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エンタメには“中二病”的要素が必要不可欠? プラス視点から考察

 中学2年生頃に見られる、思春期特有のちょっと背伸びした思想や行動を指す言葉として生まれた「中二病」。2000年代半ば頃からネットを介して急速に広がり、今や幅広い世代が知る俗語として定着しているが、言葉が少しずつ広がっていくなかで本来の意味は薄れ、最近では「中二病=悪いこと」という風潮になっている。しかし、エンタメシーンのヒット作に目を向けると、「中二病」的要素が取り入れられたコンテンツは非常に多い。中二病は本当に悪なのか? エンタメ分野における「中二病」の役割について考える。

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■「中二病」の定義とは?

 まずは現在の「中二病」という言葉の定義についておさらいしておきたい。中二病とは、思春期の真っ只中の中学2年生の頃に見られる、ちょっと背伸びした思想や言動を病に例えたもので、対象は必ずしも中学生とは限らない(むしろ最近では“症状”が慢性化してしまった大人を嘲笑する場合に使用されることが多い)。もちろん、医学的な意味での病気や精神疾患ではない。

 いくつかパターンを挙げてみると、「誰も知らない○○にハマっている私、イケてる」など人と違う趣味を持つ自分をカッコいいと思いこんだり、「社会のルールになんて縛られない」と悪い自分を演じてみたり、「俺は闇の世界の人間で、陰謀を企む悪の組織と闘っている」など自分の置かれている立場を妄想で設定して振る舞ったりと、様々。周囲を上から見て、優越感に浸ることで、自己の存在価値を見出す。「中二病」という言葉は後付けであり、その“症状”自体は昔からあるものだ。

 そもそも「中二病」という言葉は、伊集院光のラジオ番組『伊集院光のUP’S 深夜の馬鹿力』(現『JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力』)で使われたのが始まりと言われている。1999年1月、伊集院が「自分は中二病です」と発言し、「かかったかな?と思ったら中二病」というコーナーをスタート。中学2年生の頃にありがちな恥ずかしい“症状”を伊集院が診断するというもので、当初は周囲から揶揄されるものというよりは、自らを戒める自虐的な意味が大きかった。それが2000年代半ば頃からネットで使われ、拡散されていくうちに、だんだんと意味が変化。今のような“中二病は恥ずかしいもの”という認識に変わっていった。

■中二病=少年のようなピュアな心の持ち主?

 しかし「中二病」は、言い換えれば“少年のようにピュアな心”を持っているということ。こう考えると、冒頭でも触れたとおり、エンタメシーンには昔から「中二病」的要素でヒットしているものが多い。例えば、ヒット作を量産している脚本家・宮藤官九郎の作品には、自身の少年時代、青春時代の体験が反映されている。脚本を務めた昨年10月期の学園ドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)は、宮藤自身が体験できなかった共学への憧れや妄想を作品につめこみ、視聴率こそ振るわなかったものの、TV誌やネットでは高評価。社会現象にまでなったNHK連続テレビ小説『あまちゃん』には、青春時代に体験した宮藤自身の女性アイドル観が詰め込まれている。

 また、「中二病」を語るときに必ず名前が挙がるSEKAI NO OWARIは、現実のなかで起こる様々な事象を、“ファンタジー”というフィルターに通すことで独特の世界観を提示。徹底的に創り上げられた世界観は“遊園地”のようでもある。このほか、みうらじゅん、大槻ケンヂをはじめとする、サブカル界の重鎮たちは、大人になった今も“青春を謳歌”。その豊かな発想力から、みうらは「マイブーム」「ゆるキャラ」等のブームを生み出し、大槻は多くの作家やアーティストらに影響を与えている。

 『進撃の巨人』OPテーマで『NHK紅白歌合戦』に出場したLinked HorizonのRevoが「中二病は褒め言葉」と言ったことは有名だが、こうして見ていくと、「中二病」的要素はクリエイターの創作の原動力になっていることが窺える。多くの情報が溢れている今だからこそ、「中二病」ならではの想像力は、他との差別化を図る上での武器となる。エンタメには「中二病」が必要不可欠なのだ。

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