――「挑め」、「C'mon, Let's go」、「KILA KILA」というリードシングルからも予見できたように、ラップのダイナミズムが強く押し出されたアルバムになりましたね。
【KREVA】 そうですね。今回はラップで押し切ろうという思いがありました。当初は、ラップと歌を“縦じま”と“横じま”で交差させたような……“チェック”をイメージしたアルバムを作ろうと思っていたんですけど。「挑め」を作ってからそのイメージが崩れはじめて、「C'mon, Let's go」でラップに対する意識がより強くなって。震災があってそのモードが決定的になりました。
――震災以降、最初に制作した「KILA KILA」はまさに閉塞感を打開しようとする意志が強く込められた曲でした。
【KREVA】 震災があって、自分がいちばん得意なこと、できることをやろうという思いが強くなりましたね。ラップと歌のどっちが得意かといったら100%ラップだから。それをしっかりやっていこうと。それから意識的にラップと向き合っていったら、どんどん上手くなっていく実感がありました。
――「KILA KILA」には<沸き起こる怒りをモチベーションにかえて 未来 灯してよ>というリリックがありますけど、例えば1曲目の「基準」でも自分の音楽が置かれている状況に対して怒りをあらわにし、「runnin’ runnin’」では鬱屈したムードから抜け出さないままでいる。そういったKREVAさんの個人的な生々しい感情も、各曲に表出しています。
【KREVA】 そういう生々しい感情を意識的に出そうと思いました。「なんでいつもそんなにポジティブでいられるんですか?」って言われることがあるんですけど、「そんなわけないじゃん」って思うんです。いつも曲のなかでネガティブな部分に引っ張られてしまうのはイヤだから、そのなかでもポジティブな要素が勝っている部分を自分で引っ張り出して、そこに向かっていく感じなんですよね。ただ、自分にとってポジティブの対にあるものがネガティブではなくて、メランコリックなんだなと思ったんです。“ちょっと涙が出そう”みたいな。今回は、そういうメランコリックな自分も出したいなと思って。怒りもしかり。
――客演には、三浦大知、阿部真央という新世代のシンガーを迎えているのも大きなポイントだと思います。
【KREVA】 いつもそうなんですけど、それぞれの曲のメロディーができたときに声が聴こえてきたんです。今回は大知くんと阿部真央ちゃんの声が。あと、阿部真央ちゃんは同じレコード会社に所属している同士として、会社を盛り上げていきたいというのと、HIP HOPを中心に聴いているリスナーにフレッシュな刺激を与えられるんじゃないか、と思ったのも大きかった。
――阿部さんのキュートかつ艶やかなボーカリゼーションがすごくいいですね。
【KREVA】 彼女は曲によっていろんな声を出せるので、どういうアプローチでくるのかなと思っていたんですけど、また新しい引き出しを見せてくれたのがうれしかったですね。
――近年はライブでもすばらしいコンビネーションを見せているKREVAさんと大知さんですが、KREVAさんの作品では初のコラボレーションとなりました。
【KREVA】 そうなんですよ。大知くんとレコーディングしていてあらためて思ったのは、“こういう人がシンガーであるべきなんだ”ということで。シンプルに歌が上手いというのもあるんだけど、ここがこう違うと思ったらすぐに修正して、よりいいものを表現できる。だからこそ、今後自分が歌と向き合っていくなら、自分なりの上手さを見つけなきゃいけないと思いましたね。
――10月28日、29日には武道館ライブが開催されることも発表されました。
【KREVA】 今回はシンプルに、ストレートにやりたいですね。それがいちばんカッコイイと思うから。このアルバムはお客さんと一緒に歌うことを想定していない曲も多いけど、それでも一生懸命歌おうとしてくれる人がいたらすごくうれしいです。
(文:三宅正一)