ライブツアーの組み方に変化

 ここ数年、ライブの収益を重視する傾向が強まっているのは周知のことだろう。そんななかで1つの傾向として挙げられるのは、ライブ・ツアーの会場のタイプに多様性を持たせることである。

 例えばMr.Childrenは、6月初旬までのツアー「REFLECTION」はアリーナで、7月中旬以降のツアー「未完」はスタジアム規模で敢行。今年は他にもサザンオール
スターズがアリーナ公演とスタジアム(ドーム)公演を混在させながら1つのツアーを組んでおり、昨年のRADWIMPSに至っては数百人キャパのライブハウスから万人単位のアリーナを取り混ぜてのツアーが話題になった。今年なら、ゲスの極み乙女。back numberも、RADWIMPSほどではないが、同様の傾向が感じられるものになっている。

 純粋に制作面からすると、同一ツアー内での会場の規模やタイプの差異が大きいと困難な点が増える。大きなステージ用のセットや演出はライブハウスには持ち込めないし、それはPAについても同様。そしてスタンディングの会場とホールとでは演者側の意識も変わり、セットリストや構成も変更する。

 それでもこうした動きが起こっているのは、オーディエンスへの意識の高まりが作用しているからだろう。例えばライブハウス公演のチケットを取りそこなった人でも、大会場の公演なら購入できる可能性が上がる。大都市圏では大きくならざるをえない会場も、地方都市なら小さなハコで開催しやすい。また、熱心なファンなら、別のパターンやシチュエーションでのライブも観てみたいもの。つまり同じツアー内でも、リピーターが確保しやすくなるのだ。それともう1つ、ライブ環境によって違った表現を試みたいというアーティスト側の創作上の欲求もあるだろう。そしてこうした組み方は、結果的にはツアー全体の動員数の向上に繋がるはずである。

■ツアーグッズでも限定商品を増加、継続的にファンの関心を引く

 この発想は、ツアーグッズの企画にも反映されている。バンドによってはその日その会場の表記が入った限定Tシャツを作ったり、ツアーの途中から新規デザインのグッズを投入したりする。CDにしても、ツアー会場限定販売のものを作ったり、ここ数年はその日の演奏をその日のうちにライブ盤にプレスして売る手法
も出てきている。

 こうした工夫はファンの注目を引く状態を継続させることになり、それがツアー全体の盛り上がりに、ひいてはアルバムのセールスに繋げることも期待できるだろう。といっても今はオーディエンス側も慎重で、先述したが、「CDを買うかどうかはライブを観てから判断する」というファンも少なくない。そうなると最
後は「いかにいいライブを見せられるか」という、当たり前とも言える“原点”が大事になってくる。

 いずれにせよ現代は、かつての「楽曲制作→アルバム発売→ツアー」という単純な流れでなく、その循環の中でもさまざまな方面に広げ、ファンの選択肢を増やそうとする傾向にあるのは間違いない。また、これらの試みの過程では、アーティスト側にとっては、ファンのニーズや期待が可視化されることも多いはず。それを呑み込んだうえで、たとえば次の新曲やアルバムをファンにどう届けるのか。あるいはそれ以外の層に対しては、どう波及させていくか。アーティスト側のクリエイティビティやサービス精神は、こうした点でも試されることになりつつある。
(文:青木 優)


(ORIGINAL CONFIDENCE 15年6月29日号掲載)



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