• ホーム
  • 音楽
  • 活動30周年の千住明が語る 主題歌に対する意識の変化とは

活動30周年の千住明が語る 主題歌に対する意識の変化とは

 野島伸司企画・脚本ドラマをはじめ、映画やCMなど、数多くのテーマソングを作り続けきた音楽家の千住明。その楽曲は映像音楽の枠を超え、“作品”として愛されているものばかりだが、作曲家活動30年目を迎え、その集大成となるアルバム『メインテーマ』を発売。千住が創り出した新たな映像音楽の歴史と、その極意について話を聞いた。

◆映像音楽は効果音だった時代に、インストがメインテーマという新たな流れを作った

――作曲家活動30周年を迎えられましたが、映像音楽の活動を始めた当時を振り返ってみてどうでしたか?
【千住】 映像音楽は効果音っていう認識がまだ強かった時代で、それだけ映像は音楽がメインじゃない世界だった。例えば洋画だと映画音楽というカテゴリーが確立されていて、有名な曲もたくさんあるけど、日本の場合は大ヒットした映画音楽は『ゴジラ』ぐらい。そういうなかでメインテーマをインストで書かせてもらうっていうのは僕がこじ開けてきた世界だろうし、ここから後輩や同輩、あるいは先輩たちも続いてその流れを作った。それだけの自負がある30年ではあります。

――でも、簡単にはこじ開けられなかった世界で、当初は批判も多かったと思います。
【千住】 当時の映像業界には徒弟制度があって、誰かのアシスタントから独り立ちというパターンが多かったので、下の人間が前に出るのは難しかった。でも僕の場合は、独りで出て行ったので、それがなかった。しがらみもないからこそ自由に自分の世界を作れたんだと思う。そういう意味ではラッキーだったんでしょうね。

――千住さんは野島伸司さん企画・脚本のヒットドラマを数多く手掛けていて。おふたりのタッグも“濃いドラマ音楽”の流れを作りました。
【千住】 野島さんのドラマの場合は、逆に僕は“引く”ことが多いんですよ。彼の映像表現のやり方はとても強いので、僕はそれをおさめる役というか。プロデューサーが野島は父で、僕が母だって言ったんですが、要はなだめる役にならないといけない。だから、例えば残酷ないじめのシーンがあったら音楽では哀れんだり、濃いシーンがあったらできるだけ削ぎ落としていく。ギター1本だけとか、非常に薄くしていくんです。特に『高校教師』(TBS系)のときは、ゴチャゴチャ音を鳴らさずにメロディ1本にしました。

――素材=メロディだけを活かすと。
【千住】 TBSでの野島さんのドラマは、そういう新たなやり方を覚えられる場であり、互いにペアとしてもいい表現ができる相手だったんだと思います。でも、これが同じ野島さんのドラマでも日本テレビやフジテレビになると、すごくゴージャスなものを求められたり。監督やプロデューサーにもよりますが、テレビ局によっての音楽のテイストも変わります。

◆近年、民放も主題歌に対する意識の変化がある

――これが『風林火山』などNHK大河ドラマだと、作り方はまた変わるんですか?
【千住】 大河をやったら映像音楽を辞めようと思ったぐらい、それまでやってきたものを全部出し切りました。大河ドラマは、キャストもスタッフもそれぞれの世界で極めた人たちが集まった一種の他流試合というか。すごく豪華なコラボレーションなわけで、そこに耐えうる音楽にしなくてはいけない。しかも本放送が1年間あって、さらに再放送やBSを含めると、200回ぐらい世の中に流れる。それに対抗できる音楽を作るとなると、(作家人生の中で)平均でも1回か2回ぐらいしかできない。それぐらい出し切っちゃうんですよ。

――そんな千住さんが目指す、理想の“映像音楽”とは?
【千住】 基本的に僕は音楽家なので、命を持っている音楽をどんなジャンルでも書きたいと思っています。僕は映像の後ろで何となく流れていても、何か主張してくるようなもの。例えばセリフの間にバシッと聴こえてくるものにしたり、逆に例えば女性が話している場面だったら、ヴァイオリンよりチェロだけにしてちょっと周波数を変えてみたり、セリフの後ろにいても、きちっと血の流れている音楽にしたい。

――確かに、映像音楽は作り手を意識させないもの、いわば邪魔にならない音楽も多いですが、千住さんの曲は作曲者がわからなくても「これは誰が作ったんだろう?」とふと耳が止まる。作り手の存在を感じさせる音楽だったりしますね。
【千住】 僕はずっとアーティストが歌っている主題歌に対抗していたんです。だから僕が書く曲は主題歌がなくなっていくというか、それが僕の音楽に変わっていきます。特に80年代はタイアップが盛んで、とにかく歌のある曲がメインで、劇中に流れる音楽も主題歌をインストにアレンジしたものを流すという時代だった。でも最近は欧米の映画のようになってきて、民放のプロデューサーも主題歌にこだわらず、むしろ強力なインストをメインテーマにする流れも出てきています。

――でも、それって、すごく実験的なことですよね?
【千住】 音楽業界だと音的にクオリティが高くないといけないから、コンンパクトに録音された音を使うなんて発想はないかもしれない。でも、音のクオリティが高くなると逆に音楽的な主張がなくなったりすることもあるので、ビビッときたものはどんなに簡単に録音したものでもそのまま使う。そこは映像音楽だからこそできることで、こういうことを僕はずっとこの世界でやってきました。でもこれができるのは何10年もやってきた職人仕事の経験で培った勘とテクニックがあるから。それを称して誰もできない、あるいは僕にしかできない音楽と言ってもらえるのかもしれないですね。

(文:若松正子)



関連写真

  • 作曲家活動30周年の千住明 (C)oricon ME inc.
  • 千住明 (C)oricon ME inc.
  • 千住明 (C)oricon ME inc.

オリコントピックス