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角野卓造&松重豊が見た『HERO』チーム「みんな売れっ子になった」

 元・部長と現・部長。城西支部の検事、事務官とは違って、明確なコンビ相手のいない牛丸豊次席と川尻健三郎部長は、『HERO』という世界観のなかで、どこか慎ましく肩寄せ合っている印象がある。互いに責任ある者同士の、何とも言えない悲哀が可笑しくもあり、リアルでもあり。オリジナルメンバーの角野卓造と、シーズン2からの松重豊が、劇中の関係性そのままの雰囲気で、縦横無尽に語ってくれた。

『HERO』チームの盤石な姿を語る角野卓造と松重豊

『HERO』チームの盤石な姿を語る角野卓造と松重豊

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◆『HERO』メンバー全員に共通している二重構造

「僕は、次席のところに行って甘いもの食べたら、もう(笑)。それだけで(役に)戻れますね」(松重)
「松重さんが来てくれる時間がいちばん落ち着くんですよ。前は、松重さんのポジション(城西支部部長)をやっていましたけど、次席になったいまは孤独でしょ? 松重さんといるとホッとします。撮影以外でも、芝居の話とかして」(角野)
「世間話に花が咲いて」(松重)
「『孤独のグルメ』の話を聞いたりしてね。食べものの話で盛り上がったりして(笑)」(角野)
「甘いもの食べながら(笑)」(松重)

 そんなふたりの現実の信頼関係がキャラクターにも反映されている。
「(シーズン2から)新しく入っていただいたメンバーもいるじゃないですか。でも、昔からずっと一緒にいるような気がするんです。なんだろう、この『つながりのよさ』は。みんな、舞台やっていたりするからかな?」(角野)
「舞台のひとが多くて、お芝居の共通言語がある、っていうのは確かですね。角野さんの牛丸次席は、このポジション(部長職)を経て出世なさっている、上にいらっしゃるということで、なんとなく、僕が、川尻が、抱えていることをわかっていらっしゃる。それが俳優部としてのことなのか、役としてなのか、わからないんですけど(笑)。僕としては胸襟を開きやすいんですよね。(城西支部の)なかでの苦労もわかっていらっしゃる。そういう役の上での甘えもあって。角野さんには思いっきり甘えていたような気がします」(松重)

「それはメンバーみんなに共通していて、二重構造みたいなのはあるかもしれない。(シーズン1の頃から考えたら)八嶋(智人)もコヒ(小日向文世)さんも、すごい売れっ子じゃないですか。14年の重みはあるよね」(角野)
「前任者、つまりシーズン1から作り上げてきた人たちの愛情があるんですよ。(前任者たちに)もう1回作ったとしても絶対おもしろいものになるぞ、という自信があるからこそのチームワーク。僕らからすると、うまくそこに乗っかるだけでよかったんです」(松重)

「みなさん、前の作品をリスペクトしてくださっていたと思うんです。それがあって、きゅっと結べた部分があって。で、一回つながると、けっこうチェーンが強いひとたちだった(笑)。映像なんだけど、一緒に舞台をやったような、不思議なニュアンスがあるんだよな。まあ、木村(拓哉)君の磁力が大きいと思うけどね」(角野)
「そうですね。真ん中には木村君が核として居てくれている、背負ってくれている、チームの盤石な姿がありました。あとから参加した者からすると、ありがたいところに入れてもらったなと。ただ、僕は出世したくない。次席にはあがりたくない(笑)」(松重)

◆心の動きを想像するだけで僕らは震えます

 それにしても、対照的な元・部長と現・部長である。
「僕は、角野さんのお顔から滲み出るような温かさとか優しさとかが皆無で、どちらかというと、恐怖を与えたり、人を地獄に落とし込むようなキャラクターの顔なので。(部長としては)全然違うと思うんですよね。あと、検察官をまとめあげる部長の仕事は、普通の組織とは違います。引っ張っていくって感じじゃないんですよ。『まあまあまあ』となだめることの連続のような気がする(笑)」(松重)
「検事は独任官庁だから、個人商店のようなもの。(部長は)商店街の会長みたいなもんでしょう。せいぜい『やりすぎないでね』と言う程度。ただ、いざ大きい問題が降り掛かってきたときは、自分が先頭に立って『受けるぞ』ってなるんだけどね」(角野)

 そして、検察という仕事の特殊性を指摘する。
「普通の会社は利益を上げるために働いていますよね。でも検察は正義という、ものすごく漠然としたものに向かっている。特殊な人たちだし、特殊な組織。そのことを観てくださる方が受け入れてくださっているから、久利生公平の一風変わったヒロイズムも成立しているような気はしますね」(松重)
「犯人を罰する、というのが検察に対する世間のイメージでしょう。でも、久利生公平は罰するのではなく、被害者の側に立って、何かを考え、真実を見つけだそうとする。その姿勢はある種、特殊でしょうね」(角野)
「検察官の考え方ひとつによって、誰かの人生が変わってしまう。そこを背負って、抱えていく。その心の動きを想像するだけで、僕らは震えます。すごい仕事ですよ」(松重)
 さて、俳優であるふたりにとっての「正義」とはなんだろう。
「あまり正義に結びつきにくい仕事ではありますが……たとえば『いい加減だな』と感じたものに対する怒りはあるかもしれない。もちろん、杓子定規にきちっとやればいいってものではないですよ。この仕事は、ある意味では『いい加減さ』というフレキシビリティによってサンドイッチされてもいる。ただ、ある種の『手抜き』を目の当たりにしたときに、沸き上がってくる怒りは、ひとつのモノサシになる。それを正義と呼んでいいのか疑問ですが、でも『そんなもんじゃねえだろ』という気持ちはありますね。法とは言わないまでも、(芝居にも)何らかのモラリティはあるような気がします」(角野)

「正義ですか……難しいですね。立場が変わったり、時代が変わったりすると、正義と思っていたものが間違いだったりする可能性もあります。その瞬間、その瞬間に、公平にジャッジできるかどうか。それが正義だとは思います。ただ、正義という言葉になると、僕はちょっと危うさも感じてしまうんですよ」(松重)

 「正義」の捉え方も対照的。そんな角野と松重が「特殊な組織」の上司である牛丸と川尻を体現してるからこそ、『HERO』シリーズには一種独特の厚みが生まれているのだ。
(文:相田冬二)

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