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グルメ漫画の“帝王”久住昌之 『孤独のグルメ』はついに5期突入

 テレビ東京の人気深夜ドラマ、松重豊主演の『孤独のグルメ』が、10月からの放送でついに「Season5」(第5期)に突入する。ただ“おじさんがメシを食う”シーンがメインのドラマで、登場する店もごく普通の定食屋など庶民的な店ばかり。そしてこの『孤独のグルメ』(画・谷口ジロー)のほか、『花のズボラ飯』(画・水沢悦子)、『食の軍師』(泉昌之名義)もドラマ化されるなど、いまやグルメ漫画の“帝王”と言っても過言ではないのが、原作者の久住昌之(くすみまさゆき)だ。なぜ、彼の描くグルメ世界観が大衆にウケているのか?

■作風はどこかシュール 80年代よりサブカル界で注目

 久住は美学校の同期生・泉晴紀とのコンビ、泉昌之として、月刊マンガ誌『ガロ』(青林堂)でデビューする。その後、デザインや装丁、エッセイなどの仕事に携わりながら、1987年より『タモリ倶楽部』(テレビ朝日)の「東京トワイライトゾーン」(街の奇妙なものを紹介するコーナー。「空耳アワー」以前)にレギュラーとして登場するようになる。いわば、みうらじゅんやリリー・フランキー、蛭子能収といった、サブカル、アングラ的な嗜好が強い。当時のヒット作と言えば『ダンドリくん』(双葉社)。朝、起床して家を出るまでをいかに段取りよくすますか、たとえば「トイレで新聞を読む」という行為の効率化のため、トイレのドアを開けたままテレビを見るのがおススメ、といったようなことをひたすら解説し、その名の通りダンドリだけにこだわる内容だ。

 そうしたシュールな作風のマンガ作品を残してきた久住だが、グルメと言えば、そもそもデビュー作(泉昌之名義)の『夜行』自体、主題はただ駅弁の幕の内弁当をいかに美味く食べるか、のみ。『ダンドリくん』同様、どうでもいい些細なことを執拗に描写するのが特色で、それは泉昌之名義で現在連載中の『食の軍師』にも現れている。これが『孤独のグルメ』で谷口ジローに作画が変わると、「食」へのこだわりはそのままに、描写がよりオシャレ&キレイになり、『花のズボラ飯』同様、「この焼き鳥、すげえ美味そうだな」といった親しみやすさが付加される。

■高級から庶民志向になった現代にマッチする久住作品

 マンガ界の食の帝王といえば“海原雄山”(『美味しんぼ』)である。いわばグルメマンガの最高峰である『美味しんぼ』の連載開始は、1983年。現在も連載中だが、30年余の間に日本の食の楽しみ方も変わった。高級食材、高級料理こそ最高であるといった時代から、無添加無農薬の安全・安心志向へ向かうと同時に、激安グルメやB級グルメなどの庶民的なものがもてはやされる時代ともなったのだ。つまり、安くて上品ではない料理でも自分が美味く感じて楽しめるのであればそれでいい、という感覚が、久住の提起する世界観にマッチしてきたと言えるかもしれない。

  久住もバンド活動をゆる〜くやっていたり、『孤独のグルメ』に関しても『ガジェット通信』のインタビューで、「担当編集者的には、世のグルメブームに反発する意味合いの連載だったらしいが、人は関係ない。自分だけのグルメという意味で“孤独”のグルメというタイトルにした」といった主旨のことを語り、あくまでも個人的な愉しみから発していることをうかがわせている。それは『孤独のグルメ』の後半で久住自らドラマに登場した店を訪れ、ただ思うがままに食事や酒を楽しんでいる姿からも感じ取ることができる。

  久住昌之原作のグルメマンガの人気は、そうした、まずは自分が美味しくなければ、自分が楽しめなければ、といった人たちに共感された結果とも言えるかもしれない。実際には実現できそうもない高級レシピやレストラン探訪よりも、どこか等身大として共感できる“個のこだわり”を坦々と提示してくれる作品に、人々が惹きつけられているのだとも思われる。そうした意味で久住は、徹底的に“個”であることこそが、人に訴える力を発するのだということを実証したといえるのかもしれない。

(文/五目舎)



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