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バラエティに引っ張りだこ 噂の“女性装の東大教授”安冨歩とは?

 『アウト×デラックス』(フジテレビ系)や『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)、『行列のできる相談所』(日本テレビ系)など多数のバラエティ番組に出演し、そのパンチの効いた容姿が話題を集めている“女性装の大学教授”安冨歩氏。東京大学の現役教授であり経済学者でもあり、超エリート人生を歩むなかで、“本来の自分”はトランスジェンダーであり、女性の格好をすることだと気がついたという。そんな安冨氏にインタビューを敢行し“女性装”に至った経緯や人生観について語った。

バラエティでも活躍する“女性装の東大教授”安冨歩氏(写真:草刈雅之)

バラエティでも活躍する“女性装の東大教授”安冨歩氏(写真:草刈雅之)

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◆“女性装”はダイエットがきっかけ 男性は恋愛対象として見ていない

――女装に目覚めたきっかけを教えてください。
【安冨】 まず、私は「女装」しているのではありません。「女装」というのは性認識が男性である人がすることです。私は、私にとって自然な格好をしていて、それがたまたま女性の装いだ、ということなのです。そこで「女性装」と呼んでいます。そこに至るまではいくつかの段階がありました。

――“トランスジェンダー”に気づくきっかけは何だったんでしょうか?
【安冨】 2〜3年前、ダイエットして10キロ以上痩せまして。それまでの着ていた“男物”の服が合わなくなったので、新しい服を買いに行ったんですが、ウエストがくびれた体型で男物のパンツが似合わないんですよ。それで、女物のパンツを履いたらピッタリで、上に着る服も女物を着てみたら、『あれ? すごく気持ちがいいぞ』と。そこで私はどうやら女性の格好をすると安定し自然になれる。ストレスも感じないってことがわかったんです。

――安冨さんの場合は女性の心で、女性を好きになるということ?
【安冨】 正確に言うと、体は男性だけど女性の格好をする心を持ち、好きになるのは女性っていうことですかね。男性は恋愛対象としてありえないし、友だちとしても好きじゃない。だから、私の中で男性の必要性ってほぼゼロに近いんです(笑)。それなのに子供の頃は男の集団に入れられていたから、どれだけ苦痛だったか。

◆ずっと自分に違和感を感じていて、それに気づくのに50年かかりました

――でも、女性装をするときは勇気がいりませんでしたか?
【安冨】 女性の格好をすればするほど心が安定したので、勇気というよりむしろ急速にそっちに惹き付けられていった感じです。しかもこの格好をすると、女性との関係が楽になるのがいい。私は以前からずっと女性とは友だちとしても仲良くしたいと思っていて、でも男性の格好のままだと、なかなかそういう関係は築けないじゃないですか。

――身近な人の反応はいかがでした?
【安冨】 何年も一緒にいるつれあい(女性)がいるんですが、受け入れてくれています。ただ、私がこの格好でウロウロしてるのを見て近所の人が何を思っているか考えると、気が狂いそうになるって言ってました(笑)。でもテレビに出るようになったら、皆さん受け入れて下さったようです。

――お子さんたちは?
【安冨】 反対はしなかったです。彼らが子供のときに離婚をしてしまったので一緒に暮らしてはいなかったんだけど、息子は息子なりに10代の頃は縛られることに苦痛を感じていたようで。だからこそ私のことを理解してくれるのかもしれない。

――では、女性装のせいで身近な人との関係がおかしくなったりはしなかったんですね。
【安冨】 むしろ良くなったと思います。男性として暮らしていた頃に築いた関係――以前の結婚や親との関係は、全部虚像として創り出したコミュニケーションだから、やっぱりうまくいかないんですよ。ストレートの女性からしたら、男性とつき合っているはずなのに、そういう感じがしないのは不気味ですよね。今のつれあいも、私がトランスジェンダーだとわかる前はずっと違和感を感じていて、それがストレスになっていたんですよ。その問題は消えてはいないけど、今は違和感の理由がわかっただけマシだって言ってます。

――理由がわからないっていうのはお互いに苦痛ですよね。
【安冨】 私自身、ずっと自分に違和感を感じていて、それに気づくのに50年かかりました。その間に発生したストレスはすごかったと思う。苦手な男集団の中にずっといて、周りが何を考えているのか、まったくわからないし、わかってもらえないわけで。

◆カミングアウトできたら、その人にとって成功の第一歩

――精神的に孤独ですよね。
【安冨】 私の場合、苦痛の理由があまりに想定外だったので、気づくのに時間がかかったけど、それと同じくらいほとんどの人が本当の願望に気づくのは難しいんじゃないですかね? というのも、生まれてからすぐに男女っていう役割をはめこまれ、学校や会社という帰属集団を設定され、その帰属集団が抱く欲望を“感じなくてはいけない”“正しいと思わなくてはいけない”と強制されてるわけじゃないですか。

――でも、気づきたいと思っている人も多いはず。安冨さんのように気づくためにはどうしたらいいと思います?
【安冨】 今、もし何かを我慢しているなら、それがどれほど危険かってことにまず気づくことだと思います。そのポイントは仕事でもなんでも、今、自分がやっていることは本当に正しいのかを考えることなんだけど、正しいかどうかなんてわからないじゃないですか。だから、唯一の感覚は、やっていることに“意味”を感じるかどうかだけなんですよね。それで意味がないと感じたら、やめる勇気を持つことが必要。そのためには思い込みを捨て、打破しないといけないんですよ。

――“思い込み=それまでの常識を捨てること”ってかなり困難ですよね。下手をしたら、それで精神が壊れることもある。
【安冨】 だから逆に、私のように自分が女性の格好をしたかったとか、同性愛者だったとか、世間ではダメだって言われていることが本来の喜びだったと気づいてしまった人、特に若い頃にその経験をした人は強いですよ。それで、そのときにカミングアウトしたり家族と話し合ったり、困難を経験した人はさらに強い。カミングアウトできたら、それはその人にとって成功の第一歩です。私自身、以前は本を出版してもたいして売れなかったし、テレビにも呼ばれなかった。でも、こういう格好をしたらたくさん依頼がきて、いろんな意味で良くなっています。

(文:若松正子)

安冨歩(やすとみ あゆむ)

1963年生まれ。1986年に京都大学経済学部を卒業し、1991年に京都大学大学院経済学研究科修士課程を修了。1993年に京都大学人文科学研究所の助手を経て、1997年に『「満州国」の金融』で博士号(経済学/京都大学)を取得。同作で『第40回日経・経済図書文化賞』を受賞。名古屋大学情報文化学部の助教授などを経て、2009年に東京大学東洋文化研究所の教授に着任。2013年より自身がトランスジェンダーであることを知り、女性装で過ごしている。

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  • バラエティでも活躍する“女性装の東大教授”安冨歩氏(写真:草刈雅之)
  • 安冨歩氏(写真:草刈雅之)
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