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7年連続で縮小…家庭用ゲーム機に未来はあるのか?

 一般社団法人 コンピュータエンターテインメント(CESA)協会が発行した「2015 CESAゲーム白書」によると、2014年の家庭用ゲーム市場は2013年の4095億円を下回る3734億円となり、7年連続で減少。対して、7年連続で増加し、5000億市場にまで拡大したスマホ向けゲームと完全に立場が逆転、さらに家庭用ゲーム機の旗手ともいうべく任天堂・岩田聡社長の突然の逝去と、今後の不安は拭いきれない。果たしてこのままゲーム市場はスマホに完全移行し、家庭用ゲーム機は過去の遺物となってしまうのか?

移動中にスマートフォンでゲームアプリを楽しむ人は多い。現在のゲーム市場をけん引していると見られる

移動中にスマートフォンでゲームアプリを楽しむ人は多い。現在のゲーム市場をけん引していると見られる

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■家庭用ゲームはコアユーザー向け、スマホはライトユーザー向けという棲み分けに

 1983年に任天堂の『ファミリーコンピュータ』が発売されたことで、子どもから大人まで自宅で気軽にゲームを楽しめるようになってから30年以上。『ゲームボーイ』や『ニンテンドーDS』、『プレイステーション』、『Xbox360』、『Wii』など、創成期には考えられなかったほどハードも高性能化し、携帯ゲーム機の登場もあって個人でのゲームの楽しみ方はさらに多様化。2010年代に入ってからも『Wii U』、『プレイステーション4』、『Xbox One』と続々と新機種が発売されているが、徐々に頭打ちに。ここ10年ほどは1億台以上を売り上げた『プレイステーション2』や『Wii』『ニンテンドーDS』などのように、一大ムーブメントとなるようなゲーム機が登場していないのが今の現状だ。

 原因のひとつとしては日本人の「ゲーム離れ」が長らく叫ばれてきたが、家庭用ゲームの複雑化・高度化により、“マニアが楽しむもの”、つまりコアユーザー向けになってしまったことが挙げられる。もちろん、全てのゲームがそうではないものの、技術の進化に合わせて面白いものを追求していこう、という開発者の気概が仇になってしまった感は否めない。ところが、ここ数年、その状況も変わってきた。『ファミ通』発表による『ファミ通 ゲーム白書2015』によれば、家庭用ゲーム市場が右肩下がりを続ける一方で、全体のゲームユーザー数自体は大きく増えている。それをけん引しているのがスマートフォン向けのアプリゲームだ。

 先日開催された『モンストフェスティバル2015』で、予想を上回るファンの来場による混乱も記憶に新しいが、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行の波に乗って、『パズル&ドラゴンズ』(ガンホー・オンライン・エンターテインメント)、『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』(コロプラ)といったゲーム業界にとって新興勢力が台頭。その勢いは、『モンスターストライク』で再起を果たしたミクシィのように、ひとつの企業の命運までをも左右してしまうほどだ。こうした動きを受けて、バンダイナムコホールディングス、スクウェア・エニックスなど大手ゲーム会社も、こぞって自社の保有コンテンツを活かしたアプリゲームを開発し、ヒットを記録。『ファミ通 ゲーム白書2015』によれば、2014年の国内ゲームアプリ市場は前年比18%増の7154億円と伸長。推定ゲームユーザー分布図は家庭用ゲームの2612万人に対しアプリゲームが3376万人と大きく上回っている。

■故・岩田聡さんの忘れ形見『NX』、『シェンムー3』が提示した新たな“ゲームの作り方”

 近年のスマートフォン向けアプリゲームの進化には脱帽せざるを得ない。アニメーションやCGを利用した美しいグラフィック、著名クリエイターによる音楽やイラスト、脚本、そしてネットワークをうまく利用することで取り入れた家庭用ゲーム機にも勝るとも劣らないやり込み要素。手間のかかる配線やセット、ディスクの差し込みなど何もいらない。毎日持ち歩くスマホで、移動中などの限られた時間内で少しずつ進行できるものだから、軽い気持ちでぽちぽちと遊んでいたら自然と課金まですることに…という人も多いのではないだろうか。ハードが生活に密着しているものというのは何よりも強みであり、もはや家庭用ゲーム機など太刀打ちできないようにも思える。

 また、製作コストでも家庭用ゲームソフトとスマートフォン向けアプリゲームでは雲泥の差がある。家庭用ゲームソフトは大作ともなれば製作費も数十億円はザラで、製作期間も数年に及ぶ。対してアプリゲームは、年々増加傾向ではあるものの、家庭用ゲームソフトに比べれば格段の低コストで製作が可能、さらに購入料金以外にも課金による収益も莫大だ。費用対効果を鑑みた際に、各ソフトメーカーがどちらの製作に重きを置くかは一目瞭然といえるだろう。近年では、予算の削減や方針の違いからか、有名ソフトメーカーの人気ディレクターの退社などの話も聞こえてくる。

 だが、ゲーム会社もこの状況にただ迎合していくだけではない。家庭用ゲーム機が再び盛り上がりそうな新たな動きも見えてきた。例えば、スクウェア・エニックスの人気RPG「ドラゴンクエスト」シリーズの最新作『ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて』は、ソニーの据え置き型『PS4』、任天堂の携帯ゲーム機『ニンテンドー3DS』の両方で発売することを発表。人気ゲームソフトが発売後に他社機向けに“移植”されるというパターンはあるものの、ここまでの大型タイトルがソニー、任天堂という双方のゲーム機向けに同時に発売されるのは異例とも言える。開発側にとっては負担も大きくなるだろうが、ハードの選択肢が多くユーザーも分散化しがちなところに複数ハードという手段をとったことは、『ドラクエ11』というタイトルとしては大きなメリットとなることは間違いないだろう。
 
 『ドラクエ11』に関しては、任天堂の次世代ゲーム専用機プラットフォーム『NX』向けの発売も検討していることが明かされている。『NX』は今年7月に逝去した岩田聡前社長が最後に手掛けることとなったゲーム機で、まだ詳細は明らかにはなっていないものの、従来とは全く違う発想のゲーム機になることが予想される。

 また、先ごろ発表された、元セガのゲームデザイナー・鈴木裕氏が手掛ける新作『シェンムー3』が、クラウドファンディングサイト『Kickstarter』にて開発資金募集キャンペーンを実施。計6万9320人の出資者が集い、約8億円もの資金を獲得。主にコアユーザーやコアファンによる支援ではあるものの、新たな“ゲームの作り方”の試金石となりうる動きであったことは間違いない。

 思えばファミリーコンピュータから始まり、ゲームボーイ、ニンテンドーDS、Wii…歴代のゲーム機たちは、新たなゲーム体験への驚きとともにいつもたくさんの感動、喜びを与えてくれた。家族や友人とのコミュニケーションツールでもあった。技術が進化した今だからこそ、原点回帰が求められていることは明白。ネット上で散見される希薄なコミュニケーションではなく、より“実感”“体感”できるコミュニケーションが可能な家庭用ゲーム機やソフトの出現で、状況は一変する可能性が十分にある。なにより「テレビゲーム」は、世界に誇るジャパニーズカルチャーの代名詞的存在。その灯を絶やすことなく、次代へと引き継いでいくことは責務と言っても過言ではないはずだ。

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