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“愛すべき役者バカ”滝藤賢一、過剰なまでの役作りのワケ

 社会現象となったドラマ『半沢直樹』で強烈な印象を残した俳優・滝藤賢一。4月には初主演ドラマ『俺のダンディズム』も放送されるなど、遅咲きアラフォー俳優の中では現在、頭一つ抜きん出た存在の彼にインタビューを敢行。過剰なまでのめり込む役へのアプローチについて、さらに「役者は楽しいものではない」と語る彼の真意を聞いた。

役作りへのこだわりを明かす滝藤賢一

役作りへのこだわりを明かす滝藤賢一

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■息子を失った役なら、自分の息子が死んだことをとことん妄想する

――出世作となった『クライマーズ・ハイ』、そして社会現象となった『半沢直樹』を例に挙げるまでもなく、滝藤さんの演技は受け手に強烈な印象を残します。時には狂気すら感じるくらいに。演じる際、どんな感情が生まれるのか?
【滝藤賢一】台本を読む際は凄く楽しいです。ただ、演じることを“楽しい”と感じることは無いんです。演じる上で僕の個人的な感情なんて視聴者の方には正直関係ないですから。観ている人が楽しんでくれたらそれで良いと思っているんです。

――役の作り込みは決して楽しいものではない?
【滝藤】うん。苦しいですよ、正直言って(笑)。

――滝藤さんって、これまでの作品を観ていても、ホントにストイックな役者さんだなって思うんですよ。映画『クライマーズ・ハイ』(2008年)でも、日航機墜落の現場を見て精神が崩壊してしまった新聞記者をリアルに表現されてましたし、ドラマ『赤い指』(2011年TBS系)では、たった2シーンのために体重を絞って愛する者を失った男の絶望を表現されていました。
【滝藤】ありましたね〜。あの時は、1週間で5キロ痩せたから結構辛かったですね。誰も痩せろなんて言ってないのに…(笑)。『赤い指』は、子供を失った父親の役だったから、実際に自分の長男が死んだということを何日も妄想し続けたんです。撮影当日の朝も、長男が生まれた直後のビデオを何度も観て……。

――それって精神的にそうとう参りますよね。
【滝藤】そうですね……ただ、それが実際に役にどれほど反映して、観ている方に“子を亡くした父親の気持ち”がどれほど伝わるかは分からないですけどね。でも、与えられたからには自分なりに出来ることをしないとって。そうしないと「役者の仕事って何?」ってなるから。

■役者ってやっぱり“特別な職業”なんですよ

――役に入り込むこと、役になりきることは決してストイックではなく、役者として当然だということですね。
【滝藤】そうだと思うんですよね。じゃないと、ただセリフを覚えて喋ればいいのか?ってことになってしまうし……。それを成立させられる役者さんは限られてると思います。

――無粋な質問なんですけど、なんでそこまで追い込めるのか?って感じることもあるんです。
【滝藤】皆さんやっていらっしゃることだと思いますよ。 少なくても僕が接してきた役者さんはそうやって与えられた役どころをとことん追求しているんじゃないかなぁ。

――だからこそ、その演技に感動できるんですね。
【滝藤】僕の演技で感動させられるかはわからないですけど(笑)。役者ってやっぱり“特別な職業”だと思うんです。皆さんが用意して下さったところに最後に入って、ちょろちょろってセリフ喋ってOKが出たらそれで終わり。片付けもしないでそのまま帰る。しかもメイクや衣装も全てやってもらえる。「何様だよ!!」っていう職業でしょ(笑)。

――役者ならば事前に作り込むのは当然だと。でも滝藤さんの場合、すごく追い込んで役作りをして、事前に色々な要素を詰め込んでいくのに、いざ、現場に行ったら、その全てを捨てることも辞さない。普通なら名残惜しさを感じてしまうものですけど。
【滝藤】現場のスタッフは僕を助けてくれますから。僕以上に僕の役を膨らませてくれるし、僕以上に魅力的な役に形作ってくれる。もちろん、自分なりにとことん考えますけど、それ以上に素晴らしい肉付けなら自分の案に未練は一切ないです。どうでもいいくらい。

――どうでもいい(笑)。
【滝藤】たかだか37年のペラペラな人生を歩んできた人間の考えなんてね(笑)。「俺は自分しか信じてない!!」って言い切れれば良いけど、そんな自信はないですよ。

■仲代達矢さんに、この世界(役者)で生きていく厳しさを教わった

――滝藤さんの役者としての考え方、思想を埋め込まれたのは、やっぱり所属されていた無名塾(※俳優・仲代達矢主宰の俳優養成所)の影響が強いんですかね?
【滝藤】たぶんこの世界で生き残るための術としてたどり着いたものだと思います。無意識な嗅覚というか……ただ、無名塾で仲代さんにこの世界で生きていく厳しさを教わってきたので。だから(役者が)楽しいという感覚がないのかも知れないですね。

――仕事としてしっかり捉えるよう教育されてきた。
【滝藤】うん……でも、楽しそうにやっている人を見ると羨ましくなりますよ。僕も楽しんでやりたいなって思う瞬間もあって(笑)。

――やっぱり羨ましいときもある(笑)。
【滝藤】ありますね。ホント、反省の毎日ですから!「なんであんな感じになっちゃったんだろう」とか「こんなに良いアプローチを共演者の方がして下さったのに、ぼぉーっとしたな」とか。だから、1シーンを撮り終えても絶対モニターで確認しないです。だって確認したら絶対にもう一回やらせてくれ!って思っちゃいますから(笑)。

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