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結成30周年のSING LIKE TALKING、解散しない秘訣とは

 結成30周年を迎えたロックバンドのSING LIKE TALKINGが、初のオールタイムベスト『Anthology』を2月11日に発売。独自の音楽性を貫き、変わらぬスタンスで活動してきたSING LIKE TALKINGが、活動休止期間もあったが、30年間解散すること無く続けてこれた秘訣について語る。

結成30周年を迎えたSING LIKE TALKING(藤田千章、佐藤竹善、西村智彦)

結成30周年を迎えたSING LIKE TALKING(藤田千章、佐藤竹善、西村智彦)

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◆「あっという間」と言うには長い30年

――今年でバンド結成30周年ですが。
【佐藤竹善】 言われて気づきました(笑)。日数的に“30年”という感慨ぐらいしかないです。あっという間と言うには長いですが、そんなにいろんなことを覚えてるわけでもないので。

――デビュー当時のことは覚えてます?
【佐藤】 覚えてますよ。デビューしてから3年ぐらいは売れなくて。レコーディングしてはちょっとだけコンサートをやらせてもらい、あとはプロデューサーの奢りで飲んでるみたいな(笑)。お金もなかったなあ。

――焦りはありました?
【佐藤】 作品的には好きなように作っていたので焦りはなかったけど、セールス的になぜダメなんだろう? とは思ってました。でもムリに方向変換したり、割り切ったりせずとも、4枚目のアルバム『0[l∧v](ラブ)』から少しずつ結果が出てきたので幸せだったと思います。多分、ここでダメだったらレコード会社から契約を切られてたんじゃないかな。

――今もそうですがデビュ―当時もSING LIKE TALKINGの音楽は、いわゆるJ-POPシーンとは一線を画す世界観を持っていましたよね。
佐藤 自分たちが聴いてきたのは、ほとんど洋楽でしたからね。もちろんオフコースや松任谷由実さん、山下達郎さんほか、当時魅かれた方たちは聴いていましたが、それ以外は洋楽だった。自分たちがいいと思う洋楽的な要素をSING LIKE TALKINGで実現したい、追いつきたいってことで頭がいっぱいでした。

――でも当時から、音楽業界の人やアーティストなど、“音楽通”の間では評価がすごく高かったですよね。
【佐藤】 評判と結果(セールス)が釣り合わないっていう(笑)。それはよく言われました。でもそれは多分、売れなかった3枚の間に、僕らのスタンスを認識してくれ、少しずつ定着していけたからだと思います。

――時代に迎合せず、マイペースに自分たちの音楽を追求するバンドだと。
【佐藤】 その点は、プロデューサーとかもやりたいようにやらせてくれたので、僕らは非常に周りのスタッフに恵まれていたんじゃないかな。

◆人間関係だから良いときも悪いときもある、その結果が活動休止

――初ライブも、サポートメンバーの豪華な顔ぶれは今や伝説ですよね。TOTOのジェフ・ポーカロ(Dr)を始め、ネイザン・イースト(B)など、新人なのに世界の一流どころが揃った夢の競演で。
【佐藤】 ホント、すごかった。僕らにとっては一生の宝ですよ。デビューライブの渋谷クラブクアトロは2日間、満員でしたが、ほとんどがTOTOファンで、僕らは完全にアウェイ状態(笑)。自分たちのライブで超満員なのに自分たちのファンは5人もいないっていう、そんな状況って普通ないでしょ?。
【藤田千章】 お客さんから掛かる声がね、「ジェフ〜」だから。僕らの名前なんか呼ばれない(笑)。

――そして、2003年から2011年まで、バンドとしてはまったく活動してない時期がありましたが。この間、何があったんですか?
【佐藤】 やっぱりバンドは人間関係ですから、そりゃ、良いときもあれば悪いときもありますよ。活動停止したときもそれぞれの想いがあって、とりあえずちょっと(3人で)作りたくないって話になり、気づいたら何年もたっていたっていう感じで。作りたいと思ったときしか作れないし、そのときはいろんなことをトータルで考えて、いま作っても良いものができそうにないなと思ったんですよね。
【藤田】 当時はいろんなことがズレてたんですよ。ものごとひとつ取っても、人によって見え方も感じ方もずいぶん違ってくるじゃないですか。そういう部分でそれぞれの立場なり、見方がものすごくズレてた。その中で作っても難しいってことで、結果、活動休止になったんです。
【佐藤】 僕ら、疑似家族みたいなもんですからね。ここまで長くいると。夫婦や親子でもつねに仲良く幸せではないわけで、それとまったく同じですよ。

◆解散という選択肢はなかった…スタイルにこだわらないから30年間続けて来れた

――活動再開のきっかけはラジオ局・FM802主催のイベントで、そこで6年ぶりに3人が集まったそうですね。
【佐藤】 そもそも僕らは、802のおかげで最終的なブレイクをさせてもらった部分もあるんですよ。それで、活動休止しているときに、802のプロデューサーがイベントにはどうしても出て欲しいって言ってくれて。で、やろう!って決まって久々に3人が集まったら802をはじめ、一緒に出演した小田和正さんや松たか子さんなどのアーティストも本当に喜んでくれて、僕らも実際、楽しかったんです、すごく。それまでの6年とかどうでもよくなって、次の日には「レコーディグどうしようか?」って話をしていましたね。

――6年の間に解散という選択肢は頭になかったんですか?
【佐藤】 ないですねぇ。誰かがやめれば解散だと思ってたけど。
【藤田】 僕はどっちでもよかった(笑)。というか「解散します」って宣言しちゃうと、そこから解散コンサートなりツアーなりあるわけじゃないですか。そういうのもあまり考えられなかったし。それに、やっぱり1%ぐらい、「またやれる日がくるかもしれない」的な可能性はありまして。
【佐藤】 それがあったから再始動したんです。じゃなきゃ、誰かが辞めてますって。
【西村智彦】 でも事務所からは何度も「このままどうするんですか? いっそ解散したほうがいいんじゃないですか?」って言われたよね。
【佐藤】 「いっそのこと」の意味がわからない。何で「いっそのこと」解散しなきゃいけないんだっていう(笑)。

――活動休止期間も乗り越え、30年間、バンドを続けてこれた秘訣は何だと思いますか?
【佐藤】 スタイルにこだわらないところじゃないでしょうか。それこそ、解散するなら解散コンサートやるとか、何年かぶりには記念のCDを出さないといけないとか、そういう概念を持たないっていうか。自分たちがやりたくなければ休むし、やりたくなればやるし……っていうことだけでいいのかなと。

(文:若松正子)

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