「天使の歌声」と形容されるハイトーンボイスで注目を集める歌手・声優の蒼井翔太。声優デビューから3年。新進気鋭のアニメ作家・山本蒼美監督のOVA『この男子、石化に悩んでます。』（12月3日DVD発売）で念願の初主役を手にした。

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　同作は、第1弾『この男子、宇宙人と戦えます。』、第2弾『この男子、人魚ひろいました。』、第3弾『この男子、悪人と呼ばれます。』とオリジナル作品を発表し続けてきた山本監督が、テレビアニメ『メガネブ！』の監督を経て描くオリジナルアニメ第4弾。

　ストレスを感じると身体が石化してしまう症状に悩む高校生の田万里歩（たまり・あゆむ／CV：蒼井）と、クラス担任で石好きの地学教師、穂仁原鉱也（おにはら・こうや／CV：平川大輔）の交流を、独特の色彩やデザインセンスで描く。

　キャストのオーディションは行われず、制作サイドから直接、蒼井に出演オファーが来た。アフレコでは、「緊張のあまり、僕自身が石化していました（笑）」と振り返り、「キャラクターの田万里が、まるで昔の自分を見ているようなシンパシーを感じていましたし、アフレコが進むにつれて緊張もほぐれ、血の通ったお芝居をすることができたと思います」と手応えを語っている。

　これまでに、アニメ『君と僕。1＆2』の松下隆之介、『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE2000％』の美風藍、『少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 49-』の富井大樹などを演じてきたほか、舞台『ペルソナ3 the Weird Masquerade〜青の覚醒〜』やテレビ東京系『THEカラオケバトル』などにも出演し、活躍の幅を広げる。

　「僕が出演していた舞台をこの作品のスタッフが観てくださっていたみたいで。今回、主演と主題歌の両方出来るということで、オファーをいただきました。印象に残ったということを純粋にうれしく思いました。声優を始めた時から、いずれ主役もやってみたいという気持ちはありましたので、僕を起用してくださった監督やスタッフには感謝の気持ちでいっぱいです」。

■コンプレックスだった声が武器に

　同作では、主題歌も蒼井が歌う。アニメオリジナル曲「glitter wish」は、作品の世界観をイメージして蒼井自ら作詞作曲を手掛けた。3rdシングル「秘密のクチヅケ」（12月3日発売）に収録される。

　主題歌は、音楽制作ブランド「Elements Garden」の藤間仁氏の編曲によるキラキラ感あふれる仕上がり。蒼井のハイトーンボイスは他の誰でもない唯一無二のアイデンティティを主張する。しかし、「この声がコンプレックスだった時期もあった」という。

　「自分の声が嫌いで、引きこもっていた時期があって。外の世界と一切関わらなくても、部屋の中で音楽だけは聞いていて。特にElements Gardenの曲を好んで聴いていました。それが精神的な支えにもなりましたし、自分も歌ってみようと思うきっかけにもなりました」。

　『この男子、石化に悩んでいます。』の主人公・田万里は、石化してしまう体質がコンプレックスになって、クラスになかなか馴染めず、留年。そんな自分を変えようと、髪型や服装をイマドキにし、話題づくりのため流行をチェックしたりするも、気持ちばかりが焦っては空回りする日々を送っていた。

　キャラクターに蒼井自身の過去が重なる。

　「今の自分を変えなきゃと葛藤して、焦って、ジタバタして。僕も経験あります。さらに、田万里の石化を『綺麗だ』と言う人が現れたように、コンプレックスも見方が変わればキラキラ輝く宝石になる。僕も思い切って歌ってみたら、『素敵な声ですね』と言われたりして、道が開けたんです」

　コンプレックスだった声が、いまや彼の武器だ。主役を演じること、主題歌を手がけること、どちらも蒼井にとってはかなえたい夢だった。「このアニメも主題歌も僕の代表作の一つになりました」と、感極まって泣きそうになる。

　「この作品に出てから成長したね、と言ってもらえるように芝居も音楽も頑張りたい。音楽活動では自己表現としての作詞作曲だけでなく、作品に沿った楽曲づくりやほかのアーティストに提供できるくらい、クオリティーを高めていきたいと思いました」とさらなる成長を胸に期した。