今やORANGE RANGEは日本一のメガ・バンドで、今回の新作『ИATURAL』取材も熾烈を極め、5人ソロ・インタビューなんて夢のまた夢の超過密スケジュールだったようだ。そりゃそうだわなー。それでも私は、10月下旬から始まる全国ツアーのパンフ用に5人各々にじっくりインタビューをできたので、きっと幸せ者なのだろう。ぷ。
その内容は会場で買って読んでいただきたいのだけども(←露骨な営業)、彼らの話を訊いて私の『ИATURAL』観が正しかったことを、確認できたのだからめでたい。
全19曲77分のCDの収録時間ギリギリという、相変わらずの“止まらない表現衝動”ぶり。でもって、例によって多彩なサウンドスタイルとの“合コン”も激しい。
個人的には、もげもげギターに逆回転炸裂のアバンギャルドなミクスチャー・ロック“もどき”の「CRAZY
BAND」、クールでストイックでジャズ“もどき”なのに大加工大会の「雨」、キュートなんだけどもYMO系大人テクノ・ポップ“もどき”の「sunrise」が、かなりキた。「pe
nyom pong(←ペニョムポンと読め)」にいたっては、前作『musiQ』いちのシュール・ナンバー「papa」を500倍にしたような、もう“虚無”の域にまで達してしまい、「この曲だけは絶対、ライヴ無理っスよ」とYAMATOが両手を挙げて降参していた。NAOTOも「本当にこの曲は、全員何も考えずに作ったのでどうにもなりません」と豪語してたし。
勿論、それ以外の楽曲もとっぴさに満ち満ちている。「BETWEEN」には70'sハードロック“もどき”のダイナミズムが、「re-cycle」には80'sテクノ・ロックンロール“もどき”のキッチュさが見えるし、RYOがNAOTOにシンセの音色を教えてもらいながら初めて作曲した「盃Jammer」は、打ち込みダンスホール物“もどき”だ。この曲には、RYOが敬愛してやまない某有名バンドのツインMCもゲスト参加してるしなぁ。
「yumekaze」なんかUKギター・ロックとアコギとストリングスと打ち込みが全部共存しちゃってる上に、せっかく感動的なメロもボーカルがおもいきりボコーダーで全編加工されてて、この台無し感こそが“ポップ”に思えてくるのだから、凄い。
とまあ、『musiQ』以上にカラフルなポップアルバムなわけだが、実は今までのレンジとは“劇的な変化”を遂げている。
夏フェスの楽屋裏で逢った時、NAOTOが
「今度のアルバムはパンクっスよー!」と謎かけのようなことをほざいていた。確かに聴くと沖縄人ならではの“そんな冬ねーよ”パンク「Winter
Winner」だったり、まさしくレンジ版“青春パンク”な「HYSTERIC
TAXI」だったり、“ラウド・ロックmeetsテクノ”的な「U
topia」だったり、“ど”ラウド「GOD69」だったりと、想定外のロックなサウンドに驚かされる。
でもどの曲もよく聴くと、NAOTOが細部にわたって相当イジっており、決していわゆる“バンドサウンド”ではないのは、やはりORANGE
RANGEだ。じゃ何が“劇的な変化”なのか――具体的なサウンドスタイルは徹底的に多彩だけども、アルバム全編から“5人だからこそできること”というか、過去最高のバンド感を私は受け取ったのである。
音の方で言えば、YOHはNAOTOワールドの魅力を心の底から堪能しつつも“自分らしさ”を貫いてるし、NAOTOはNAOTOで“バンド解体および再構築作業”に邁進しつつも、サウンドの核としてYOHのベースを頼りにしてたりする。
一方で今回の詞は、スラプスティックな笑えるタッチが控えめになり、RYO十八番の“明日に向かって生きてくぞ!”的な熱さが、かなり直球で伝わってくる。YAMATOもHIROKIも、“自分個人の想い”よりも“バンドとしての個人の想い”を優先させた感がある。
そうなのだ。5人が5人共、“ORANGE RANGEであること”を一番に考えて作ったからこそ、楽曲自体はそれぞれ変てこであっても、立派な“バンド感”に溢れているのである。
そういう意味では、ORANGE RANGE初の“まるでロックバンド”なアルバムだ。そんな気持ちと音のあまりにもデカいギャップがまた、レンジらしくて可笑しいのだけども。
全員が全員、異口同音に“5人であること”を話していた光景を、私は美しく思った。実はORANGE
RANGEって、“これからのバンド”だったのである。おお。
(文:市川哲史)