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是枝裕和監督が語る“日本”とカンヌ映画祭との関係性

 フランスで現地時間5月15日から26日まで開催された、『第66回カンヌ国際映画祭』のコンペティション部門で審査員賞を受賞した映画『そして父になる』(10月5日公開)の是枝裕和監督が28日に帰国し、成田空港で会見を行った。早朝から駆けつけた多くの報道陣を前に是枝監督は、受賞のよろこびと今回の映画祭を通じて感じた世界のなかでの日本映画について語った。

成田空港で会見を行った是枝裕和監督。映画『そして父になる』は10月5日公開

成田空港で会見を行った是枝裕和監督。映画『そして父になる』は10月5日公開

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――審査委員賞受賞おめでとうございます。受賞後、まだ日本についたばかりだと思いますが反響はいかがですか?
【是枝監督】 帰国早々空港の通路にカメラマンの方がいらっしゃったので、こういうことだなと実感しております(笑)。カンヌのパーティーではあまり時間が無かったのですが、何人かとお話できました。スティーブン・スピルバーグさんは、『そして父になる』は映画祭の期間中なにかしらの賞から外そうと思ったことは無かったといってくれましたし、ニコール・キッドマンさんは上映を観て泣いていらっしゃったようで、心に届く話、女優2人が特に素晴らしかったと話してくれました。作品を誉めていただけるのは大変光栄なことです。今回のカンヌはコンペにタイプの違った2作品が選ばれているし、審査員にも河瀬直美さんが参加されているということもあり、例年よりも日本国内で注目されていたと思います。“日本”として映画祭との関係性を強く築いていくと、作品を観てもらえるというステージに立てるので良いことだと思います。

――福山雅治さんは皆さんとお祝いしたいとコメントを寄せていましたが、直接連絡をとられましたか?
【是枝監督】 カンヌを発つ直前にメールが来ていて、忙しいなかコメントありがとうとメールを返したんだけど、彼のドラマが落ち着いたら皆で祝いたいと思います。カンヌでは日本の作品というだけでなく、授賞式の舞台裏でジャ・ジャンクーやチャン・ツィーとアジアンパワーだなんて言って笑いあってましたが、そういうことが映画祭で味わえる嬉しい瞬間ですね。日本映画への注目が集まるのももちろん嬉しいですが、(映画祭への参加は)もっと広く映画に包まれていると感じることができて嬉しいです。

――映画祭では数多くの海外メディアの取材を受けられたと思いますが、そのなかで印象に残っている質問はありましたか?
【是枝監督】 現地では60媒体くらいの取材を受けました。印象に残っているのは記者の人たちが自分のことを話して帰ることが多いってことですね(笑)。それは海外の人たちのほうが、血縁でない子どもを育てるという機会に接することが多いからなんだなと思いました。作品を観ているうちに、自分のことや身近な出来事を投影しているんだなと。それが公式上映後の温かい拍手につながった一因かなと思います。あとコンペは9年ぶりですが、その間に4本作っていて、多くがヨーロッパで公開されています。『奇跡』はイギリスでよい形で公開ができたり、多くの人が作品に触れてくれている。今までの作品を通して共有してくれているということも、温かい反応をいただけたことにつながってると思います。

――日本映画の大きな流れを映画祭で実感されましたか?
【是枝監督】 日本の映画というのは世界的にみても豊かな歴史があると思います。僕自身もデビュー以来ずっと、小津安二郎から受けた影響を聞かれることも多くて、はじめのころは「あんまり観ていないし、影響もうけていません」と答えていたんですが、自分の中に流れている家族観や死生観は共通していて、日本人としての特異性を感じますね。それは大切なことだと思います。

――『誰も知らない』(主演の柳楽優弥が『第57回カンヌ国際映画祭』で最優秀男優賞を受賞)での受賞と今回の受賞で何か違いはありますか?
【是枝監督】 『誰も知らない』では柳楽優弥くんが賞を取って良かったなと思っているんですが、今回はスピルバーグが名前を呼び上げてくれて、それだけで大満足といった感じでした。カンヌの賞は、優れた作品に与えるもので、どうしても賞を振り分けなければならないから、決して女優賞だったら女優だけが優れていたわけではなく、作品自体が優れていたということなんだと思います。

――少し気が早いかもしれませんが、賞をとられてからオファーが殺到していることだと思います。今後撮ってみたい作品や構想がありましたら教えて下さい。
【是枝監督】 オファーは殺到していないです(笑)。実現する、しないは別として構想は常に5、6本同時に走らせているんですね。今年はとにかく『そして父になる』に集中して、来年から具体的に考えていきたいと思います。今回、普段ならあまり接点の無い福山雅治さんとご一緒させていただき、彼が今まで見せたことの無い表情や、彼の魅力をどうやって引き出そうということが刺激になりました。今回の取り組みは僕にとっても彼にとっても新鮮だったと思うし、僕自身楽しかったです。オファーは殺到していないので、何かありましたらぜひ(笑)。

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