目指す方向を言葉にできるようになった時期
THE MUSEUM II
【CD+Blu-ray盤】
――ベスト盤では、シングルのメイン曲をリリース順に並べていますね。
【水樹】 思い出を振り返りながら、歩んできた道を順番通りに聴いてもらえたらと思って。ライブ定番曲ばかりなんですけど、改めてこの順に聴くと、作っていたときのこと、レコーディングのときのこと……とかどんどん思い出して、自分でも感慨深かったです。
――たとえば、どんなことを思い出します?
【水樹】 「SECRET AMBITION」のジャケットは森のなかで撮って、すごく寒かったな〜とか、歌詞はおうちで正座して書いて、お尻が痛くなったな、とか(笑)。
――足掛け5年分の楽曲が収録されていますが、その時間軸のなかで確固たる芯が貫かれているというか、迷いがない感じがしました。
【水樹】 目指す方向が明確に見えてからの作品ですね。こういう音楽を作りたい、こういう曲を歌いたい、こんなメッセージを届けたい……というのを、自分で言葉にできるようになった時期だと思います。それまでは恐る恐る(笑)、「ヒヨっ子が意見を言ってもいいのかな?」という感じだったんです。でも、スタッフさんと過ごす時間が長くなって、「自分がどうしたいかがいちばん大事」と言ってもらえたので……歌うだけでなく、曲作りにも深く関わるようになりました。
――どんな提案が形になりました?
【水樹】 いろいろありますけど、「Trickster」はアレンジの方向性として、音数をそぎ落としてシンプルなバンドサウンドにしたいと。トラックダウンをやり直して深夜まで立ち合って、「ドラムの音はもっとこうしたほうが」とか、みんなでいろいろ検証しながら作りました。いちばん時間をかけた曲かもしれません。あと「SCARLET KNIGHT」も。
――とびきりカッコイイ曲ですよね。
【水樹】 力強さプラス、何か今までと違うものを見つけたくて。出来上がった曲を聴いて、「もっと笑顔が見えるものにしたい」「ファンタジーの要素を強く」とか、いろいろ提案させていただきました。
――「笑顔が見えるように」とは、難しい注文を(笑)。
【水樹】 ザックリしていて(笑)。言うのは簡単……という話ですけど、作曲家の皆さんが柔軟に対応してくださっています。
アーティストとして変わった部分
THE MUSEUM II【CD+DVD盤】
――作詞した曲もたくさん入っていますが、「夢幻」は異色ですね。ドロドロした感じで(笑)。
【水樹】 アニメ『WHITE ALBUM』のテーマというお題がなければ、私はこの詞に行き着かなかったと思います。女たらしであちこちに行く、どうしようもない主人公がいて、そんな人を一途に待つ立場になったら……と考えて書きました。いつも笑顔でいるけど、本当の気持ちはそうじゃない。ちゃんと私の本心を見てください、という。これは歌を録り直したんです。
――何を変えたんでしょう?
【水樹】 最初は曲のイメージに合わせて昼ドラ的なドロドロの雰囲気で歌ったら、やり過ぎてしまって(笑)。その場では「いいね」「これぐらいやらないと」と話していたんですが、後で冷静に聴いてみたら、怖すぎる(笑)。崖から突き落とされそうな感じだったので、ソフトな表現で歌い直しました。
――こうした曲を出している間に、ランキング1位獲得や西武ドーム、『NHK紅白歌合戦』出場……と大きなトピックが続きましたが、そういう舞台を経たことで、アーティストとして変わった部分もありましたか?
【水樹】 気持ち的にはあまり変わりません。身が締まる思いで、そんなときだからこそ、より歌と向き合う意識が強くなった感じです。基本に立ち返って。より良いものを見せるためには、根っこの部分がしっかりしていないと、幹が崩れてしまうと思うんです。
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(文:斉藤貴志)