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モー娘。、“さゆロス”からの脱却が急務〜真価の問われる2015年

 アイドルグループのモーニング娘。が、昨年デビュー17年目で初の5作連続1位を獲得した。低迷期を乗り越え、グループの歴史を塗り替える記録を達成したワケだが、ここに来て史上最大の危機が訪れている。原因は誰もが知るように、グループをけん引してきたリーダーの道重さゆみが、昨年11月にモー娘。を卒業したことにある。“歴代最強のリーダー”との呼び声も高い道重が卒業したモー娘。の2015年は、まさのその真価が問われる重要な年となる。

◆グループの“顔”であるエースと“絶対的”なリーダーを同時に失ったモー娘。

 音楽やスポーツに限らず、団体行動におけるリーダーの存在は、その組織の行く末を大きく左右する。たとえばAKB48。総監督・高橋みなみはその並々ならぬキャプテンシーで、9年の間グループを引っ張ってきた(※最終的には今年の年末までの10年にわたりAKB48の精神的支柱であり続けることとなる)。グループの苦悩の時期も決断の時期もメンバーを鼓舞し続け、次の大きなステージへと導いていった。だからこそ、彼女が卒業することは「AKB48にとって痛手である」として大きなニュースとなった。チームAやチームKなどにそれぞれ存在するキャプテンも同様。同じグループのキャプテンの行動や言葉などによって飛躍を遂げたメンバーも少なくない。これは道重にしても同じだ。グループ加入当時、歌にもダンスにも突出した面がなく、埋もれた存在だった彼女は、飯田圭織や吉澤ひとみらリーダーたちの背中から学び、その背中を追いかけることで成長した。そこにもともと彼女に備わっていた人一倍の努力とプロ意識が結合し、低迷期にあったモー娘。を見事に蘇らせた。その功績に対して“歴代最強のリーダー”との呼び声も高い。

 その道重がグループを去った。これまでモーニング娘。の動向をさほど気にかけていなかった人でも道重さゆみという女の子の存在は認識していただろう。裏を返せば、ファンを除けば道重以外のメンバーは、ほとんど知られていなかったに等しい。モー娘。には、これまでそれぞれの時代を代表する“顔”が存在した。安倍なつみ、後藤真希、矢口真里、辻希美、加護亜依、石川梨華、藤本美貴……。悲しいかな、道重時代のモー娘。は彼女が“顔”も兼ねていた。すなわち、2014年末にモーニング娘。は、“絶対的なリーダー”と“グループの顔であるエース”を一挙に失ってしまったのだ。繰り返し引き合いに出して申し訳ないが、AKB48もたかみなという大きな支柱を失う。1年間の猶予が設けられたのも、彼女の卒業による影響を極力小さなものにしようという配慮からかもしれない。大島優子という“顔”が抜けて1年を経たないうちに高橋みなみがいなくなってしまうのは、様々な個性を揃えているAKB48においてでさえ、計り知れない地盤沈下を見せてしまうから……という危惧がたかみなの卒業を“先延ばし”にしたとも言えそうだ。それを考えると、改めて道重さゆみの卒業がグループに与えるものは限りなく強大だと思えてしまう。

 加えて、モーニング娘。の師でもあるつんく♂は、現在療養中の身にある。現リーダーの譜久村聖をはじめとする13人のメンバー、つまりモーニング娘。’15は、地図も羅針盤も無線もすべて使えないまま、群雄割拠する“アイドルグループ時代”という大海原に放り出されてしまったようなものだ。

◆「モーニング娘。」という看板を武器に、“守り”ではなく“攻め”の姿勢が必要

 もちろん、そんなピンチを支えるファンも大勢存在する。モー娘。が大きなターニングポイントに立たされているからこそ、ファンの力を結集させてバックアップしようとするだろう。スタッフもまた、新たな体制となったこの“国民的アイドルグループ”にふさわしいアプローチを探っていることだろう。加えて、彼女たちには、道重時代に培った“フォーメーションダンス”という武器がある。後輩グループの台頭から差別化を図るべく体得した、彼女たちにしかできない鉄壁のダンスパフォーマンスがある。道重はこの貴重な武器を置き土産にグループの未来を後輩たちに託した。“フォーメーションダンス”を確立したからこそ、笑顔でグループを卒業した。惜しむらくは、その完成されたダンスを『紅白』という老若男女が視聴する番組で人々にアピールすることができなかったことだろう。

 2015年、モーニング娘。’15はその名の通り、新たな年の始まりとともに、まっさらな気持ちでスタートを切ることになった。それは、道重はもちろん歴代のメンバーも見たことのない、自分たちだけの「モーニング娘。」を確立できるチャンスとも言える。幸いなことに、彼女たちの「フォーメーションダンス」を知らない一般の人たちでも「モーニング娘。」という名前は知っている。新たなチャレンジに際しても、「モーニング娘。」という点で注目をしてもらえる。通常のアイドルならば、「名前だけでも覚えてください」となるところが、彼女たちにはそれが免除されている。1997年の活動開始以降、様々な先輩たちが積み重ねてきた功績によって生み出される恩恵だ。このメリットを最大限に活用しない手はない。つまりは、「モーニング娘。」という看板を“守る”のではなく、「モーニング娘。」という看板を使って“攻める”姿勢が必要だということだ。

 20世紀と21世紀、2つの世紀をまたいで活躍しているアイドルグループは、もはや彼女たちだけだ。多くのアイドルグループのメンバーがモー娘。を見て育ち、彼女たちに憧れてアイドルを目指したという事実は消えない。だからこそ、ここで守りに入ることは許されない。最大の危機は最大の好機ともいわれる。真価が問われる重要な1年だが、“さゆロス”を過去の出来事にできるほどの変革が生まれたとき、モーニング娘。’15は、空前絶後の存在へと変わっていくだろう。

(文:田井裕規)



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