ORICON STYLE

2005年10月19日

 19歳でデビューし、若くしてカリスマと呼ばれるようになった米国人の天才肌シンガー・ソングライター、“フィオナ・アップル”が、6年振りのアルバム『エクストラオーディナリー・マシーン』をリリース。方向性を見失ったり未完成の音源がリークしたり、多くのトラブルに見舞われたアルバムの制作プロセスを、彼女に振り返ってもらった。

キャリア志向は強くないし、曲も書かずに普通の生活を満喫していたの

――まず、この6年間はどんな風に過ごしていたんですか?
【フィオナ】 基本的には普通の生活を満喫していたのよ。読書して散歩して友達を訪ねて・・・。長い間曲を書かなくて、曲を書きたい気分にならなかったから、アルバムを作る必要性も感じなかったわ。ほら、わたしってキャリア志向が強い人間じゃないし、それに何年か生きないと、曲のネタも生まれないでしょ?(笑)

――では「アルバムを作ろう」という気分はいつ生まれたんですか?
【フィオナ】 前作『真実』をプロデュースしたジョン・ブライオンとは、毎週決まって食事をしていたの。で、時折彼は“曲は書いてるの?”と探りを入れてきて、その度にわたしは“ノー”って答えてきたんだけど、ある日たまりかねたジョンに“なんでもいいから何か録ろうよ!”って懇願されちゃって。それで始めたわけ。

――でも、ジョンとのセッションは行き詰まってしまったそうですね。
【フィオナ】 私自身にアルバム全体の方向性が見えていないまま作り始めてしまったせいなのよ。それで新たに、前作でベースを弾いたマイク・エリゾンドとアルバムの大半を作り直したの。マイクは前から私とコラボしたがっていて、才能がある人だってことは知ってたんだけど、なんといっても人柄が最高なのよ。で、“とりあえず試してみよう”ってことになり、彼が幾つかトラックを作ってくれて、それを聴いたらすごくインスパイアされたの。

――でもそういう経緯を知らないファンは、あなたがレーベルともめてアルバムを発売できないでいると思い込んで、レーベルの本社前でデモをしたり、ちょっとした騒ぎになりましたよね。ほかにもジョンと作った音源がリークしたり、トラブル続きでしたし。
【フィオナ】 実際にレーベルとはレコーディングの進め方に関して対立して、“もうやめた!”と宣言して、何もせずゴロゴロしてた時期があるの(笑)。で、結局ファンが騒ぎを起こしてくれたおかげでレーベル側が歩み寄って、無事にレコーディングできたってわけ。だから彼らには心から感謝してるわ。

すごく成長して自分に自信が持てるようになった

――そんな紆余曲折を経て、アルバムが完成した時の気持ちは?
【フィオナ】 やっぱり大きな充足感を味わったし、時間はかかったけど最終的には自分の意思を貫いて、しかもその過程を楽しめたことが心底うれしかったわ。それに3年前に書いた曲なのに、どれも切実さや生々しさをちっとも失ってなくて、自分でも驚いたの。

――タイトルの『エクストラオーディナリー・マシーン』はあなた自身を指していて、“辛い経験も楽しい経験も、究極的にはプラスに転化できるマシーン”を意味するそうですね。
【フィオナ】 私ってそういう人間なのよ。なのに子供の頃からやたら周囲の人たちが私のことを心配するわけ。それがほんとにイヤだった。侮辱的だと思ったわ(笑)。確かに落ち込む時期もあるけどいつも乗り越えてきたし、“何が起きても私は大丈夫”と伝えたかったの。それに、私と同様に辛い経験をプラスに転化できる人は、みんなエクストラオーディナリー・マシーンなのよ。

――6年前と比べて変わったと思う点、変わってないと思う点は?
【フィオナ】 全く変わらないのは、相変わらず繊細で不安定な人間だってこと。逆に変わったのは、全体を包み込むような穏やかさが生まれた点ね。感情を前よりもコントロールできるし、ハッピーなのよ。多分数年前に家を買って独り暮らしを始めたせいだと思うんだけど、すごく成長して自分に自信が持てるようになったわ。

(文:新谷洋子)

RELEASE

エクストラオーディナリー・
マシーン

フィオナ・アップル
2005/10/19[アルバム]
\2,520(税込)
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
SICP-927
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【楽曲情報】
01. エクストラオーディナリー・
     マシーン
02. ゲット・ヒム・バック(ニュー・
     アルバム・ヴァージョン)
03. オセイラー
04. ベター・ヴァージョン・オヴ・ミー
05. ティンプス(ザ・シック・イン・ザ・
     ヘッド・ソング)
06. パーティング・ギフト
07. ウィンドウ


08. オー・ウェル
09. プリーズ・プリーズ・プリーズ
10. レッド・レッド・レッド
11. ノット・アバウト・ラヴ
12. ワルツ(ベター・ザン・ファイン)
13. ペーパー・バッグ(ライヴ)
14. エクストラオーディナリー・
     マシーン(ライヴ)

PROFILE

17才までに書きためた曲をもって弱冠18歳で衝撃的なデビューを果たす。
1996年、アルバム『タイダル』をリリース。。米国で300万枚を超えるビッグ・セールスを記録し、グラミー賞では最優秀女性ロック・ヴォーカルを受賞。また、米国『ローリングストーン』誌で、“ベスト・シングル”“最優秀女性パフォーマー”に選出される。
1999年11月20日、アルバム『真実』をリリース。
2005年10月19日、アルバム『エクストラオーディナリー・マシーン』をリリース。オフィシャルサイト