ORICON STYLE

2005年11月02日

 サンボマスターの新曲「全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ」の、アングラにして嘘偽り皆無ぶりには“だ、大丈夫か?”と心配したくなるほどの心地好さがある。それがわかる人なら、ぜひお友達になりたい。

人がやれないことをやってナンボ

 ドラマ版『電車男』の第1回目を偶然観た私は、“CXが作ると結局、『101回目のプロポーズ』にしちゃうのね”と一人で納得してたのだが、エンドロールには度肝を抜かれてしまった。JR秋葉原駅のホームで200人のヲタと共に、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」を大量の汗しぶき+唾しぶきで唄い弾きまくるサンボマスターが、堂々大フィーチャーされてたからだ。ズルい。ズルすぎる。
 どんな素人が観たって、こりゃインパクト強烈だわ。溶けこみすぎて飽和量を超え、食塩水から大量の塩が更に溢れ出てるようなもの。でもってドラマ自体の視聴率もかなり良好なのだから、50万枚ヒットも夢じゃないと思った。
 大体、どんなにぐっとくる詞とメロだろうが、ここまで過剰な唄と演奏と“イエロー・ロックン・ソウル”なスタイルに誰もが心を動かされるほど、日本の音楽マーケットは成熟してないのだから。サンボが万人に歓迎される時代なんか来たら、安心して俺もう田舎で隠居しちゃうよ?
 そういう意味では、サンボが彼らにとって我々にとって“普通のこと”を唄えば唄うほど、“特殊な存在”として光り輝いてしまうことの証明であって、まさにこれこそが“ロックの根幹”なのである。人がやれないことをやってナンボ、なのだ。

世間に対する“抵抗”

 さてそんなサンボに惹かれる、具体的な理由を考えてみた。“日本語LOVE”溢れる歌詞と“音楽LOVE”こぼれるバンドサウンドは、勿論言うまでもない。しかしそれ以上に私は、彼らがついつい醸し出してしまう“暑苦しさ”にヤられてしまっている。
 “青春パンク”などというものが流行った時代があったが、あんなもんはせいぜい“熱い”止まりだ。こっちは“暑い”上に“苦しい”んだから、お話にならないだろう。
 例えば、今回のニューシングル「全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ」で考えてみる。“愛と平和”をやたら連呼する前作もシングルとしては充分アンダーグラウンドだったが、今回はより衝動的に彼らのソウル・テイスト観を貫いてる点で、そのアングラ具合はますます研ぎ澄まされている。というか、“いいのかここまでやって”だ。
 でもって、“世界に光が差そうが、世界が影を落とそうが、ひたすらタンバリンを鳴らし続けよう”と唄いまくるのである。“唄え唄え悲しみの過去タンバリンタンバリン”で“鳴らせ鳴らせ心の闇をタンバリンタンバリン”だもの。彼らが一体、どれだけどれほど駄目男な人生を歩み続けたのか私は勿論知らないが、世の女子達が思うほどロマンチックでもなければ、せつなくもないはずだ。ましてやぐっとこられた日にゃ、殺意すら涌くぞ。
 切実すぎて聴いてるこっちが息苦しくなるようなリアリティーを、彼らはただ音楽として放つしか術がないと私は見た。だからこそ“暑苦しい”のだ。そんなサンボマスターが抱える“圧倒的な現実”を、100万人が共感できるはずないじゃないか。
 もっと言えば、サンボ自身も“わかってもらおう”と思って唄ってないはずだ。あのムサ苦しいまでの形相と言葉と演奏は、もしかしたら世間に対する“抵抗”なのかもしれない。聴き手が、お気楽に傍に寄ってこられないようにするための。そしてそれすらも乗り越えて人々が彼らの唄を聴くために集まってきた時、きっとサンボはとびきりの笑顔を見せるのだろう。でもって私は、そんな日がかなり近づいてきてるような気もしているのだ。実は。信じられないけど。
 ちなみに私、今回の“タンバリン”はRCサクセションで清志郎が想いを乗せた“トランジスタラジオ”に匹敵する、日本のロック史上に残る“小道具”だと思っている。

(文:市川哲史)
PV
RELEASE
全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ

全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
サンボマスター
2005/11/02[シングル]
\1,223(税込)
ソニーレコード
SRCL-6063

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【楽曲情報】
01. 全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
02. あの鐘を鳴らすのはあなた
03. 離れない二人

PROFILE

山口隆(Vo&G)、木内泰史(Dr&Cho)、近藤洋一(B&Cho)の3人組。
2000年2月結成。
2003年7月、オナニーマシーンとのスプリットアルバム『放課後の性春』でメジャーデビュー。
2003年12月、アルバム『新しき日本語ロックの道と光』をリリース。
2004年4月、マキシシングル「美しき人間の日々」をリリース。
2004年7月、シングル「月に咲く花のようになるの」をリリース。
2004年8月、FUJI ROCK FESTIVAL 04、RISING SUN ROCK FESTIVAL、ROCK IN JAPAN FESTIVALなど夏の大型フェスに多々出演。
2004年12月、マキシシングル「青春狂騒曲」(テレビ東京系TVアニメ『NARUTO−ナルト−』オープニングテーマ)をリリース。
2005年1月、アルバム『サンボマスターは君に語りかける』で5位獲得。
2005年8月3日、シングル「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」(CX系TVドラマ『電車男』主題歌)で7位獲得。
2005年11月2日、シングル「全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ」をリリース。 サンボマスター オフィシャルサイト