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作詞活動45周年・松本隆が語るヒット観「大衆が欲しがっているものを作ること」

 日本の音楽史に多大な影響を与え続ける作詞家・松本隆が、作詞活動45周年を迎えた。6月24日にはトリビュートアルバム『風街であひませう』を発売、8月21日、22日には東京国際フォーラムAで松本隆、細野晴臣鈴木茂をはじめ豪華出演者が登場する過去最大規模のイベント「風街レジェンド2015」を開催するなど、かつてない規模での周年企画が進んでいる。今回、ORICON STYLEでは松本隆本人に独占インタビューを実施。時代を彩ってきた作詞家ならではのヒット観について明かしてくれた。

■歌詞は音楽の“添え物”みたいに軽く見られていた

――『風街であひませう』完全生産限定盤には著名人による“朗読CD”がついていますね。
【松本】 これは革命的なことなんだよ。今まで歌詞は常に音楽の添え物みたいに軽く見られていたから、音楽を取っ払っちゃうとこうなるということを聞かせたかった。ある意味これは歌詞だけで自立できることを証明できたよね。

――松本さんはこれまで多くの歌謡曲の作詞をしてこられたわけですけど、ここ数年の歌謡曲再評価については、どう思われますか?
【松本】 楽曲の価値や完成度が高いから当然のことだと思う。歌謡曲っていうのは大衆のいちばん俗っぽい部分だから、本来は今のアイドルソング程度でよくて、あそこまで完成度が高い必要はないわけ。とくに1980年代はバブルと重なったことで付加価値が付き、音楽の質が高くなった。文化はお金がかかるものだから、バブルでみんなが潤沢にお金をもっていたことが文化を豊かにしたんだと思う。景気のいいときには面白い文化が生まれるし、景気が悪いと文化もしぼんで廉価ものが多くなってきてしまう。日本は1980年代にある種の頂点を極めたから、そのあとは徐々に劣化していくわけ。誰も認めたくないけど。企業や経済は劣化していくし、人口は減るし、貧富の差は激しくなるし……。

――文化が時代を活性させることは難しいと。
【松本】 そんなに甘いものではないんだよね。経済は経済で自立していないと、文化は作れない。食べるものがない状況で、音楽はその人を慰めることはできるけど、お腹の足しにはならないでしょ。それが現実だから。

――では、松本隆さんが書く歌詞が45年経っても古くならないのはご自身ではどのように分析されていますか。
【松本】 分析はできないよ。45年前に書いた歌詞が古くならないのは自分でも不思議。

はっぴいえんどは4つの角がガチガチしていたから上手くいかなかった

――8月に行われるトリビュートコンサートも“プレミアチケット”になっていると聞きますし、やはり時代を彩った松本さんの歌謡曲を求めている人は多いのではないでしょうか。
【松本】 今まではこういうイベントを企画すると「懐メロですか?」と言われて、企画倒れになってしまうことが多かったんだけどね。Twitterのタイムラインを見ると多くの人が「すごいメンバー」という感想をツイートしているわけ。大衆が欲しがっていているものをメディアが対応できていない。そういうときに、大衆が欲しがっていているもの作るとヒットする。それは今まで僕と(筒美)京平さんがやってきたことなんだ。

――中でも特に注目を集めているのは、元はっぴいえんどの3人が同じステージに上がるということですね。
【松本】 前から細野さんがやりたがっていたことで、大滝(詠一)さんを口説きに行こうかと言っているうちに、亡くなってしまった。はっぴいえんどは4つの角があって、それがガチガチしていたから上手くいかなかったんだけど、こういう人間関係は1ヶ所が崩れると意外とうまく回り出してしまうことがあって……。昨日、細野さんと僕と(鈴木)茂の3人で会って当日どういう曲を何曲やるかについて話し合ったんだけど、非常にスムーズで、あっという間に10分くらいで終わってしまった。

――今回は松本さんがドラムで参加することも話題になっています。
【松本】 敵前逃亡するかもしれない(笑)。体は生ものだから練習をやりすぎると筋を痛めてしまうわけ。今はその加減が難しいなと思っていて。これって映画の『ロッキー』と同じじゃない? 『ロッキー』と同じくらいの苦労なので、誰かこれを映画にしてくれないかな(笑)。まず新しいドラムを買うことから始めて、今はスティックを作ってもらっているところ。

(文/竹部吉晃,長井英治)



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