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作家活動45周年・松本隆の作詞論 松田聖子新曲での“黄金トリオ”復活も話題

 日本の音楽史に多大な影響を与え続ける作詞家・松本隆。今年は作詞活動45周年を迎え、トリビュートアルバム『風街であひませう』(6月24日発売)発売、8月に東京国際フォーラム ホールAでのイベント「風街レジェンド2015」など、かつてない規模での周年企画が進んでいる。今回、ORICON STYLEでは、松本隆に独占インタビューを実施。多くの楽曲を手掛けてきた松田聖子の作品に“名作”が多い理由や、CDで対談している宮藤官九郎への想いなどについて聞いた。

■松田聖子の“B面”にも名曲が多い理由は?

――今まででいちばん大きなプロジェクトになっているように感じますが、45周年はシングルレコードの回転数にかけているというというのは本当ですか?
【松本隆】 45周年の話がここまで大きくなってしまったので大義名分が必要になっちゃったから。でも今、松本隆で盛り上がってくれている人はドーナツ盤のことを知らない人が多くて、「ドーナツ盤って食べられるんですか?」みたいな(笑)。それじゃ、(筒美)京平さんのアイデンティティがなくなってしまうよね。シングルのA面をランキングのトップテンに入れるのが、京平さんのこだわりのひとつだから。

――松本さんはシングルの位置づけについてどのように考えているのでしょうか
【松本】 僕はよくシングル盤の売り上げ枚数とランキングの順位で比べられることが多いけど、僕にとってシングル盤というのは付録みたいなもので、自分の愛すべきアーティストにはアルバムが売れてほしいという気持ちがあるんです。実はそっちのほうが効率いい。同じミリオン・ヒットでもアルバムはシングルの10倍になるでしょ(笑)。松田聖子に関していうと、80年代は半年に1枚のペースでオリジナルアルバムを出して毎回最高で80万枚、最低でも40万枚、平均して50万枚以上のセールスがあったんだから、単純にシングル盤の売り上げだけで比較してほしくないな、という自負はある。

――松田聖子さんをはじめ、アルバム1枚全部松本さんの作詞という作品が多いですよね。
【松本】 自画自賛になりますが(笑)、名作が多い。売れなくても名作は存在するわけです。例えば、はっぴいえんどの「風をあつめて」はアルバム『風街ろまん』の中の1曲だけど、今ではみんなが知っている超スタンダードになっている。だから僕にとってシングル盤は重要ではない。オリコンランキングにとってシングル盤は重要だけど、僕にとっては発火点の目安になる程度なんです。当時はシングル盤に力を入れてアルバムは手を抜くという人がいたけど、僕はそれをしたくなかっただけ。シングルB面曲でも同じことで、松田聖子のB面は定評が高いでしょ? A面より良い曲とされるB面があるくらいだからね。

広瀬すずの朗読に感じた現役の青春の強さ

――『風街であひませう』には朗読CDもついていますが、思えば、今まで松本さんの歌詞を朗読するというアイデアがなかったというのも不思議ですよね。
【松本】 これは革命的なことなんだよ。今まで歌詞は常に音楽の添え物みたいに軽く見られていたから、音楽を取っ払っちゃうとこうなるということを聞かせたかった。ある意味これは歌詞だけで自立できることを証明できたよね。

――朗読で松本さんの歌詞を改めて聴くと、それまでサウンドやメロディで気付かなかった詞がストレートに入ってきます。
【松本】 意味が違う詞に聞こえてくるよね。薬師丸(ひろ子)さんの「あなたをもっと知りたくて」とか。彼女に「あの曲って明るくて爽やかなタイプの曲なのに、そんなの読んで面白いの?」って聞いたら「面白いんです」っていうわけ。あの人は優れた感性を持っていて、詞をそこまで理解して歌っている。そういうのってやっぱり朗読にも出てくるよね(笑)。あと、この朗読のCDの「魔女」から「初戀」っていう流れがすごいね。女の子の二面性が分かるよね。

――その「初戀」は今人気の広瀬すずさんが朗読されていますね。
【松本】 現役の青春の強さですね。彼女にあの歌詞を読んでもらうと改めてこの曲の世界観を確認する部分があるよね。斉藤由貴さんは悔しがっていたからね(笑)。

■『風街であひませう』は『あまちゃん』vs『風街diary』?

――いつか朗読のコンサートをやってほしいですね。
【松本】 是非やりたいよね。皆売れっ子で忙しいから、参加してくれた人を全員呼ぶことは難しいと思うけど。今回の『風街であひませう』は、『あまちゃん』の音楽作品関連を手掛けていた木谷君がトリビュートを担当して、映画『海街diary』の是枝裕和監督が朗読を手がけているから、基本的な構造としては『あまちゃん』vs『海街diary』なんだよね(笑)。

――その『あまちゃん』ですが……。今巷で言われている昭和の歌謡曲ブームは2年前の『あまちゃん』の存在がとても大きかったと思うのですが。
【松本】 それはクドカン(宮藤官九郎)の功績だよ。クドカンは天才だと思う。

――松本さんは『あまちゃん』はどう見ていましたか。
【松本】 秋元康は出てくるけど、僕は出てこないなって(笑)。クドカンのドラマはテンポがいいんだよ。『あまちゃん』はよくできているドラマだなって思って、震災のところまで見ていた。震災以降はつらくて見られなくなってしまった。

(文/竹部吉晃,長井英治)



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