14年12月24日にメジャーデビューしたバンド・ミオヤマザキが、プロモーション用に制作したゲームアプリ『マヂヤミ彼女』が200万DLを超えるヒットを記録。現在、スマートフォン向けアプリは重要なプロモーションの場でもある。同アプリの成功の背景を探る。
インディーズバンド・ミオヤマザキのプロモーション用に開発されたスマートフォン向けの無料アプリゲーム『マヂヤミ彼女』がApp Storeのみで200万DLを記録するヒットとなり、話題に上っている。
仕掛人はバンドの所属事務所社長の岩崎貞文氏と、実際にアプリを開発・制作したbeArkの岩崎フミヤ氏。
ミオヤマザキの魅力は、人間関係の中で抱く負の感情を、生々しく、リアルに描き出した歌詞。そして、それをアグレッシブなパフォーマンスとともに表現するmioのボーカルだ。ライブハウスを中心に着実にファンを増やし、Twitter公式アカウントも、若い女性たちを中心に1000程度のフォロワーが存在していた。
「ボーカルのmioの個性が強く、当初は、メッセージを送れたり相談できたりする、コミュニケーションアプリも考えたのですが、ファンがいると言っても1000人では、スマホアプリの世界ではまったく勝負できません。例えばApp Store総合でランキング上位に入るには最低でも10万DL以上は必要となります。音楽については、門外漢ですし、300人キャパのライブハウスでワンマンができるレベルと言われても、その数字の評価が、正直ピンとこないんですよね」(岩崎フミヤ氏)
岩崎貞文氏は「アーティストと一緒に築いた1000人のファンも、10万DLに対しては、1%でしかない、と。これがIT系の人の考え方なんです」と笑う。しかし、今回のプロジェクトに関しては、アプリ開発の専門家の意見に全面的に従ったという。
■アーティストの世界観のみを表現し、ゲームとしての面白さを追求
ゲームは、彼氏の浮気を疑う女性“リナ”が主人公で、集中してやればおおよそ半日くらいでクリアできるレベル設定。ゲームをクリアすると最後にミオヤマザキの楽曲が流れる。その間、ゲーム内容に直接、バンドや楽曲が絡むことはない。
「音楽というのは、耳にしたときの心理状態や気分、タイミングによって心に残るかどうか、印象が変わるものだと考えました。さらに言えば、“音楽を聴く状態”を作る必要もある。映画やドラマの主題歌などは1時間〜2時間をかけて、その音楽を聴く気持ちを作っているとも言えます。YouTubeなどで簡易に音楽が聴ける時代だからこそ、曲をしっかり聴いてもらうためには、ある程度の時間をかけて、“聴く状態”を作ったほうがいいと判断し、今作の構造にしたんです」(岩崎フミヤ氏)
また、「ゲームの面白さを追求し、極力、広告っぽさは排除し、自然発生的なバイラル効果を狙った」(岩崎貞文氏)という。その結果、ゲームを通じてバンドの世界観が伝わり、女性層を中心に口コミで認知を広げ、アプリの公開前は1000前後だったバンドのTwitterフォロワー数は1万8000にまで拡大。また、今回のアプリのエンディングで流れた曲に興味を持ち、自発的に検索してYouTubeで他の動画を見たのが、アプリDL数の約1割。さらに、そこから実際にライブの動員に繋がったのが10〜20%前後と、プロモーションとしても大きな成果を残した。
今後については、12月末にAndroid版をリリースしたが、続編を制作する予定はなく、アプリゲーム展開をこのバンドの定番としていく気は一切ないという。ミオヤマザキは、14年12月24日に不倫がテーマのシングル「民法第709条」でメジャーデビュー。人気AV女優を起用したMVが過激すぎたために、公開を中止するなど話題を招いた。
とはいえ、まだこれはバンドのプロモート戦略ではほんの序章にすぎないのだろう。今回のアプリ展開の成功から得たノウハウがどのように活かされていくのか、今後の戦略が注目される。
