ORICON STYLE

2008年06月25日
最強のミュージックマンが音楽を語る!! vol.6
音楽プロデューサー武部 聡志氏
profile

武部 聡志 氏
1957.2.12生まれ、東京都出身。国立音楽大学在学中よりキーボーディスト・アレンジャーとして数多くのアーティストを手掛ける。1983年より松任谷由実コンサートツアーの音楽監督を担当。1990年より本格的にプロデューサーとしての活動を始め、一青窈、Lyrico、大黒摩季、今井美樹etc.のプロデュース、CX系ドラマ「BEACH BOYS」、「西遊記」etc.の音楽担当、CX系「僕らの音楽〜OUR MUSIC〜」の音楽監督等、多岐にわたり活躍している。また、日本工学院専門学校にてミュージックカレッジ エグゼクティブアドバイザーを務めている。

『Free Live!』/フリー  『Free Live!』/フリー 

 かつてアマチュアバンドでギターをやっていた僕は、ロックグループが来日する度、全てのコンサートを見に行っていました。当時ロックカーニバルというイベントがあり、その#1ではブルースギタリスト、ジョン・メイオールが、#2ではブラスロックグループ、ブラッド・スエット・アンド・ティアーズが、そして確か#3にフリーが出演していました。そのイベントには日本のバンドも数多く出ていましたが、彼らが登場したとき、本当のイギリスのロックバンドっていうのは、こんなにカッコイイんだ!という衝撃を受けたのをよく覚えています。
ヴォーカルとドラムス、ベース、ギターという最低限の編成で、ブルースロックを基調としたバンドですが、とにかく上手いとか下手とかいう次元ではなく、カッコイイの一言でした。ポール・コゾフのギターも、ポール・ロジャースのヴォーカルも、アンディ・フレイザーのベースも、サイモン・カークのドラムスも、全てが説得力があって、まったく目が点になるというのはこういうことだと思いました。
やがて僕はイギリスのロックグループにどんどんはまり込んで、その後プログレというジャンルを嗜好するようになったのですが、その原点となったのは初めて見たイギリスのフリーというグループだったのかも知れません。

『Fulfillingness' First Finale』/スティービー・ワンダー 『Fulfillingness' First Finale』/スティービー・ワンダー

 それまでギターを持って、アマチュアバンドでロックばかりやっていた高校生の僕が、人に勧められて初めてこのアルバムを聴いたとき、とにかく圧倒されました。こんな音楽が世の中にあったんだ、という思いで一杯でした。このアルバムにはスティーヴィーのベースにあるソウルミュージックだけではなくて、ジャズやロック等いろいろな音楽の要素が詰まっており、おそらく今までの人生の中で一番多く聴いたアルバムだと思います。
この作品を聴いて、僕はキーボーディストとしてプロになりたいなぁ、と思いましたし、もっと言うならばアレンジということに漠然と興味をもったのもこのアルバムがきっかけでした。裏を返せば、このアルバムがなかったら僕はプロのミュージシャンになっていなかったし、アレンジも始めていなかったと思うと、とても感慨深いものがあります。
何かの折にとり出して、未だに聴き返す大切なアルバムのひとつです。

『Key』/一青窈 『Key』/一青窈

 自分のプロデュース作品ですが、デビュー前からの付合いである一青窈とじっくり時間をかけて作った最新アルバムです。もともと彼女の詞の才能に惚れ込んでいた自分としては、とにかく言葉、詞の世界にこだわり、アルバムを通してのトータルコンセプトをとても意識しました。
最近一曲づつダウンロードして音楽を聴いたりする人が多い世の中で、アルバムを通して聴くという価値観が薄れていますが、僕としてはそのアンチテーゼとして“アルバム”というスタイル、つまり一曲目から最後の曲までを聴き終わって何かを感じてもらえるという作品を作りたかったんです。
このアルバムにはいろいろなメッセージを込めました。はっきり言って自信作です。おそらく何年か経って過去の自分を振り返ったとき、このアルバム『Key』がターニングポイントの一つだったと思えることでしょう。