渋谷で飲食店展開も積極的に行う、音楽レーベルLD＆K（かりゆし58らが所属）のほか、AKB48カフェ、ガンダムカフェなどの“コンセプト・カフェ”をオープンするケースが目立っている。こうした流れのなか、昨年末から年明けにかけて、CS局アニマックスや、スペースシャワーネットワーク、タワーレコードなどもカフェを相次いでオープンさせた。「エンタテインメント×カフェ」で生む、新規層獲得の可能性を探る。

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■外国人旅行者向けのイベント展開も視野

　既存事業の拡張を狙った「スペース／場」の創出という点で、注目される動きとして近年、目立つのが、エンタテインメント業界での飲食業への進出である。特にカフェをオープンするケースが増加している。

　アニメ専門チャンネル『アニマックス』がプロデュースするコンセプト・カフェ『アニマックスCAFE』が12月11日に、秋葉原にオープン。声優が多数所属するプロダクション、81プロデュースも運営協力に加わり、同社所属声優が“キャスト＝店員”として、フロアに立ち、人気投票も実施。さらに声優陣によるイベントも行っている。

　また、タワーレコードでは、12年に渋谷店内にオープンした「TOWER RECORDS CAFE」の表参道店を、1月19日にオープンさせた。さらに、以前より飲食店やライブハウスなどを積極的に展開していたスペースシャワーネットワークでも本年3月に、東京・渋谷にカフェスペースを開店予定だ。同社では1月19日に、外国人向けポップカルチャーサイト「Tokyo Girls’ Update」を運営するオールブルーや、デジタルコンテンツの企画及び制作を行うAOI Pro. との資本業務提携を発表しており、この座組みによるカフェスペースを活用したイベントも検討。近年増加する外国人旅行者向けのインバウンド施策を視野に入れている。

　このほかにも、北海道に拠点を置くクリプトンフューチャーメディアが昨
年10月に、クリエイティブ活動を発信し、デザイン・食・音楽・IT などのク
リエイターたちが交流できる場作りを目指したプロジェクトをスタートさせ、北海道・札幌市にカフェスペース「MIRAI.ST cafe」をオープンしている。

■コアファンが集える場づくりと、新規ファン獲得のアプローチ

　これらの動きには、2つの共通点がある。（1）同じ志向性を持った人（コンテンツのコアファン／クリエイター）などが気軽に集い語り合うことで、新たな熱を生む、（2）地域に根付き、音楽文化（エンタテインメント）を広
める発信地を目指す、といった点だ。

　前者はコアターゲットに向けられたものであり、たとえばTVやWEBメディアと、リアルの場を融合させることで、サービスの拡張も図る。後者は、既存のカフェサービスに音楽などのコンテンツをスパイスとして加えることで、新規層へのアプローチを狙っている。

「TOWER RECORDS CAFE」の運営を担当するタワーレコード 営業戦略室 室長の大江信宏氏は「当社の企業理念は“The Best Place to Find Music ＝音楽と出合う最良の場所”。これまでCDショップとして“場”を提供してきましたが、市場の変化に対応していくためには、新しい場所が必要と考えました」と語る。

同店では、バー＆カジュアル・ダイニング「TOWER DINING 恵比寿店」を昨年オープンさせており、すでに飲食店展開での実績もある。

「ダイニングではCDを扱わず、“タワレコ”というブランドを活かして、食事とともに音楽を楽しんでもらうことを目指しました。今回のカフェも基本は同じです。近隣のアパレルショップなどに勤める方に気軽にランチにいらしていただき、そこでタワレコが厳選した音楽を楽しんでいただくことが目的です」

　ただし、表参道店では什器2つのみではあるがCDやグッズの販売も行う。またDJブースも設け、イベントの実施も計画している。

「新しい音楽に出合える場を提供するとともに、各種ジャンルの音楽ファ
ンの方々にも喜んでもらえるようなイベントも企画したいですね」

　なお、カフェを選択したのは“気軽に来店できる場所”ということを検討した結果という。タワーレコードではCD販売へのこだわりも捨て、様々な人が集える、新たなエンタメ“サロン”を作ることに徹しているとも言える。それがコアファンからも、新規層からも新鮮さを持って受け入れられている。ここに“場作り”の大きなヒントがありそうだ。

（ORIGINAL CONFIDENCE　15年2月9日号掲載）