• ホーム
  • 音楽
  • 乃木坂46、“総選挙”出ないことで独自の立ち位置を構築

乃木坂46、“総選挙”出ないことで独自の立ち位置を構築

 アイドルグループ・乃木坂46の12thシングル「太陽ノック」が7月22日に発売される。前作「命は美しい」は初動50万枚を突破し、10作連続1位を達成。上半期シングルランキングでは、AKB48、SKE48に続き「命は美しい」が4位にラングイン。生駒里奈が7作ぶりにセンターに立つ今作にも注目が高まっている。乃木坂46は結成当初、AKB48の公式ライバルとして結成されたが、躍進の過程で“ライバル”の意味合いは変容した。

◆48グループの成功手法が禁じられ、新たな方法を模索

 乃木坂46が所属するのはソニー・ミュージックレコーズ。“乃木坂”は同社ビルの所在地で、AKB48も元々この乃木坂ビル内のデフスターレコーズ所属だった。それがキングレコード移籍後に大ブレイク。再チャレンジを図ったソニーの社内プロジェクトと“公式ライバル”構想を持っていた総合プロデューサーの秋元康氏との協議から、乃木坂46が生まれた経緯がある。

 レコード会社的な位置づけは文字通りライバルだったが、秋元氏からの課題は「AKB48と違う形のグループにする」ことだったと、N46Div.の今野義雄氏が語っている。楽曲や振り(アップテンポのアゲ系でなくミドルテンポのゆったり系)、衣裳(ミニスカートでなく膝上)からAKB48とは路線を変えた。メンバーは全国オーディションからAKB48より、というかアイドル界屈指の美形揃いになり、清楚感が打ち出された。何より大きかったのは48グループのアイデンティティである「会いに行ける」専用劇場を持たず、テレビでの冠番組をベースにしたこと。

 活動もAKB48と関わりは基本持たず、独自の方法で競う……というライバル像を志向。裏を返せば、48グループの成功手法が禁じられた。そのうえ、すでにAKB48は国民的アイドルとしてメディアを席巻。姉妹グループのような連携はなく、乃木坂46が出る枠は限られ、毎年話題を呼ぶ『選抜総選挙』にも参加していない。デビュー作は、初登場2位で売り上げは21.2万枚。一方、1年後に福岡からデビューしたHKT48は、初登場1位で29.2万枚。当初は姉妹グループより影の薄いライバルだったが、独自路線は徐々に支持を広げていく。結成3年の昨年はCDセールスも右肩上がりで、姉妹グループの上を行き、AKB48と一線を画すことで別の価値観が生まれていた。

◆競争主義のAKB48、平和主義の乃木坂46とスタイルは真逆

 48グループでは選抜総選挙を軸に、リアルな競争ドキュメントが“売り”と化している。そこにファンも参加できる仕組みが大きなムーブメントを呼んだが、大組閣など急展開も次々に課せられ、その激しい競争はときに悲痛にも映る。乃木坂46にはおっとりしたメンバーが多く握手会対応も良く、雰囲気はのどか。AKB48ほど波乱の展開もなく、穏やかな楽曲と相まって、清楚な美少女たちの平和な世界に見える。この平穏さに惹かれ、競争社会のAKB48から鞍替えしたファンも多い。それゆえ生駒と松井玲奈の交換留学が発表された際は、ネットで撤回を求める署名運動が起きた。乃木坂46の世界を48グループ的ハプニングで乱されたくない……との危惧から、結果的にはプラスをもたらす留学となったが。

 もちろん乃木坂46にも競争はある。選抜に落ちたメンバーがブログで悔しさを赤裸々に綴ったりもする。だが、彼女たちには「アンダーライブ」が用意された。非選抜メンバーのみのライブで、4月に行われた『サードシーズン』は8公演を行い、800人収容の会場が毎回満員。劇場公演の代わりとしても機能し、推しメンに会いに行ける点で「選抜よりアンダーになったほうがいい」というファンもいる。

 乃木坂46はアンダーにも他のグループならセンターにいそうな美形が並ぶ。アンダーライブでパフォーマンス力を磨き選抜との差を縮め、アンダーの中心だった伊藤万理華らが選抜に復帰して努力が報われるようにもなってきた。CDに全員の個人ミュージックビデオが付き、総選挙で3分の2以上が圏外となるAKB48ほどメンバー間の格差はない。過当な競争に走らない以上、公式ライバルとされつつAKB48との真っ向勝負からもある意味降りたのが、独自路線の帰結となった。人気の優劣は付くが、AKB48をプロ野球チームとするならSKE48など姉妹グループが同じリーグのライバル球団で、乃木坂46はJリーグのチームのようなもの。

 AKB48周りの大波に乗らない分、乃木坂46単独でAKB48と対等になるのは難しい。だが、意外とこのままでいいと思っているファンも多く、乃木坂46という美しい世界が守られるのが第一。ライバルとするなら、もしAKB48のブームが終っても乃木坂46は変わらずそこにあれば勝ち、ということなのだろう。

(文:斉藤貴志)



オリコントピックス