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実験的な試みを続けるゴールデンボンバーに見る、新たな「CDの価値」

 ゴールデンボンバーが、新作『死 ん だ 妻 に 似 て い る』(5月29日発売)を、“ボディースメルフレグランス(体臭付きカード)+CD”というユニークな形態でリリースする。CDに握手券や映像などの付加価値を付けて販売する手法も今やすっかり定番化したが、本作のポイントは「CDではなくフレグランス(=雑貨)として流通すること」、つまりCDの売上としてはカウントされない点にあると言えるだろう。

◆前作では特典なし・ジャケットも真っ白のCDを発売

 ゴールデンボンバーといえば、前作「ローラの傷だらけ」(2014年8月発売)で特典を一切付けないどころか、ジャケットも真っ白のシングルCDとして発表したことも大きな話題を呼んだ。この試みについて所属事務所・ユークリッドエージェンシーの木村敏彦会長は、「ボーカル・鬼龍院翔の『音楽だけにスポットを当てたい』という意向が大きい。問題提起するつもりはまったくなく、自分たちだけの問題です」と音楽ビジネス誌『ORIGINAL CONFIDENCE』の取材に答えているが、結果として音楽業界とユーザーの双方が「CDの価値」を改めて考える意義の大きい作品となったことは間違いない。

 ORICON STYLEでは昨年、「CDなどの“特典商法”は賛成ですか?反対ですか?」というアンケート調査を実施した。その結果、賛成が全体の42.2%、反対が57.8%と、「特典商法にNO」という意見がやや上回る結果となった。しかしリアルな声を拾ってみると、賛成/反対をきっぱりと断じきれないものが多かったのも事実だ。例えば【NO】の主なコメントとしては、「純粋に音楽で勝負してほしい」(岐阜県/30代/男性)、「特典がメインで楽曲がおまけのようで、音楽の価値が下がる気がする」(兵庫県/10代/女性)といった意見が多くあがり、「CD売上=音楽の価値の指標」という価値観が今なお根強いことが伺えた。

 しかし、【YES】のコメントにあがった「特典が付いていなければダウンロードでもいい」(京都府/30代/男性)、「特典がついているだけで『レンタルでいいや』と思っていた作品も買いたくなる」(東京都/10代/女性)といった意見があったように、音楽を聴く選択肢の広がりによって、CDを購入する動機は確実に変化している。「CDは音楽を聴くためのもの」ではあるが「音楽を聴くためには、CDでなくてもいい」。そんな今の時代が見えてくる。「正規・違法問わず、無料で楽曲を聞ける媒体が増えた。こうなれば、CDに付加価値のある特典をつけて差別化するのは自然な流れだと思う」(京都府/20代/男性)という意見の通り、この潮流をストップさせるのは難しくなっている。

◆CDの販売手法に複雑な思い……新たな価値は生まれるか?

 純粋に音楽を届けたいという思いは、どのアーティストにも等しくある。また音楽がリスナーに「届いた」利益は、アーティスト活動を継続していく上で欠かせないものだ。しかし今や、音楽は無料で手に入ってしまうようになった。「特典付きCD」は“アーティストの思い”と“ビジネス”の両面を共存させるために編み出された試行錯誤の結果だが、アンケート調査でも複雑な賛否両論が起こったのは、今はまだファンとアーティストの双方にとって幸せな「CDの価値」が定まっていないことの表れと言えるだろう。ゴールデンボンバーが次々と繰り出す実験的な試みは、「CDの新たな価値」を生み出す起点となるかもしれない。

 なお、ゴールデンボンバーの「ローラの傷だらけ」は初動売上が4.3万枚で、その前作「101回目の呪い」の初動売上15.8万枚から大幅に売上ダウンとなったが、前出の木村氏は「売上よりも音楽にスポットが当たったことが大きい」とポジティブに受け止めている。実際、アンケートでも「彼らの試みに共感する」(大阪府/40代/男性)と、純粋に音楽で勝負した彼らに賞賛の声が聞かれた。今回、ゴールデンボンバーの新作『死 ん だ 妻 に 似 て い る』はあくまで“雑貨”として流通されるため、ランキングには反映されない。この試みは誰を批判するでなくとも、結果的に今の音楽業界にアンチテーゼを投げかけることとなりそうだ。

(文/児玉澄子)

【調査概要】
調査時期:2014年8月12日(火)〜18日(月)
調査対象:合計1000名(自社アンケート・パネル【オリコン・モニターリサーチ】会員10代、20代、30代、40代の男女)
調査地域:全国
調査方法:インターネット調査



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