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映画『ベルセルク』はどこを目指していくのか〜窪岡俊之(監督)×島田明(白泉社編集者)【前編】

 1989年の連載開始から22年、既刊の単行本36巻(三浦建太郎、白泉社)が全世界で累計発行部数3300万部を突破する人気漫画『ベルセルク』。中世ヨーロッパを下敷きにした剣と魔法の世界を舞台に、人間たちの性(さが)を圧倒的な筆力で描いた原作漫画の世界観すべてを映像化する<ベルセルク・サーガプロジェクト>がついに幕を開けた。

 <サーガプロジェクト>第1弾としてファンの間でも最も人気が高い「黄金時代篇」を三部作で映画化。2月4日公開の第1部『覇王の卵』を皮切りに、第2部『ドルドレイ攻略』(6月23日公開)、第3部『降臨』(2012年冬公開)の長編3本が年内に一挙公開される。

壮大なサーガプロジェクトに挑む『ベルセルク』窪岡俊之監督(左)と原作者・三浦建太郎氏の担当編集・島田明氏 (C)ORICON DD inc 

壮大なサーガプロジェクトに挑む『ベルセルク』窪岡俊之監督(左)と原作者・三浦建太郎氏の担当編集・島田明氏 (C)ORICON DD inc 

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 今回、初映画監督作にして長編三部作を手がけることになった窪岡俊之監督と、原作者・三浦氏の担当編集者・島田明氏にインタビューを敢行。今、なぜ、映画『ベルセルク』なのか――。

――過去にもテレビシリーズ(1997年10月〜1998年3月に放送)として映像化されたことがありましたが、改めて映像化する狙いはどこに?

島田:テレビシリーズの放送が終わった後も、原作の物語はまだまだ続きがありましたし、映像化のオファーはたくさんあったのですが、きちんとパイロットムービーまで制作して、熱意と誠意を示してくれたのが、窪岡監督も参加したLUCENT PICTURESとSTUDIO4℃でした。三浦先生も僕も『ベルセルク』の物語を、この人たちが作る映像で見たいと心動かされました。

窪岡:「やるぞ」って決まったのは2008年でしたね。結局、テレビシリーズですでに描かれていた黄金時代篇から始めることになりましたけれど、我々は全く新しい『ベルセルク』を作るという感覚でした。原作や旧来のファンの方の評価を恐れず、自分たちが最高に良いと思える作品を作る。それだけでしたね。

島田:原作がとても長い作品なので、連載開始から読んでくれている20年来のファンがたくさんいてくれてありがたいのですが、一方でタイトルは知っているけど、内容はよく知らないという若い世代が増えているのも事実。「黄金時代篇」は20年近く前に描かれた昔の作品なんですね。でも、今回のように映像化することで、従来からのファンに楽しんでもらうのはもちろんですが、新しいファンとも出会いたい。だから原作漫画を読んだことがない人も大歓迎です。

窪岡:実は、僕も今回のプロジェクトに参加することになってから原作を読んだ口で…。でも、読んだら非常に普遍的な内容だと思いました。いろいろなアニメがありますが、大人の鑑賞に耐える作品がもっとあってもいいのではないかと思っていたので、これは!と思いましたね。大人向けの娯楽作品としても十分成立すると思いました。

島田:漫画は昭和の時代の中学生、高校生には「ガッツカッコいい、グリフィスすごい」と受け入れてもらえたけど、今の中学・高校生たちはどう思うのか。物語もコテコテの“昭和の青春群像劇”の話なので、今回の映画の反応が楽しみです。劇場に貼り出されているポスターや予告編を観て、「カッコいい男2人の物語」くらいのユルい興味の持ち方でいいので、とりあえず第1部『覇王の卵』(公開中)を観てほしいですね。

窪岡:キャラクターデザインの恩田尚之さんには、ガッツはたくましさの中にも繊細さを、グリフィスは美しさの中に冷酷さを表現していただきました。

島田:ポスターも青春色を押し出していますね。原作を良く知っているファンならお見通しだと思いますが、これは完全にミスリードを誘っていますので(笑)。

窪岡:『ベルセルク』のキャラクターは、今、流行っている漫画の傾向には沿わないし、“萌え”の要素もない。キャラクターだけで若い世代を呼び込むのは難しいだろうと作っている僕たちでさえ思っていた。でも、映画を観てさえもらえれば…という自負はあります。

島田:原作の物語はこの先、どんどん暗くなっていくので、せめてパート1だけはきれいに明るくというのはいいと思いましたよ。

窪岡:ベルセルクの世界観は連載が進むにつれて、どんどん変化もしていますね。現在、進行形の漫画(35巻以降、「幻造世界<ファンタジア>篇」)から黄金時代篇を見ると別世界です。

島田:ただ、パート1のクオリティのまま、原作の世界観を映像化するか? エロスとバイオレンス満載の今後の展開を描いていくのか? みたいな期待やら不安やらが湧いてくると思います。パート1にも戦闘シーンはたくさんありますが、人々がどこかに夢を持っていたり、人生かけた情熱を抱いていたり、なんだか救いがあるんですよね。でもここから始まる『ベルセルク』の本当の世界観はどうしようもなく暗い世界なんです。【続く】

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  • 壮大なサーガプロジェクトに挑む『ベルセルク』窪岡俊之監督(左)と原作者・三浦建太郎氏の担当編集・島田明氏 (C)ORICON DD inc 
  • 映画『ベルセルク 黄金時代編I 覇王の卵』公開中 (C)三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK FILM PARTNERS 

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