再評価のオリラジ、後輩に見せる背中

 今年デビュー10周年を迎えたオリエンタルラジオ。最近のリズムネタ・ブームをきっかけに再び注目を集め、『しくじり先生』(テレビ朝日系)での名言など、いま彼らのキャラと芸人としてのウデが再評価されている。ブレイク中の後輩たちへは「僕らが前を走り続けることで、リズムネタ芸人でも長く活躍できることを示したい」という想いを秘めるオリラジが、常に不安と焦りと恐怖があったという10年を振り返る。

◆振り返ると調子にのっていたデビュー当時

――デビュー10周年おめでとうございます。いま振り返るとどんな10年でしたか?
【藤森】 ありがとうございます。いろいろありましたね。武勇伝でデビューしていきなり売れたと思ったら、厳しい時期があって。僕はチャラ男ってキャラが生まれて、あっちゃんは結婚があって……。そしていま後輩のネタをやるという(笑)。ほんとに芸人の人生はわからないです。
【中田】 資格試験とかと違って、一回売れたらずっと芸人でいられるかというとそうではないんですよね。常にみなさんに楽しんでいただけていないと続けることができないので。そういう意味では、10年続けられているのはうれしいですし、すごいことだと思います。いろいろありましたけど……。

――オリラジというと、武勇伝でいきなりブレイクしましたね。
【中田】 養成所のときに生まれたネタです。できたときにすごく反響があったので、このネタでいいところまでいくだろうなという手応えはありましたけど、お笑いブームもあって予想以上にはじけましたね。

――いまそのころの自分を振り返るとどうですか?
【中田】 調子にのっていましたね。いま見ると明らかに天狗になっているんですけど、あのころはわからないんですよ。最近になって若い後輩たちをみると、あのころのオレらだって思うこともあります。
【藤森】 ドキっとするよね。
【中田】 僕らのときも先輩方が優しく見守っていてくれたので、僕らもそうありたいと思っています。

◆悔しいけど吸収していかないといけない

――おふたりから後輩にアドバイス的なことも?
【藤森】 自分からというのはあまりないですね。そんな偉そうなことできないですよ。
【中田】 そうですね。番組の流れでコメントやアドバイスしたりという機会は多いんですけど。似ているムーブメントではあると思いますけど、僕らのころと今では人も時代も違うから、正直な話、アドバイスのしようもないんですよ。環境がまったく違っていて。ただ見ているしかない。見ているというか、のっかっていますけどね(笑)。むしろ僕は、勉強させてもらっている面があります。こんなふうにネタを作るんだ、こういうところって新しいなとか、そういうのは吸収しようと思っていて、後輩から勉強させてもらっています。

――その姿勢はいつから?
【中田】 最近ですね。最初は否定しようと思いがちなので(笑)。常にそういう謙虚な姿勢でいられればいいんですけど、傲慢なほうなのでなかなかそういう姿勢になれないんですよね。でも、優れた後輩をみるとすごいなと思いますし、悔しいんですけど吸収していかないといけない。否定すると自分が古くなっていってしまうので。
【藤森】 僕は学ぼうとかそういう感覚はあまりないんですけど、いまは8.6秒バズーカーにのっかっちゃおうかと。戦略的にはあっちゃんが考えていますけど、僕は単純にあのネタを見たときに、本能的にやりたいと思ったんですよ。田中シングル(8.6秒バズーカー)の声のトーンとかすごくよくて。
【中田】 藤森アンテナってときどき発動するんですけど、このときはものすごく反応したんです。

――ラッスンゴレライはキレが本家を上回っていると評判ですよね。
【中田】 パクってるからキレで上回るしかないんで。でも、8.6秒バズーカーにもちゃんと許可をとっていますから。やるよって、強引にですけど。

――8.6秒バズーカーもオリラジの影響を受けている面もあるのでは?
【中田】 彼らがテレビをつけたときに僕らがいたということだと思いますよね。
【藤森】 小学生くらいのときに観てたっていうのは言われましたね。

◆消えたといわれたモガキの時代からの転機

――いきなりドカンと売れてから、ブームが過ぎ去ったときというのは?
【中田】 そのときに自分たちができることを考えるしかないですよね。焦っていたかとかよく聞かれますけど、そのときに限らずいつも焦っていますから。落ちているものでもなんでも拾って武器にするしかないという。僕らは下積みがなかったので、そこにあるものを使ってなにかをすることばかりをやってきました。その部分はいまも変わっていないと思います。環境によってどうということではなく、常にですね。
【藤森】 武勇伝でブレイクしたときの興奮、盛り上がりがそのあと何年もないなっていうのは感覚的にありました。またあのドキドキがほしいという想いがずっとあって、なにか目立つことをしたい、しなくてはいけないと思っていて……。そういうモガキはありました。消えたといわれていたころでも、仕事は完全になくなったわけではないんですけど、そのなかでそういう感覚をもっていました。

