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なぜ「卒業ソング」の新たな定番は誕生しないのか?

 3月に入り、卒業シーズン真っ盛り。この時期になると毎年話題にのぼるのが、“卒業”“桜”などをテーマにした「卒業ソング」だ。ORICON STYLEなどが実施している「卒業ソングランキング」では、荒井由実「卒業写真」、海援隊「贈る言葉」、レミオロメン「3月9日」など、幅広い世代に親しまれる名曲の数々がズラリと並ぶ。一方で、上位にランクインするのは毎年同じ楽曲ばかりで、近年、新たな定番と呼べるまでのヒットが誕生していないことがわかる。卒業ソングの新たな定番はなぜ生まれなくなったのだろうか?

■音楽ヒット自体が細分化

 ORICON STYLEが昨年、10代・20代を対象にアンケート調査を実施した「卒業ソングランキング」では、TOP10内中、9曲が前年もランクインした作品となった。そのうち8曲は、何と5年前の2009年にもランクイン(レミオロメン「3月9日」は2011年に5年連続首位を達成し殿堂入り)。2010年代に発表された楽曲はひとつもなく、多少の変動はあるにせよ、もう何年も顔ぶれが変わっていないことになる。ちなみにこの結果は30代・40代を合わせてみてもほぼ同じだった。

 新たな定番が生まれない要因として、卒業ソングに限らず、時代のスタンダードと呼べるまでの音楽ヒット自体が誕生していないことが挙げられる。以前、とある年末の大型音楽番組のプロデューサーにインタビューした際、「今の時代、全ての世代から(ひとつの音楽が)支持されるのは難しい」という話をしていたが、昨今、リスナーの音楽嗜好が多様化したことで、ある特定の層には刺さっても、世代を越えて訴求できるヒット曲やスターは生まれにくい状況となっている。毎年、良質な卒業ソングは誕生しているものの、限られた層にしか届かないため、幅広い世代に愛され、“後世まで歌い継いでいきたい”というパワーを持つ定番になるまでには至らないのだ。

■スタンダードが生まれなくなった卒業式事情

 また、卒業式で歌われる曲が「仰げば尊し」「巣立ちの歌」などから、最新の合唱曲やその年に流行したポップスなどに変化していることも理由のひとつだろう。「卒業ソング」ではなく、「卒業式で歌った曲は?」と問えば、20代以下はおそらくKiroroの「Best Friend」、コブクロ「桜」、アンジェラ・アキ「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」、FUNKY MONKEY BABYS「ありがとう」など、1学年違っただけでも全くバラバラの回答が返ってくるだろう。それぞれの思い出として刻まれている楽曲が違うため、“思い出の曲”にはなっても、“定番”にはなりにくいのが現状だ。

 もちろん、定番が過去の名曲ばかりになるのは悪いことではない。しかし、最新曲から新たな定番が生まれていないことには、寂しさを感じずにはいられない。とはいえ、「仰げば尊し」「巣立ちの歌」の牙城を崩し多くの卒業式で歌われるようになり、「卒業ソングランキング」でも毎年上位にランクインしている合唱曲「旅立ちの日に」のように、楽曲の良さやパワーが多くの人の耳に届けば、今後、新たな定番が誕生する可能性は十分にある。5年後、10年後、時代を超越して愛される新たな「卒業式ソング」の定番が生まれていることに期待したい。



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