(ORIGINAL CONFIDENCE 15年1月12日号掲載)
インディーズバンド・ミオヤマザキのプロモーション用に開発されたスマートフォン向けの無料アプリゲーム『マヂヤミ彼女』がApp Storeのみで200万DLを記録するヒットとなり、話題に上っている。
仕掛人はバンドの所属事務所社長の岩崎貞文氏と、実際にアプリを開発・制作したbeArkの岩崎フミヤ氏。
ミオヤマザキの魅力は、人間関係の中で抱く負の感情を、生々しく、リアルに描き出した歌詞。そして、それをアグレッシブなパフォーマンスとともに表現するmioのボーカルだ。ライブハウスを中心に着実にファンを増やし、Twitter公式アカウントも、若い女性たちを中心に1000程度のフォロワーが存在していた。
「ボーカルのmioの個性が強く、当初は、メッセージを送れたり相談できたりする、コミュニケーションアプリも考えたのですが、ファンがいると言っても1000人では、スマホアプリの世界ではまったく勝負できません。例えばApp Store総合でランキング上位に入るには最低でも10万DL以上は必要となります。音楽については、門外漢ですし、300人キャパのライブハウスでワンマンができるレベルと言われても、その数字の評価が、正直ピンとこないんですよね」(岩崎フミヤ氏)
岩崎貞文氏は「アーティストと一緒に築いた1000人のファンも、10万DLに対しては、1%でしかない、と。これがIT系の人の考え方なんです」と笑う。しかし、今回のプロジェクトに関しては、アプリ開発の専門家の意見に全面的に従ったという。
■アーティストの世界観のみを表現し、ゲームとしての面白さを追求
ゲームは、彼氏の浮気を疑う女性“リナ”が主人公で、集中してやればおおよそ半日くらいでクリアできるレベル設定。ゲームをクリアすると最後にミオヤマザキの楽曲が流れる。その間、ゲーム内容に直接、バンドや楽曲が絡むことはない。
「音楽というのは、耳にしたときの心理状態や気分、タイミングによって心に残るかどうか、印象が変わるものだと考えました。さらに言えば、“音楽を聴く状態”を作る必要もある。映画やドラマの主題歌などは1時間〜2時間をかけて、その音楽を聴く気持ちを作っているとも言えます。YouTubeなどで簡易に音楽が聴ける時代だからこそ、曲をしっかり聴いてもらうためには、ある程度の時間をかけて、“聴く状態”を作ったほうがいいと判断し、今作の構造にしたんです」(岩崎フミヤ氏)
また、「ゲームの面白さを追求し、極力、広告っぽさは排除し、自然発生的なバイラル効果を狙った」(岩崎貞文氏)という。その結果、ゲームを通じてバンドの世界観が伝わり、女性層を中心に口コミで認知を広げ、アプリの公開前は1000前後だったバンドのTwitterフォロワー数は1万8000にまで拡大。また、今回のアプリのエンディングで流れた曲に興味を持ち、自発的に検索してYouTubeで他の動画を見たのが、アプリDL数の約1割。さらに、そこから実際にライブの動員に繋がったのが10〜20%前後と、プロモーションとしても大きな成果を残した。
今後については、12月末にAndroid版をリリースしたが、続編を制作する予定はなく、アプリゲーム展開をこのバンドの定番としていく気は一切ないという。ミオヤマザキは、14年12月24日に不倫がテーマのシングル「民法第709条」でメジャーデビュー。人気AV女優を起用したMVが過激すぎたために、公開を中止するなど話題を招いた。
とはいえ、まだこれはバンドのプロモート戦略ではほんの序章にすぎないのだろう。今回のアプリ展開の成功から得たノウハウがどのように活かされていくのか、今後の戦略が注目される。
(ORIGINAL CONFIDENCE 15年1月12日号掲載)
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2015/01/11