EDMアーティスト 2つの傾向

ムーブメントが本格化しているEDM。日本でも大型フェスが相次いで上陸していることもあり、アーティストへの関心もますます高まっているようだ。そんな中、EDMシーンに括られるアーティストには、「ビート重視型」と「歌モノ型」の2つの傾向があることが見えてきた。


■ロック、ポップスファンにも訴求、アヴィーチーのサウンド

 アメリカやヨーロッパ各国に続き、いよいよ日本でもムーブメントが本格化しているEDM。2年目を迎え、3日間に規模を拡大したフェス「ULTRA JAPAN」も大成功をおさめ、世界一美しいフェスと称される「SENSATION」や、世界三大EDMフェスの1 つである「EDC(Electric Daisy Carnival)」など、海外で話題を呼んでいる巨大フェスの日本上陸が次々と発表されている。

 そんなEDMシーンの代表格でもあり、その枠組みだけにとらわれない大きな支持を集めているのが、スウェーデンのDJ/プロデューサー、アヴィーチーだ。彼の魅力は、アコースティックの生楽器を多用したサウンドと印象的な歌のメロディー。10月に予定されていた来日公演が昨年に続きキャンセルされてしまったのは残念だが、14年1月発売のデビューアルバム『トゥルー』は日本でも累積7.7万枚(9/21付)を売り上げ、大きな支持を築き上げている。いわゆるダンス・ミュージックのコア層だけでなく、ロックやポップスを好む層にも人気が広がっているのがその大きな要因だ。

■ダンス重視の「ビート型」ポップソング意識の「歌モノ型」

 なぜアヴィーチーがここまで広い層へ人気を拡大したのか? その背景として、EDMシーンに括られるアーティストに2つの傾向があることが考えられる。もちろんハッキリと二分することは難しいが、1つは、あくまでDJとしての現場の活動が中心で、リリースは少なめか、もしくはミックスCDが主となっているアーティスト。もう1つは、ソングライターとしての評価が高く、ゲストボーカルを招いたオリジナル曲を多く発表し、意欲的にアルバムを発表するアーティストである。前者の代表が、ティエストやアーミン・ヴァン・ブーレンなど『DJ mag』が発表するDJランキングの上位に毎年位置しながら寡作な面々で、どちらかと言えばトランス系が多い。そして後者の代表がアヴィーチーやZEDDなど。デヴィッド・ゲッタやカルヴィン・ハリスもこちらに位置付けてよいだろう。

 楽曲の作風も、あくまでダンス・ミュージックとして機能することに重きをおく「ビート重視型」が多い前者に対し、後者はメロディーと歌詞に注力しゲストボーカルを迎えてポップソングとして聴かれることを意識した「歌モノ型」が多くなる。それゆえ後者はクラブやフェスに足を運ばないリスナーにもファン層が広がり、さらに、アッシャーやクリス・ブラウンを迎えたデヴィッド・ゲッタの『ナッシング・バット・ザ・ビート』や、セレーナ・ゴメスを迎えたZEDDの『トゥルー・カラーズ』など、フィーチャリング参加のアーティストが知名度を広げるきっかけにもなる。それゆえアヴィーチーやZEDD、デヴィッド・ゲッタなどは、ロックやポップスを好むリスナー層にも支持が広がっていると言える。

 10月2日にリリースされるアヴィーチーの新作『ストーリーズ』は、前作以上にカントリー・テイストを匂わせつつ、歌としての深みと洗練をより強く打ち出した1枚。メロディーは高揚感と哀愁の両方を備え、コールドプレイのクリス・マーティンやワイクリフ・ジョンなどゲスト陣も豪華だ。ヒット間違いなしの今作は、おそらくアヴィーチー自身にとっても、EDMシーン全体にとっても、大きな分水嶺になるのではないだろうか。(文/柴那典)

(ORIGINAL CONFIDENCE 15年9月28日号掲載)



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