ORICON STYLE

2005年12月14日
柴咲コウ SPECIAL ISSUE
経験の中で、培ってきたものとは!?
“女優”“役者”の柴咲コウが溢れたアルバム

 11月に山路ふみ子映画賞を受賞し、『DORORO』『県庁の星』と次の映画への出演も決まるなど、最近では映画女優としての貫録すら漂う柴咲コウだが、注目のニュー・アルバム『ひとりあそび』でも、その存在感は伊達ではないことに気づかされた。これまでにリリースされた曲を、“アーティスト”柴咲コウだとするならば、このアルバムには、その“アーティスト”のポジションすら、彼女の持つ一面に過ぎないと言わんばかりの、“女優”“役者”の柴咲コウが溢れていたのである。

 これまでに発表されてきた彼女の楽曲をチェックしていくうちに、僕たちはいつの間にか“柴咲コウはこうだ”という固定イメージを自分たちの中に抱いてはいなかっただろうか。例えば、伸びのある声でバラードをしっとりと歌うシンガーであるとか、夜を渡る風のような歌手であるとか。
  役者の場合でもそうだが、ヒット作に恵まれるということは、知名度を上げ、しばらく同じ土壌での成功が約束されるというメリットがある反面、その役のイメージが定着し、活動の幅を狭めてしまうことになりかねないというデメリットも存在する。多くのアーティストは、そこに生じるジレンマに悩み、次への一歩を踏み出せなくなってしまうものだ。しかし、柴咲はそこでさらりと“こんなこともできるんです”とやってみせた。それがこのアルバム『ひとりあそび』だ。

柴咲コウの中にある底知れぬ奥深さ

 1曲目の「恋愛感染経路」から、おっと思わせるソリッドなミドル・ナンバー。そして、そのまま2曲目「memory pocket −メモポケ−」のテクノポップ調サウンドが流れ出すと、このアルバムがただものではないことがわかるはず。それこそが“こんなこともできるんです”とばかりに提示された、1曲ごとの“演じ分け”だ。それは歌い方、曲調に留まらない。11曲中9曲に及ぶ自身の手になる歌詞もまた、彼女らしさを留めつつも、今までの彼女ではない、さまざまな顔をした“柴咲コウ”を見せてくる。締めくくりの曲「Sweet mom」で、改めてスタンダードなサウンドにたどり着くころには、彼女の中にある底知れぬ奥深さを誰もが感じることだろう。この奥深さ、キャラクターの多様さは、彼女が“女優”“役者”という経験の中で、培ってきたものに違いない。その多様さが際立って見えるのは、『ひとりあそび』というタイトルに集約される通り、曲の手触りとは対照的に、全ての曲が一人称の独白めいた詞で統一されているからだ。同じテーマの中で見え隠れするさまざまな顔。すなわち、このアルバムは、“歌手”であり、“女優”“役者”である彼女にしかなし得ない、一人コンピレーション・アルバムに仕上がっているのである。

 さまざまな顔を見せるとは言っても、そこに今までの彼女と見劣りするものはない。これはもう、単なる固定イメージの打破という次元ではなく、限りない可能性の広がりと言っていい。それは、先に挙げた「memory pocket −メモポケ−」が、PS2用ゲームソフト『CODE AGE COMMANDERS』のイメージ・ソングに抜擢されていることでも十分に証明済みだ。“女優”“役者”として、“シンガー”として、そしてそれを複合させた存在である“柴咲コウ”として、進化し続ける彼女から、今後も目が離せない。

(文:田井裕規)

PV
 
RELEASE

ひとりあそび
柴咲コウ
2005/12/14[アルバム]
\3,059(税込)
ユニバーサルミュージック
UPCH-1450
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【楽曲情報】
01. 恋愛感染経路
02. memory pocket −メモポケ−
03. 不自然な空気と果実
04. Graybee
05. 合わせ鏡
06. Glitter


07. Strange space
08. 濡れた羽根
09. 漆黒、十五夜
10. 若手クリエーター
11. Sweet Mom

PROFILE

1981年8月5日生まれ。東京都出身。
映画、ドラマ、CM、アーティストとして幅広く活躍。
2003年、東宝系映画『黄泉がえり』の劇中に登場するカリスマ・ボーカリスト“RUI”として、オリジナル・テーマ・ソング「月のしずく」を唄う。“RUI”名義でリリースしたこの曲で首位獲得という偉業を遂げる。
2003年6月4日、シングル「眠レナイ夜ハ眠ラナイ夢ヲ」(TBS系TVドラマ『笑顔の法則』主題歌)をリリース。
2003年9月3日、シングル「思い出だけではつらすぎる」(CX系TVドラマ『Dr.コトー診療所』挿入歌)をリリース。
2004年1月14日、シングル「いくつかの空」(東宝系映画『着信アリ』主題歌)をリリース。
2004年2月11日、アルバム『蜜』で2位獲得。
2004年8月11日、シングル「かたち あるもの」(TBS系TVドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』主題歌)をリリース。初登場2位を獲得。
2005年10月5日、シングル「Sweet Mom」(東宝系映画『この胸いっぱいの愛を』主題歌)をリリース。
2005年12月14日、アルバム『ひとりあそび』をリリース。オフィシャルサイト

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