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「DX文庫」リニューアル効果は? 新たな目的と現状のギャップを改善

 2014年11月、集英社のライトノベルレーベル「ダッシュエックス文庫」が新創刊された。ライトノベル市場はKADOKAWA勢の活躍が目立つ一方、各社からレーベルが乱立。書店には毎月100タイトル以上の新刊が並び、どれを読んだらいいのか読者を悩ませ、新しい読者を遠ざける弊害が生まれている。そんな現状に風穴を開けるべく、既存のレーベルのリニューアルを敢行したのが、集英社のダッシュエックス文庫(旧スーパーダッシュ文庫)だ。その狙いを編集長の清宮徹氏に聞いた。

集英社の新ライトノベルレーベル『ダッシュエックス文庫』の清宮徹編集長 (C)ORICON NewS inc.

集英社の新ライトノベルレーベル『ダッシュエックス文庫』の清宮徹編集長 (C)ORICON NewS inc.

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■原点回帰のリニューアル

 旧スーパーダッシュ文庫は、アニメ化された『迷い猫オーバーラン!』『ベン・トー』、トム・クルーズ主演でハリウッド映画化された『All You Need Is Kill』などの話題作を生み出してきた。「スーパーダッシュ文庫は2000年の創刊から14年経ち、読者の年齢層が上がって選び抜いて買っている傾向が見られました。ラノベ市場全体が大きくなってタイトル数も増えると、とりあえず買ってみようというのも難しくなる。中高生の新規読者が入りにくい状況になっていました。原点に立ち返る、いわゆる“リセット”が必要だと思いました。ライトノベルはまだまだ伸びしろのあるジャンルだと思うからこそのリニューアルです」(清宮編集長、以下同)。

 社内的にもリニューアルをきっかけに、児童書・ライトノベルの「みらい文庫」や「コバルト文庫」と同じ第2編集部の所属からジャンプ・ノベル編集部に“異動”。同社の看板を背負う『週刊少年ジャンプ』をはじめとする「ジャンプ」各誌との連携を強化することになった。

 「コミックスの場合、雑誌連載そのものがプロモーションになりますし、読者も試し読みができて、どんな作品か浸透させることができますが、ライトノベルの場合は読者にアピールする手段がカバーイラスト、帯や背表紙の文言くらいですので、保守的になってしまうのも否めない。どんなにいい作品でも、知ってもらえなければ読者に届きませんので、『ジャンプ』各紙の媒体力を生かして効果的に宣伝し、より多くの人に作品の存在、中身を知ってもらう作戦です」。

 漫画作品からのノベライズ(小説化)、ダッシュエックス文庫作品のコミカライズ(漫画化)、さらにアニメ、映画、ゲームといったマルチコンテンツ化を推進していく狙いもある。新創刊時のラインナップには、『週刊ヤングジャンプ』に連載中で、テレビアニメ化もされた『テラフォーマーズ』(作:貴家悠、画:橘賢一)から派生したオリジナルストーリー『テラフォーマーズ THE OUTER MISSION I スカベンジャーズ』(作:藤原健市、イラスト:橘賢一、安倍吉俊)もあった。

 ダッシュエックス文庫へのリニューアルは、目的と現状とのギャップを認識してそれを埋めるための改善活動といえるだろう。

■“新人賞”もリニューアル

 「月に100冊以上新刊が出ている状況下で、読者に認めてもらえる魅力は何か、1年半くらい議論を重ねた末にたどり着いたのは、やはりエンターテイメントの本質はキャラクターだということ。集英社の漫画が魅力的なキャラクターたちによってたくさんの読者の心を掴んできたように、ライトノベルでも魅力的なキャラクターとの出会いを売りにしようと考えています」。

 魅力的なキャラクターを生み出すために“新人賞”もリニューアルした。『スーパーダッシュ小説新人賞』を改め、今年の春から『集英社ライトノベル新人賞』の募集を開始。年2回の開催とし、大賞賞金は以前の3倍の300万円、郵送だけでなくWEB投稿も可能にした。

 「うちに限らず、新たな才能の発掘は各社力を入れているところです。ブログなどで簡単に作品を発表できる時代。以前なら埋もれてしまっていた才能が世に出やすい環境になっていると思います。『ジャンプ』との連携に魅力を感じてくれたらうれしいですし、意欲のある人たちにはどんどんその活躍の場を与えていきたい」。

 一口にライトノベルと言っても、ファンタジー、SF、ミステリー、恋愛、歴史、ホラーなどジャンルは多岐にわたる。「若者の読書離れ、活字離れが進んでいると言われて久しいですが、感受性が豊かな若いうちに活字でしか楽しめない世界があること知ってもらうことで歯止めがかけられるのではないでしょうか。若者が興味を持つような作品を提供することも大切で、ライトノベルが果たす役割の一つがそこにあると思います」。

■大きなリニューアル効果あり

 WEB通販を含む全国書店の推定売上部数を集計したオリコンのライトノベルランキングで、リニューアル前の「スーパーダッシュ文庫」と「ダッシュエックス文庫」の作品を抽出して月間売上で比較したところ、TOP100へのランクイン数がリニューアル前の10月は1作品、リニューアル後の11月は8作品となっている(集計対象期間:10月分=14/10/13付〜14/11/10付、11月分=14/11/17付〜14/12/08付)。

 ダッシュエックス文庫創刊に伴いリリースされた新シリーズの中では、『はてな☆イリュージョン』(作:松智洋、イラスト:矢吹健太朗)が最高順位21位、『クロニクル・レギオン 軍団襲来』(作:丈月城、イラスト:BUNBUN)が同27位、『六花の勇者 5』(作:山形石雄、イラスト:宮城)が同36位と健闘し、リニューアル効果がみられた。

 今月19日にはリニューアル創刊第2弾作品が発売。今後も続々と新作・新刊が登場するなかで、アニメ化などに発展するヒット作が生まれるか。市場の活性化なども期待される。

■公式サイト
http://dash.shueisha.co.jp/
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