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鈴木雅之監督&脚本・福田靖氏が明かす『HERO』裏側 テレビサイズを映画2作目でどう作るか

 社会派であり、コメディであり、ラブストーリーでもある。映画『HERO』は、14年半にわたるシリーズの三本柱が、ついにひとつになった一作。この絶妙なバランスはいかにして出来上がったのか。シリーズの生みの親である鈴木雅之監督と脚本の福田靖氏が本作の裏側を語った。

◆壁によって検事たちの精神が逆に見えてくる

 今回の事件の舞台となる「大使館」は、前作の映画のときから候補としてあがっていた企画だという。ただ、治外法権や外交特権といった国際的なルールは一般の人にはなじみが薄い上に、「国境を超える」という主題は観念的。それだけに映像化は難しかったと鈴木監督は語る。

「絶対に超えられない壁の話なんですよね。ただ、超えられない話をやったおかげで、初心に立ち返れたと思います。『HERO』は、法を守るという自分のルールを裏切らない精神の、仲間の、集団の物語なんだと。正直、監督としては『治外法権の壁』を扱うのは難しかったけど、そこに向かったことで、検事たちの精神が逆に見えてくる、そういう作り方ができたような気がします。壁を破れないからこそ、その法を守る、その精神が前に出てくる。たとえ、結果につながらなくても、検事という人たちは、ずっとそれを思い続けていなきゃいけないんじゃないか。そんなふうにあらためて思えた。苦労したからこそ、この企画は間違っていない、と思うことができました」(鈴木監督)

 一方、福田氏はそこに『HERO』の可能性を見た。
「『HERO』って、ドラマでやるのと、映画でやるのとで、いったい何が違うんだ? ということになる作品だと思うんですよ。たとえば『海猿』なら、映画サイズというものもイメージしやすい。ただ、『HERO』はテレビのなかできちっと収まるもので、ジャスト・テレビサイズなんですよね。映画としては2本目ですが、テレビサイズのものを映画サイズにするにはどうしたらいいかを、あらためて考えました」

「シーズン2で、一部キャストが変わった新しい座組でも、城西支部のメンバーがいれば『HERO』は成立する、という発見があったんです。つまり、雨宮がいなくても『HERO』になる、と。で、今度はそこに雨宮が還ってくる。じゃあ、何ができるのか? これはワクワクしますよね。まずは、そこからだったと思います。今回の大使館の扉が開くか、開かないかということは、非常に観念的なことですよね。決して大げさなことはやらないけれども、『HERO』だったら、ある観念的なことも、あくまでもエンタテインメントのなかで出来るんじゃないか。そう思ったんです。結果、監督の言葉を借りれば『大人っぽい作り』になりました。そう意味で『HERO』はなかなかタフなコンテンツなんじゃないかな」(福田氏)

◆深読みされる?当たり前のことを言う普通の台詞

 福田氏はシーズン2の第1話で、久利生公平をギャップなく演じる木村拓哉を観て、「これはイケる」と確信したという。木村の存在は、14年前も、いまも、シリーズの根幹だ。

 福田氏は語る。
「脚本を書く上では、木村拓哉という人が演じることが大前提にあります。この人の持っている価値観を想像して書くわけですね。この人がすっと台詞を出せるように。たとえば、シーズン2で『仲良しだけど、仲良しグループじゃない』と言い切るシーンがありましたけど、わかり合っているけれどベタついてないメンタリティは、そういうところから来ているのかもしれません」

「今回の映画の『オレのいまのパートナーはお前だ』という麻木に対する言葉も、別に恋愛の台詞でもなんでもなくて、事実として『いまのパートナーだ』ということを伝えているんですよね。そこに、ゴチャゴチャしたベタついた感情は必要ない。その距離感はわりと意識しています。これはもう最初から一貫していますね。久利生自身は普通のことを当たり前に言っているだけなのに、いろんな方が深読みしてくださる。そうなっていることはありがたいですよね。久利生って別に、いわゆる『いい台詞』ではなくて、もっと普通のことを言っているんですよね。それが『いい台詞』に聞こえればいいなとは思っていますけど」(福田氏)

 鈴木監督もそこを指摘する。
「意外と、真っ当なことを言っていますよね。ものすごく真んなかにある台詞。たとえば『ひとの目を見て話したいんだ』とか。湾曲していなくて、ストレート。普通だったら照れくさい台詞ですよ。でも、木村拓哉は、ああいう台詞を、あんなふうに言える人なんです。木村君は、役者という仕事にブレがないんです。飽きていないんですよ。もう、かれこれ25年も一線でやっている。僕も長い付き合いになりますけど、取り組み方がはじめの頃とまったく変わりません。取り組み方というより、楽しみ方かな。だから、久利生をキープできているんですよ。14年なら14年、歳をとった久利生がきちんとそこにいるんです」

「『いまのパートナーはお前なんだ』という台詞はとても大事にしていましたね。ただ、こういう台詞の一方に、『パンナコッタ、やなこった』という遠藤賢司のくだらない台詞もある(笑)。これは八嶋(智人)君以外は言えませんよ。福田さんもね、(演じるのが)八嶋だから書いているんだよ。あの画のなかでしか言わないような台詞を、八嶋が見事にすりぬけていく。で、木村君は真っ当な台詞を、本当にストレートにカメラを見て言う。それを見ている僕たちはほくそえむ(笑)。つまり、『HERO』にはそれだけの役者が揃っているんです」(鈴木監督)
(文:相田冬二)



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