俳優・松田龍平（29）と宮崎あおい（27）が出演する映画『舟を編む』（4月13日公開）でメガホンを執った石井裕也監督（29）が、ORICON STYLEのインタビューに登場。直木賞作家の人気作を実写化するプレッシャーや、キャストの魅力を語っている。

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　同作は『2012年本屋大賞』を受賞した人気作家・三浦しをんの同名小説を、早くも実写化した注目作。辞書編集部を舞台に、松田演じる主人公・馬締光也（まじめみつや）が、定年間近のベテランスタッフからチャラ男まで、個性派な面々に囲まれながら、問題山積の編集部で辞書『大渡海』の完成に人生を捧げる。

■地味な作業を何年も続ける人たちの“輝く瞬間”

　美しいモデルたちが登場するような、派手な仕事現場があるファッション誌の編集部や、日々変化し続ける社会情勢を切り取る、熱い新聞記者が出てくるわけでもなく、長い時間を費やしながら、日本語辞書の改訂版出版へ向け、地道な努力を重ねてきた辞書編集部。映画の舞台として扱うには、どこか派手さに欠ける印象は否めない。

　率直な質問をぶつけると、「誤解を恐れずにいえば、確かに映像的には地味なんですよね」と、石井監督は声を上げて笑う。「編集作業をみせたくても、机の上には書類や資料本が積み重なっていて、どの角度から撮っても映らない。なんとかして手元を映しても、淡々とした作業なので面白さが伝わらない」と頭を掻く。「でも、逆説的にいえば地味な作業を延々と続けてきた人たちこそ、どこかで輝きだす瞬間があるんです。今回は、そこを映画にしようという思いでした」。

　劇中、個性的な主人公を演じるのは石井監督と同い年の松田。松田は現在放送中のテレビ東京系ドラマ『まほろ駅前番外地』で謎の多い便利屋の居候として登場し、ほかの作品でもエキセントリックなキャラクターが多い。今回のような生真面目な青年という役柄は、意外ともいえる起用だ。監督自身も「最初、僕もすぐにピンとは来なかった」と語る。

　「ただ、松田さんは殺気と狂気が入り混じったような目つきと、瞬間的に発揮する集中力を持った、若い俳優さんの中では稀有な方。その部分が、毎日淡々と繰り返される仕事のなか、辞書を完成させるという強い信念を持って生きる姿と、もしも“辞書作り”という仕事を取り上げられたら何をするか分からないという馬締の持つ狂気に、どこか通じるものがありました。やはりこの役は松田さんでしか成立しなかったと思います」。

■プレッシャーを跳ね除け、腹をくくった「お題」

　一方、松田演じる馬締の意中の相手・林香具矢を務めた宮崎あおいの印象については、「とにかく、頭の回転が速い。その速さに体が連動しているんですよね。僕が何かしたいとか、これからしようとする事にすごく早く呼応してくれます」と、たたけばすぐに響く鐘のような宮崎の勘の良さに感服の様子。

　「多分ですけど…ものすごく、気が強くて頑固な方かもしれない（笑）。それが、役者さんとして彼女のパワーを形成しているんでしょうね。その一方で、高い感受性、順応性、反応の速さを持ち合わせていらっしゃいます」。

　石井監督はこれまでに満島ひかり主演の『川の底からこんにちは』、仲里依紗主演『ハラがコレなんで』などを手がけ、次世代を担う若手監督の1人として注目を集めてきたが、今回は自身のキャリアの中で、最も大きいキャパシティでの製作となる。プレッシャーについては、「こういう話題性の高い作品の実写化は、ある種僕にとって“この映画で勝負をかけろ”と、お題を与えられたようなもの」と覚悟を決めたようだ。

　「最初は（松田と）二人で心もとない感じもあったんですよ。でも、ここは『お互い運命共同体だし、ひと暴れしよう』というムードで、撮影を迎えました。相手が年下の方でも、年上の方でもなく、同い年だったからこそ出来たこと。年齢差があれば、きっと違うニュアンスになっていたのかなと思います」。

　同作は辞書改編のなかに、紙からデータへ、言葉を新しい世代へ伝える「継承」もテーマの一つ。「僕より年上のプロデューサー、スタッフの方々に囲まれて、技術や気概といった『映画人としての自負』を感じ取りました。僕もこの作品で、ようやく“受け継いでいきます”という心構えができました」と語る石井監督の表情は、実に晴れ晴れとしていた。

　映画『舟を編む』は4月13日公開。主人公が働く編集部の同僚役にオダギリジョー、黒木華、池脇千鶴、加藤剛と演技派の面々がそろう。

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