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俳優からナレーションまで“名脇役”遠藤憲一が重宝されるワケ

 俳優の遠藤憲一が、今秋放送の『必殺仕事人 2015』(テレビ朝日系)に新仕事人として30年ぶりの“必殺シリーズ”への出演が決定した。その“コワモテ”な風貌から“悪役”が多いが、ヤクザから医者まで、様々な役を演じ、数多くの作品に出演。その一方で、ドキュメンタリー番組やCMのナレーションでも活躍する彼は、なぜこんなにも多岐にわたり重宝されるのか? 脇役でも主役級の演技力で観る者を魅了する遠藤憲一という稀有な役者について改めて考えてみた。

◆ギラギラしたむき出しの“リアリティ”が“悪役”にピシャリとハマった

 遠藤は、切れ長のキリリとした鋭い目つきが特徴的な個性派役者。名前はパッと浮かばないけれど、「あの作品のあの役で出ていた人」と言われて「ああ、あの人!」と気付く人も多いようだ。裏を返せば、それだけ強烈に役の印象を残しているとも言える。

 その“コワモテ”な風貌から“悪役”を演じることが多く、特にヤクザ役はドンピシャリとハマる。事実、広く一般に認知される前から“実録ヤクザもの”のVシネマに多く出演してきた。ジャパニーズバイオレンスの巨匠・三池崇史監督に重用されるのも、Vシネ役者特有のギラギラしたむき出しのリアリティを放っているからだろう。悪役が多いだけに、メインを張ることは少ない。初めて連ドラの主役に抜擢されたのは47歳、2009年4月〜6月に放送されたドラマ『湯けむりスナイパー』(テレビ東京系)だった。

 現在53歳の遠藤が役者の世界に入ったのは、「高校1年の2学期で学校を中退し、1年くらいバイトを転々としながらブラブラした後」のこと。本格的に演技を始めたのは18歳からだが、「役者だけで食べられるようになったのが29歳。それまでは四畳半風呂なし、共同便所のアパートに住んでいました」。そんな遅咲きの遠藤だが、いわゆる“ブレイクの転機”はいつだったのだろうか。近年は「御意!」の名ゼリフを残したドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』シリーズ(テレビ朝日系)の海老名教授(上司に媚び諂う姑息キャラがクセになると評判に)、事件報道に葛藤する新聞社の社会部部長を演じた映画『クライマーズ・ハイ』など、脇役ながら圧巻の存在感で観る者をうならせた作品は多い。しかし過去の出演作を遡っても、不思議と「この作品でブレイク!」と断定できるものが見当たらないのだ(もちろん、本人にとっての転機はあるかもしれないが)。

◆特定作品でのブレイクではなく、積み重ねの成果で唯一無二なポジションを築いた

 ちなみに遠藤は、オファーのあった仕事は「スケジュールが許す限り断らない」のだという。それだけに活動初期に多かった、一瞬しか画面に映らない“斬られ役”も含めると、その出演作は実に膨大だ。加えてギラリと鋭い眼光に眉間の縦ジワ、ヤクザの“制服”ともいうべきダークスーツの似合う長身。膨大な出演作とともに、そんな一度見たら忘れられない風貌も相まって、いつの間にか存在が視聴者の目に刷り込まれていた。特定の作品でブレイクしたのではなく、コツコツとした積み重ねの成果こそが、現在の遠藤憲一の唯一無二なポジションを築いたと言えるだろう。

 チョイ役も厭わない現場経験の豊富さで培った演技力とともに、“渋い声”にも定評が高い。数々のドキュメンタリー番組やCMのナレーション、アニメまで、これまで努めた声の仕事は700本以上とも言われる。最近は、大ヒットゲーム『キャンディークラッシュソーダ』CMのキャンディーの妖精や、『ピザーラ』CMのピザブラック社長など、コミカルなキャラクターを演じたCMも話題を集めている。ちなみに衣装はどちらもダークスーツ。キャンディーの妖精に至っては、頭に揺れる触覚を、背中には蝶々のような羽根という、“コワモテ”と“キュート”の合わせ技で笑わせてくれる。いかつい芝居でならしてきた遠藤だが、顔の認知も広まったことで今後はそんな風貌とのギャップを生かした役も増えるに違いない。

 硬軟織り交ぜた芝居ができる役者は多い。しかし遠藤の強みは、“硬”の面をがっちりとベースに持った上で、そこに柔和さやおかしみ、悲哀といったプラスアルファの要素を盛り込んだ芝居が巧みなところにある。それもまた、役者としての力を養う時代に多くの悪役を演じてきた賜物と言えるだろう。様々な役を演じ分けつつも、そのバックにブレない“硬”を備えた遠藤が貴重な存在として引く手あまたであるのも不思議ではない。

(文:児玉澄子)



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