急増する電子チケットの可能性

 ライブエンタテインメント市場の盛り上がりを受け、7月には「第1回ライブ&イベント産業展」が東京ビッグサイトで開催されるなど、ライブを取り巻く周辺ビジネスも、活況を呈し始めている。なかでも新規参入が相次いでいるのが紙の発券を行わない、スマートフォン等を使った電子チケットだ。各社のサービスをみながら、長く問題とされていた転売対策や、チケットの高付加価値化など、今後の可能性を探っていく。

■コアファンが占めるライブ市場、グレー層への接触機会を創出

 ここ数年、徐々に実施例が増えている電子チケットサービス。その登場の背景には、13 年の年間実績で総売上2318.3億円(前年比136.3%)と右肩上がりで成長を続けるライブエンタテインメント市場の好況がある(※コンサートプロモーターズ協会調べ)。

 ここをビジネスチャンスと見た既存のライブイベント関連会社(プロモーター、プレイガイド、グッズ制作会社など)に加えて、ベンチャー企業の参入も重なり、新サービスが次々と登場している。

 チケットについては転売対策が話題に上ることも多く、すでに数年前から、AKB48サザンオールスターズなど、複数のライブで、身分証明書の提示などといった本人確認も行われてきた。直近では、ももいろクローバーZ が7月26日〜27日の日産スタジアム公演で「顔認証サービス」を導入したことも注目された。

 こうした本人確認は入場時のオペレーションを煩雑にするため、主催者、来場者双方にとっても不便を強いられることになるが、それでもインターネット上に書き込まれるファンからの声を見ると「転売屋を排除できる」と概ね好意的な声が目立つ。

 ただし、「当日、都合がつかなくなり、急きょ行くことができなくなった」といったケースへの対応が不十分という指摘も多い。上記のような施策を行うアーティスト側の導入理由は至ってシンプルで「ファンにとって不公平、不都合な状況を解消したい」という点に尽きる。ぴあがスタートさせたリセールサービスもそうした声に応えた動きのひとつだ。

 加えて、Yahoo!チケット担当者は情報の偏りを指摘し、「我々のようなポータルサイトと興行側が直接組むことで、イベントに興味はあってもチケット購入にまで至らなかったグレー層にまで情報を行き渡らせることができる」と、同サービスのポテンシャルを語る。さらにはサービスに新規参入したtixee は「ライブに限らず、クーポン券も含め、いわゆる“発券”されるものなら、国内外を問わず、すべて取り扱っていきたいと海外のファンも見据えた事業範囲の拡大を図る。

■スマートフォンの活用で取扱うイベントの種類も拡大

 音楽ライブ以外のイベントを視野に入れ、早くから事業を進めているのはイープラスだ。00年にインターネットでのチケット販売サービスを開始していた同社では、09年には、演劇や展覧会、講演会、学園祭などの“チケット委託販売サービス”を他のプレイガイドに先行して開始。ネット化を契機に、商材の拡大を図ってきた。電子チケットを扱う各社も、狙いは同じ。新たな接触ツールとして、スマートフォンを活用し、集客支援から携わることで、扱えるイベントの規模・種類を拡大させ、そこでマネタイズを図ろうとしている。

 別表でも主な電子チケットサービスについて、その特徴を紹介したが、(1)ライブチケットのグローバル販売、(2)ファンクラブ運営との連携支援、(3)イベント運営そのものの支援、(4)小規模なセミナーや学園祭まで商材の拡大、などと見据えている未来像/マネタイズのポイントは各社ともに微妙に異なる。当然、ライブ主催者側は、そうした各社のメリットを理解しつつ、その都度、サービスを選んでいくことになるだろう。

 一方で、ユーザーにとっては、スマートフォン内でイベント情報の入手から発券、当日の入場までが完結でき、これまで以上にライブ等へ行きやすい環境を得ることができる。さらに、電子化をきっかけに新たなアーティストやイベント、舞台などの情報に出会える可能性は急速に広がるだろう。(ORIGINAL CONFIDENCE 14年7月28日号掲載)



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