女は、少女のときから、なんら変わってはいない。女は、ロマンティックを捨ててしまったのではない。「LIES, LIES.」を聴いて、そう思った。メルヘンではなく、現実としての“私をどこかへ連れてって”願望を、大半の女性は大人になっても持ち続けているもの。潜在意識のなかに、あるいは顕在意識のなかに。
「LIES, LIES.」の主人公は、そんな大人の女なのだろう。 女は男よりも現実的だといわれるが、現実をしっかりと生きているからこそ、刹那のときを大事にしたいと切望するし、それが切ない恋であったとしても、その瞬間だけは、ガラスの靴を履くことを、毒入りのリンゴをかじることを躊躇しない。
女ってそうだよな……と、この歌は感じさせてくれた。 一見、デジタルビートにカムフラージュされてはいるが、艶めかしい吉田美和の熱を帯びたボーカルは、聴いていると鼓動が速くなってくる。それに対して、リードギターが男の色気で応えている。
そして歌詩。吉田は、決して多くない言葉で、スッ、スッとナイフを胸の真ん中に突きつけて決断を迫ったり、要求を突きつけてくる。この4分10秒間の主導権は100パーセント、女なのである。
<どんなにわたしを愛してるか 今言ってみて>
そう、今でなきゃダメ!
未来も希望もこの瞬間には要らない。
究極は、“あなた”に「君しかいないと思ってほしい」のではなく、「あなた以外にないと思わせてほしい」ということ。
さらに、
<もっと 気持ちよくさせてみて>
と挑発的な言葉で煽る。煽られた相手は、言われるがまま彼女の欲望に応えずにはいられなくなってしまうはずだ。
女には、昼の顔と夜の顔があっていいと思っている。だからこそ「LIES, LIES.」を聴いたあとには、なにごともなかったかのように澄まして咲いている昼顔の清々しい景色が、私の目の前に広がるのだ。
いくつかの恋を重ねてきた女性、切ない恋をしている女性、また胸を焦がす恋に憧れている女性は、きっと共鳴するのだろう。歌のなかで投げかけられている<オオカミ少年>と<花泥棒>、<呼吸するようにウソつく人>と<ただかまわず盗む人>。この選択については、ぜひとも女子会などで、お酒を飲みながら意見を交わしてほしいものである。
前作、2週連続シングルリリースされた赤ドリ「ねぇ」、青ドリ「生きてゆくのです■」で感じていた生きる力と同じく、紫ドリ「LIES, LIES.」のなかにある強く求める愛もまた、とてつもない生命力であるということは間違いない。
(文:三沢千晶)

