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“アニメ聖地化”で地域振興 埼玉県の挑戦

 近年、アニメを観光資源とし、地域振興を行っている埼玉県。昨年、同県を舞台としたアニメ・漫画を集めた大型のイベント『アニ玉祭』を初開催し、“アニメの聖地”をアピールした。今月11日、12日日には、「アニメと観光」をテーマに、2回目が開催される。ORICON STYLEでは同イベントの主催者3名にインタビューを敢行。埼玉が取り組んでいる挑戦と苦労を聞いた。

昨年10月に行われた『アニ玉祭』の様子 2日間で約6万人が埼玉県を訪れた

昨年10月に行われた『アニ玉祭』の様子 2日間で約6万人が埼玉県を訪れた

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■“新たな”観光資源の発見

 そもそも、埼玉県側が、アニメに注目したのは、2007年に放送されたアニメ『らき☆すた』がきっかけ。同作品の舞台となっている久喜市・鷲宮神社には9万人だった初詣の参拝客が49万人と飛躍的に増加し、埼玉県産業労働部観光課・松本直記さんは「観光資源として力を持っているんだと気づいた」と振り返る。

 アニメで観光を盛り上げるべく、2009年に漫画家やアニメ制作者らで構成された「アニメツーリズム検討委員会」を立ち上げ、アニメ資源をどう活かすのか提案書を作成。その後、「ゆかりのマンガ☆アニメMAP」の作成、県内4地域を巡る「埼玉聖地横断ラリー」など、アニメ・マンガを使用した観光プロモーションを展開していく。

 『アニ玉祭』の生みの親であり、ソニックシティ・事業企画部 実施統括田中康士郎さんは言う。「なかなかこれくらいアニメを観光資源として力を入れている自治体も少ないのでは。埼玉にはもともと観光資源が多くなく、世界遺産もないし、海もない。観光スポットが少ないからこそ、アニメで観光という新しい可能性が、埼玉にはあると思います」。

■「待ち」から「攻め」の姿勢へ

 同県を舞台にした作品は、川越市を舞台にした『神様はじめました』(原作:鈴木ジュリエッタ)、飯能市の『ヤマノススメ』(原作:しろ)のほか、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(以下「あの花」)など多数。

 昨年の『アニ玉祭』は、ヒットした『あの花』の劇場版公開日も近く、追い風を受けての開催となったが、すでに放送が終了している作品でもあった。「東京で作られたアニメがヒットして、たまたま地元がヒューチャーされるのは、ありがたいですが、観光政策としては“運頼み”」(松本さん)と自分たちから仕掛けていく必要性も感じている。

そこで、「アニメの聖地化プロジェクト会議」を立ち上げ、活動は実験段階だが、県内の自治体、商工団体、鉄道会社、マスコミなどが集まり、コンテンツ発掘やアニメの誘致ついて議論や勉強を行っている。

 2005年に著書『聖地巡礼』を出版し、『アニ玉祭』の総合プロデューサー、同会議の副座長を務める柿崎俊道さんは、「アニメの聖地化プロジェクト会議で、みなさんアニメで何かをやりたいと思っていても、意欲はあるが知識は少ない。アニメとは何か、という話をさせていただきながら、いかにビジネスとして取り組むのかを考えています。“いい大人”たちがアニメについて熱く議論し、勉強の仕方から学んでいます」。

 どうすればアニメのビジネスと地域振興が噛み合うのか。「行政が加わり過ぎるとファンが離れてしまうかもしれないので、そのバランスをみていくのが難しいですが、これが一つの形になれば」(松本さん)と模索は続く。

■埼玉から全国 全国から埼玉へ

 アニメや漫画を観光資源として活用している自治体は、もちろん埼玉だけではない。埼玉は、埼玉県のみでなく他の都道府県と一体となって盛り上げていく取り組みをみせている。「新潟の『がたふぇす』と姉妹協定を結んでいて、行政リリースを出しました。そのほかに、9月下旬に開催された京都府の『京まふ(京都国際マンガ・アニメフェア)』とは、お互いのイベントで出店していく運びになっている」と、行政間とのつながりも強化。

 来年の春に新幹線が開通する北陸エリアにも注目する。田中さんは、「富山県ですと、(アニメーション制作会社の)P.A.WORKSさんがあり、アニメ『花咲くいろは』が舞台の石川県もある。ファンの人が埼玉から行きやすくなるし、北陸からも来やすくなる」と北陸埼玉間の往来を期待しており、「比べる対象がありますと、互いに良さが出てくる。お互いに連携がとれるのはいいことで、全国から埼玉に来てもらうのも大事ですが、埼玉から全国に遊びにいくのも、観光として大事なことだと思いますね」。

■『アニ玉祭』はライトユーザー層狙い

 2回目の開催となる『アニ玉祭』では、埼玉のくくりを外し、ストレートに「アニメと観光」をテーマに掲げた。「(埼玉県が舞台の作品を)昨年と同じように集めてお客さんがどれだけ来てくれるのかが問題点でした。また、ずっと同じ作品で、同じ地域でやっても発展性はあるのかと。結論として、少し柔軟にやっていこうとなった」(田中さん)という。

 『アニ玉祭』は同県内にある施設・ソニックシティの周年記念イベントとしてスタート。同県が舞台の作品を集め、トークショーや痛車の展示を行ったが、1回目は「苦しかった」と田中さん。「開催前まで『本当にやるの?』と言われ続けていました。広告を出すのも、こちらから“お願い”することが全部だった」と風当たりは決してよくはなかったという。

 しかし、結果的には2日間で来場6万人となり、主催側も「予想外」の多くの人が訪問。2回目の開催が決まり、「『昨年盛り上がったから一緒にやろう』と言ってくれる団体もいて、うまく形を作れている。(住民も)地元を盛り上げてくれるという認識はもってくれていると実感します。昨年と空気は違う」(田中さん)と一気に注目度もあがった。

 同イベントの目的は、アニメファンの誘致はもちろんだが、1番の狙いは「地域に行ってもらうこと」と田中さん。「『アニ玉祭』のお客さんは、なんだかんだ(アニメに対して)ライトユーザーが多かった。イベントがきっかけで、鷲宮や川越、秩父などのアニメの聖地へ行く人が増えたら目的達成」と話していた。

■第2回『アニ玉祭』
10月11、12日に埼玉県で開催されるアニメ・マンガの総合イベント。声優トークショーや、中川翔子のラジオ公開収録、グッズ販売、痛車の展示・コスプレイベントなどが開催される。【公式サイト】http://anitamasai.jp/

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  • 昨年10月に行われた『アニ玉祭』の様子 2日間で約6万人が埼玉県を訪れた
  • (左から)ソニックシティ事業企画部の田中康士郎さん、『アニ玉祭』総合プロデューサー・柿崎俊道さん (C)ORICON NewS inc.
  • 昨年10月に開催された『第1回アニ玉祭』の会場風景
  • 昨年10月に開催された『第1回アニ玉祭』の会場風景

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