――おふたりにとって転機になったことは?
【藤森】 何回かありますよね。
【中田】 僕は結婚が大きかったですね。大きく考え方が変わりました。それまでは自分のことばかり考えていましたけど、誰かによろこんでもらいたいという目線がようやく出てきました。いまはネタを嫁に相談するんですよ。意見を聞いて書き直したりして、漫画家と編集者みたい。昔はただ自分たちが表現したいことをやっていましたけど、誰かがよろこんでくれるものを作りたいという気持ちに変わりました。
【藤森】 僕はチャラ男のキャラが生まれたことですかね。『しゃべくり007』(日本テレビ系)の収録のときに「オレ、今日変わった」という感覚があって、そのオンエアの日から如実に生活が変わりました。その日だけで13本仕事のオファーがきて、チャラ男ブームですよ。それから1年くらいすごく忙しかったですね。またそういうのが定期的にないと、すぐに忘れられてしまうので……。その貯金はもうないですし(笑)。
【中田】 なくはないですよ。いろいろな経験の積み重ねが身についていますから。

◆いま再評価と言われることについて…再ブレイクとの違い

――いま再評価といわれていますが。
【中田】 再評価という言われ方はすごく好きなんです。再ブレイクとか再ブームって、またブームなんだって思ってしまうんですけど、それとはニュアンスが違って、今度は評価してくれているんだという感じがして。前向きな受け止め方かもしれませんけど、うれしく思っています。ただ、実力がもともとあったかと聞かれれば、なかったと思うんですよ。いろいろなことがあって、いまこうなっているということかと。
【藤森】 なんにしても注目してもらえるのはうれしいんですよ。それがいちばん。

――ライブでは「武勇伝2015」をやっていますね。
【中田】 7年目に『エンタの神様』(日本テレビ系)で、ブームと凋落をネタにした武勇伝をやりましたけど、何年かにいちどそのときのバージョンでやっています。でも、しっかり新しいのを作ろうとしたのは昨年からです。ダンスや音を入れたり、いろいろ工夫してアレンジして、いままた遊んでいるというか。まだ武勇伝でやりたいことがあって、リミックスが楽しいんです。でも、極論を言うと、武勇伝しかできない(笑)。それを受け入れたのが大きいんです。いままだ試行錯誤の段階ですが、武勇伝の変形を考えています。“10周年バージョンはこれだ!”という「武勇伝2015 -10th anniversary edition-」を今年冬くらいにリリースしますよ。

――10周年の今年、オリラジとしてほかにやりたいことは?
【中田】 いま後輩のおかげでリズムネタが盛り上がっています。でも、僕らだけじゃなくて、もっと再評価されてほしい芸人たちがあの時代にいたので、そういう芸人たちと一緒にお祭りをできたらと思っています。小島よしおさん、藤崎マーケットさん、2700、はんにゃとか、みんなでリミックス祭りをやりたいです。

――リズムネタでブレイク中の後輩芸人へアドバイスを送るとしたら?
【藤森】 はまやねん(8.6秒バズーカー)が、なぜか僕にいろいろ相談に来るんですよ。同じ臭いを感じるみたいで。あいつのいい部分は悲観的じゃないところ。一気にドカンと売れたら、ふつう不安になるんですよ。でもあいつは「おいしいもん食べれますし」とかいってて、ぜんぜんマイナスの思考がない。そういう感覚はずっと持ち続けてほしいですね。ふたりして悩むとどんどん落ちていってしまうんで、ああいうキャラがいると田中シングルが落ち着いて考えられるんじゃないですかね。はまやねんの精神的癒やし効果って大きいんじゃないかと思います。
【中田】 おれにもそういう存在がいればなあ……。
【藤森】 いたんじゃないの!? オリラジのはまやねん的な存在って話してたよね? 中田シングルとふじやねんですから。

【中田】 リズムネタって演芸のなかでいちばん下に見られていて、素人っぽいってバカにされるんですよ。でも、僕はそれでいいと思っています。みんなにバカにされながらも、みんなが宴会でやりたくなるような芸人がいるっていいことだと思うんです。いまブレイクしている芸人たちみんな、一発屋とか呼ばれて消える恐怖と戦っていると思うんですけど、リズムネタをやっていても大丈夫だよって伝えたいです。

――リズムネタ好きな若い子たちはたくさんいますよね。
【中田】 そうなんです。若い子たちに楽しんでいただいているんですけど、その層のファンたちって(年をとって)入れ替わるからどんどん消費されるんです。これはもう宿命です。僕らは再評価っていわれていますけど、いまの若い子たちには懐メロなんですよね。僕らのことを知らないんですけど、80年代音楽をいま聴いて新しいって思うような感覚でおもしろいって思っていただけて。やっぱりいまのブームを作れるのはいまの若い芸人たちだからがんばっていってほしいですし、「リズムネタをやっていたって長く活躍できるよ」って示せるように僕らもがんばりたいです。僕らがいなくなったらそういうことも言えないですから、彼らの前を走り続けてそれを体現していきます。



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