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乱立するリバイバルドラマの是非

 内田春菊原作の漫画をドラマ化した『南くんの恋人〜my little lover』(フジテレビ系)が、若手イケメン俳優の中川大志が主演で、11年ぶり4度目の放送が決定した。『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)や『GTO』(フジテレビ系)、『イタズラなKiss』(同)など、これまでにも多くの人気ドラマがリバイバルされてきたが、こうしたリバイバルの傾向に対し、「あまりにも安直すぎるのでは?」「前作のイメージを壊さないでくれ!」といった声があるのも事実で、複雑な心境のファンも多いはずだ。

『南くんの恋人〜my little lover』に出演する中川大志と山本舞香 (C)ORICON NewS inc.

『南くんの恋人〜my little lover』に出演する中川大志と山本舞香 (C)ORICON NewS inc.

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◆『白い巨塔』や『華麗なる一族』など、リバイバル作品の成功例もある

 人気ドラマのリバイバルは認知度も高いので、テレビ局側にすれば視聴者の期待も煽りやすい。ある程度の視聴率も見込めるという利点もあり、一からオリジナル作品を作り上げる“冒険”に比べれば安心感があるといえる。ただし、前作の成功があまりにも大きいと、過剰な拒絶反応にあうことも多い。

 反町隆史主演の『GTO』(1998年)は高視聴率を上げた人気ドラマだが、2012年にEXILEのAKIRA主演でリバイバルされたときは、やはり「鬼塚は反町でなければ……」との声も多かった。とはいえ、平均視聴率は13.2%と“そこそこ”の数字を残すが、2014年の「第2期」に至ると7.2%と惨敗を喫する。今年の4月に放送された山下智久主演『アルジャーノンに花束を』(TBS系)にしても、2002年にユースケ・サンタマリアが主演した話題作(当時はフジテレビ系)のリバイバルを謳った野心作だったが、平均視聴率は8.6%と振るわず、改めてリバイバルドラマの難しさが露呈された。

 一方『金田一少年の事件簿』は、1995年の初代に堂本剛主演で高視聴率を記録し、その後も二代目を嵐の松本潤(2001年)、三代目をKAT-TUNの亀梨和也(2005年、単発ドラマのみ)、四代目をHey!Say!JUMPの山田涼介(2013〜2014年)が演じ、視聴率こそ初代には及ばないものの、それぞれ好評価を得てきた。これは、ストーリーが一話完結なので古臭くなりにくいことに加え、主人公に売り出し中の若手俳優を起用するというフォーマットが功を奏したといえるかもしれない。

 さらに過去には、唐沢寿明主演の『白い巨塔』(フジテレビ系、2003〜2004年)や木村拓哉主演の『華麗なる一族』(TBS系、2007年)などの成功例もある。ともに70年代に放送された超人気ドラマのリバイバルだが、それぞれ23.9%、24.4%(ともに平均)と高視聴率を記録した。『白い巨塔』に至っては最終回が32.1%と、1978年の田宮二郎版の最終回31.4%を上回り、伝説ともなった。しかしこれは、両作品とも原作が故・山崎豊子さんであり、特に前者はフジテレビ開局45周年記念企画でもあるので、制作費も別格の“大作”として例外に数えなければならないのかもしれない。

◆安易なリバイバルは、成功へのハードルはかなり高い

 今回、4度目の実写ドラマ化になる『南くんの恋人』は、1990年に石田ひかりと工藤正貴(TBS系)、1994年に高橋由美子と武田真治(テレビ朝日系)、2004年に深田恭子と二宮和也(同)と、足かけ25年、テレビ局3局にまたがる壮大なコンテンツともいえるが、一部で「なんで今、『南くんの恋人』なの?」「男の主人公がイケメンすぎるのが微妙」という声も挙がっている。ただ、この作品の“キモ”としては、“ポケットサイズになった、ちなみ(女主人公)のかわいらしさ”と“せつなすぎるラスト”にあるので、物語的にはいつの時代でも受け入れられる普遍性を持っているともいえる。新作のターゲットが若年層だとすれば、原作はおろか前作ドラマも知らない世代にとっては、かなりインパクトのある新鮮な作品として映る可能性もありそうだ。

 現在、30代以上の多くの視聴者にとって一番印象に残っているのは、おそらく2作目。当時、バリバリのアイドルだった高橋由美子のちなみ役は、本当に可愛らしくハマリ役で、“だんだん消えてなくなっていく”せつなさを見事に演じきり、視聴率でも1作目を上回った。3作目になると、同様に人気絶頂だった深田恭子でさえ高橋由美子を超えられなかったのか、視聴率も10%をきってしまう。新作のちなみ役は、『三井のリハウス』のCM出身の山本舞香。いくつかのドラマにも出演している美少女だが、女優としてはまだまだ未知数であり、現状では成否の判断は難しい。

 いずれにしろ、リバイバルドラマには成功例があると言っても少数であるし、むしろ安易なリバイバルは、先述した利点や安心感があるにしてもリスクが高く、成功へのハードルはかなり高い。とは言え、役者も含めた制作側が過去の人気ドラマの“遺産”にあぐらをかくことなく、情熱を持った作品作りを心がければ、たとえ数度のリバイバルであっても“金属疲労”を起こさずに、いつの時代でも新しい魅力を持った“新作”として受け入れられるのではないか。そうした意味では、新作『南くんの恋人』も、山本舞香の個性がちなみ役にうまくハマれば、シリーズ最高傑作になる可能性だって十分にはらんでいるのだ。

(文:五目舎)
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