多くの人にSNSを訪れてもらいたいからなんです。そういう意味では、テレビでの活動を中心としたものが従来の芸能界だとすれば、ネットやスマホを中心とした新たな芸能界的なものができつつあるのではないかと感じますね」

 レキシントン所属でこのところ人気が急上昇している読モのかじゅ魔は、毎月恒例でファンイベントを自主開催している。それもイベント会場のブッキングから告知までを自身のスマホ1台で行い、300枚のチケットを毎回完売させているという。

 昨年、丸本氏がレキシントンに読モ部門を立ち上げたときに掲げたコンセプトは“スマホ世代の、スマホ世代による、スマホ世代のためのヒーローたち”だった。18歳のかじゅ魔はまさに、このコンセプトを体現する存在と言えるのではないか。

■読モの枠を超える活躍もスマホは新たな芸能界

 さて、現在の読モシーンを読み解くにあたって欠かせないのが、原宿に本店を置き、全国展開するアパレルショップのWEGOだ。人気の原宿系読モの多くは、WEGOの「読モスタッフ」というアルバイト制度から発掘されている。そもそも『読モB&G』も、丸本氏がWEGOに入社して立ち上げたプロジェクトだった。

「読モにハマる心理として“会える”という要素は大きいでしょう。そこはいわゆる“会えるアイドル”にも近いのですが、決定的に違うのは着ている服が衣装ではなく自己プロデュースによるコーディネートであるということ。ファンはそこに身近さやリアリティを感じるのだと思います」

 読モスタッフからスタートしたこんどうようぢは、8月にエイベックスからメジャーデビュー。大倉士門や藤田富は舞台や映画に出演するなど、もはやその活動の幅は「読者モデル」の範疇を超えている。

「それでも彼らが読モを自称するのは、現在のシーンをけん引してきたという自負があるからでしょう。読モシーンはまだできて間もないので、トップにいる彼らもいつまで生き残れるかわかりません。しかしこのシーンを絶やさず、次の世代に繋げるためには、自分たちが今頑張らなければいけないという使命感もあるようです」

 たしかに読モの未来はまだ見えない。しかし、丸本氏の指摘する「スマホを中心とした新たな芸能界的なもの」に、若者たちは向かっている。そこから次なるカリスマが登場するのも間違いないだろう。

(ORIGINAL CONFIDENCE 15年9月28日号掲載)



関連写真

  • 人気の“読モ”によるイベント「LOOP vol.6」の様子。約5000人のファンが詰めかけた(8月11〜12日開催)
  • 従来の「読モ」と新たな「読モ」の概念(図)
タグ

オリコントピックス