女子中高生に絶大な人気を誇る『青の祓魔師』（原作：加藤和恵／集英社『ジャンプスクエア』連載）の劇場版アニメが公開中だ。原作漫画、そして2011年にMBS・TBS系全国ネットで放送されたテレビアニメシリーズを受け継ぎながら、オリジナルストーリーを展開し、新たな世界観を広げている。監督を務めた高橋敦史氏は、同作で劇場用長編映画の監督としてデビューを飾った。

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　高橋監督はスタジオジブリ出身で、2002年米アカデミー賞長編アニメーション部門賞を獲得した宮崎駿監督作品『千と千尋の神隠し』では監督助手に抜てきされた。ちなみに、『千と千尋〜』でともに助手を務めた宮地昌幸氏は、今年、映画『伏 鉄砲娘の捕物帳』を監督するなど、次世代を担う若手監督の活躍が目立ってきた。

　今回、初めての監督作品を手がけた高橋監督は「作業しながら、宮崎監督の影響を受けているなぁ、と思うこともありました」と振り返る。「90分、1000円ちょっといただくからには、祭りにしたかったし、見慣れていないものを見せたいと思っていましたし、観客を飽きさせてはならない。そのために作り手側は頑張らないといけないわけですが、その頑張るための技術は『千と千尋〜』などの現場で勉強させていただきました」。

　今回、最も生かされたのは「観客をちょっとだけ裏切っていく技」。アニメに限ったことではないが、思わず「あるあるっ！」って言ってしまうような「お約束」を少しだけ外していく。その外し加減に、監督の才能やセンスを問われてくるのだろう。高橋監督は「例えばですが、洞窟内に突入したら暗闇の奥に敵が見えてくるという“お約束”をちょっと外して、奥ではなくパーンアップしたら天井に張り付いていた…とする。安易なお約束やセオリーに頼らずに、それでいて心のひだに触れる演出を考えることを心がけました」。

　「外す」と言っても、テレビシリーズの延長線上にあるので、「外しすぎて、キャラクターの言動に違和感があったらアウト。そのバランスが難しかったですね。原作やテレビシリーズで築いてきたキャラクターがブレないようにしました」。

　同作の脚本は『けいおん！』の吉田玲子氏。そして、映画館の大きなスクリーンいっぱいに描き出される背景は、『鉄コン筋クリート』『スチームボーイ』などを手がけた美術監督、木村真二氏によるもの。魅力あふれる不思議な建造物や愛嬌たっぷりなキャラクターたちが登場する奇妙な異世界も大きな魅力のひとつとなっている。デジタルアニメならではの視覚効果を生かした紙吹雪や小さな悪魔、雪などの表現も見応えがある。

　「和洋折衷も明治から100年以上たった現代ではなじんでしまっているけど、まだ洗練されていない違和感満載な街が原作からの魅力でもあり、木村さんの本領発揮でさらにパワフルになりました」と手応えも語っている。

　そんな効果的な演出を要所、要所に差し込み、ちょっとした引っかかりを作りながらも物語に引き込んでいく。高橋監督は謙虚な姿勢を崩さずに「観終わってそのまま終わってしまう映画はつまらないなと思う。あの手この手で楔を打って、観終わった後にじわじわともう一度観たい、と思える作品を作って行きたいですね。いろいろな作家がいろいろな作品を作っている中で、常に何か一石を投じていきたい」と強い意欲も示していた。